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ティーンエイジの甘酸っぱい思い出の一つや二つ

 ないんだな~これが(笑)。陰キャで、勉強も部活も全部中途半端な高校生だった。浮いてたわけじゃないけど、クラスでも特に心から仲良しの友達ができたのは、3年生になってから。この友達ができてから、ほんとに楽しかった。浪人まっしぐらだったけど、多分友達ができてもできなくても、わたしはいつも勉強はしているフリだけだったから絶対浪人だったよ!
 彼氏なんていなかった。し、今も年齢のわりにピュアだと自覚しているんだけど、さかのぼっても地続きな感じだった。だから今、高校生の青春漫画見て心底羨ましがってしまい、高校生になりたがっている痛いやつに成り下がっているのだけど、そんなわたしの、唯一の高校三年間の甘酸っぱい思い出をここに記しておこう。恥ずかしいほどにしょうもないけど。

 卒業式は雨だった。思い出の詰まった体育館は建て替えが決まっていて、もう使用できなかったので、近所の市民会館で、式は滞りなく何の感動もなく終わった。中学の時みたいに別れがつらくて泣くこともなかった。国公立前期の受験の結果もわからないし、なんだか卒業するんだなっていう雰囲気は思ったよりなかった気がする。変な雰囲気だった。終わった後、よくクラスで話す男女メンバーで近所のお好み焼き屋に行った。男6人、女4人とかだったけど、そこで女の子の1人が少し体調悪いと言っていた気がする。近所のゆめタウンに移動して、プリクラを撮って、カラオケに行こうとなったけど、その子は体調が悪くて帰ってしまった。カラオケに移動したら、もう1人の女の子も帰った。代わって男子は野球部の打ち上げが終わってやってきた数人が増えた。女子はわたしと、彼氏持ちの子、2人が残った。わたしはカラオケで、その子の真横に座った。そして、盛り上がる男子の純恋歌やらキセキやらをじっくり聴いた。ゆっくりと時間が流れ、楽しかった。すると。

 「親が迎えに来たから帰るね!」と、最後に残っていた女子も帰ってしまった。わたしもこの場に女子一人なのはいたたまれなくて、そのまま帰ろうかと思ったけど、「あすかちゃんまだいていいよ!」と気を遣ってくれたのか、誰かがそう言ってくれた。だから、せっかくの卒業式だし、そのまま残ることにした。

 そこで困ったのが、席順だ。
(男)(男)(男)(帰った女の子)(あすか)
みたいな並びで、この帰った女の子一席分が空いたのだ。当時18歳、男子とは手も握ったこともない、人生経験の浅い(あすか)は、悩んだ。
 こんな詰めて、わたしなんかに横に座られるなんて嫌じゃないかな、けど一席空いているのもおかしいし、でも、とても隣に座るなんて恥ずかしいし、詰めないのも失礼なのかな、どうしよう、どうしよう。一つ椅子を挟んで隣に座っているM君は優しくて、明るくて元気で、陽気な人だった。そんな人気の人の隣の椅子に座る、というのは、どうなのだろうか?いいの?悪いの?ずっと考えて、ドキドキしていた。そう考えて2時間が経ち、帰る時間になった。みんなで駅まで向かった。
わたしはとうとう席を詰めて異性の隣に座ることができなかった。

 晴れて浪人が決定し、全員の進路が決まった3月下旬、同じメンバーで焼き肉に行った。みんな、4月からの生活に思いを馳せ、楽しそうだった。友達が来る時用の布団を買ったから泊まりに来てとかそんな話をしていた。浪人には関係のない話である。
 わたしは意を決してM君にあの時、椅子を詰めようかすごく悩んだ話をした。そしたら、M君はすごく笑って、こう言った。

「詰めてくれたら、嬉しかったのに」
もちろんその後も何もなかった、これはそういう話である。

 

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