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エシカル消費がただの流行では済まされない理由:ダイヤモンド産業の採掘から流通まで。

環境や動物、社会への影響に配慮した取り組みが一大ムーブメントとなっている昨今。もはやトレンドを超えてライフスタイルとなっている「サステナブル / サステナビリティ」「エシカル」「SDGs」ですが、日常を過ごす中で、これらの言葉を目にしない日はないといっても過言ではないのではないでしょうか。

意味はどれも地球環境や、社会、人への配慮を表す言葉で、経済も含めた対策を考えるものです。

「持続的な社会に変えていくためにはどうすればいいのか?」

より良い世界を目指すためには必要な概念であり、現在、世界の共通目標としてサステナブルな社会の実現に向けて積極的に取り組まれていますよね。

ではジュエリーにおいてのサステナブルやエシカルとは一体何を指すのでしょうか。

この記事では、ダイヤモンドジュエリーに焦点を当て、その輝かしいダイヤモンドの裏側にあるジュエリー業界の様々な問題と、業界に広がるサステナブルな取り組み、またエシカルジュエリーを選ぶポイントをまとめていきたいと思います。

※ この記事は、ダイヤモンドが人道的・環境的に配慮された上で市場に出るのが当たり前の社会になることを願い、問題解決のためには現状の課題を理解する事が第一歩と考えてのものです。全てのダイヤモンド産業の否定またはダイヤモンドの購買拒否を求めるためのものではないことご理解ください。


そもそもサステナブルな社会とは


image by AT Creations

サステナブルな社会というのは、
持続可能な社会:ずっと生活をし続けていける社会のこと。

2050年には、人口が100億人を超えると推定されており、これは、私たちの地球上の食糧・水・脆弱な天然資源にさらなる圧力がかかることを意味します。私たちは今、自分たちの生活を脅かす存在になっているということ。

サステナブルな社会の実現のためには、廃棄物や汚染を減らし、資源を使いすぎず、地球環境・人・コミュニティを崩さず、社会で価値のあるモノをより多く生み出し、共に取り組んで行く必要があります。

新たにモノを買い足す時、環境や社会に配慮した商品を買う
=環境問題や社会問題の悪化に加担してしまう恐れのある商品は買わない

このように、私たちの消費生活のなかで意識して行動すれば、SDGsの達成につながります。

SDGsとは
SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。

外務省ホームページより

共にサステナブナ社会の実現に取り組めば、豊かで平和な地球を、未来の世代も美しい地球で生活し続けられるでしょう。

ジュエリーの購入においてもそれは同じです。


綺麗な宝石の裏側にある闇


特に天然ダイヤモンドは、神秘的な起源を持ち永遠の輝きを誇るため、ブライダルジュエリーにも人気のある宝石です。

そのダイヤモンドのルートを辿ったり想像したことはありますか?

1カラットの原石ダイヤモンドを得るために、何トンもの岩石や砂利、砂を取り除いて、処理しなければなりません。また、加工仕上げしたジュエリーとなる前に多くの段階を経なければなりません。

採掘から流通までの過程において、さまざまな問題を抱えてきている事実や、ダイヤモンドが抱える闇があります。


紛争ダイヤモンド


みなさん「紛争ダイヤモンド」という言葉、聞いたことありますか?

ブラッド・ダイヤモンド = 血塗られたダイヤモンド
これは紛争ダイヤモンドと言われていて、紛争の資金源となるダイヤモンドのこと。

レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ブラッド・ダイヤモンド』(2006年公開)によって、綺麗な宝石の裏側の負の側面が世界に広く認知されるようになりました。1999年のシエラレオネのダイヤモンドを巡る内戦で、反政府軍が地元民を強制労働させる様子、少年達を麻薬漬けにし兵士に仕立て、自分の故郷や家族を襲わせる様子、襲撃した村人の手足を切断する様子など、実話をベースに描かれた映画です。

この映画がきっかけで、ジュエリー業界における社会問題への取り組みが広がり、世界中でエシカルジュエリーへの意識が高まりました。

紛争地域で産出される宝石は、反政府組織や紛争の資金源になっていたり、ダイヤモンドなどの宝石産出国においては、反政府組織が宝石鉱山を不当に占領・制圧して宝石を採掘しており、採掘に携わる労働者を搾取していて、低賃金労働による貧困、児童労働、債務労働、強制労働などの様々な人権侵害の問題が生じています。

今でも内戦が続いている地域もありますし、例え紛争自体が終わっていたとしても、手足を失った人、レイプされた人、家族を失った人々の傷が癒える事はありません。

ダイヤモンドを資金源とするアフリカ国内の主な内戦


2022年現在では、世界で流通している天然ダイヤモンドの99%以上が
コンフリクト・フリーとされていて、紛争ダイヤモンドではないと言えます。(Kimberley Process)

これは、ブラッド・ダイヤモンド問題の解決のために2002年に国連決議で採択されたキンバリープロセス認証制度により、より安心してダイヤモンドを手に入れられる環境が整ってきているからです。



キンバリープロセス制度とは?


キンバリープロセス認証制度:輸出されるすべてのダイヤモンドの原石が、紛争に関わっていないことを証明するための国際認証制度

ブラッド・ダイヤモンド問題の解決のために採択されたキンバリープロセス認証制度。これは、輸出されるすべてのダイヤモンドの原石が、紛争に関わっていないことを証明するための国際認証制度です。

この制度に加盟した国は、

● 輸出するダイヤモンドにキンバリープロセス証明書をつけること
● ダイヤモンドの原石は密閉した容器にて輸出すること
● 加盟国ではない国には輸出しないこと

Kimberley Process

を行い、紛争ダイヤモンドの流通を抑える取り組みが始まりました。

「ダイヤモンド原石を輸出する時、これは紛争ダイヤモンドではありませんという証明をつけて輸出する取り組み」のことです。

ダイヤモンド原石(Source: ALROSA website)

しかしこのキンバリープロセス。

実際には、一般の消費者には直接解決できないような根深い問題や多くの課題がまだまだあります。


キンバリープロセス制度の課題


「紛争予防のための効果的な多国間ツール」とされていますが、
現実はとても複雑で、全ての問題が解決されているわけではありません。

▶︎ 目的について
紛争ダイヤモンドを抑制する目的であり、
その他ダイヤモンドが抱える他の課題には関与しない

→ 紛争の資金源以外の問題(児童労働、強制労働、債務労働等の人権侵害、環境破壊等)には一切関与していない

▶︎ 紛争ダイヤモンドの定義について
a) 反政府軍の活動による紛争の資金源に限定

政府軍が紛争や人権抑圧に使う目的でダイヤモンドを資金源としても、それは紛争ダイヤモンドではないという解釈

b) ダイヤモンド原石に限定

カット・研磨済のダイヤであれば紛争の武器等を購入する資金源になっても「紛争ダイヤモンドではない」という解釈

▶︎ 運用について
a) 加盟国の自主的な運用
b) 強制力なく、罰則なし
c) 運用能力の未熟さ
d) 認証制度改善への意識の低さ

(Source: Diamonds for Peace)



ダイヤモンド採掘にまつわる社会問題


紛争ダイヤモンドのような事例は、
その他の宝石や、金・銀・プラチナなどの素材の採掘地でも見られます。

また、紛争への資金源だけでなく、児童労働・過酷な労働環境・貧困といった人権問題から、劣悪な方法による採掘での環境破壊など、実に様々な社会問題が起こっているのです。

では、その様々な社会問題とはどういったものがあるのでしょうか。



人権問題


(Source: DFP website)

高価な宝石であるダイヤモンドの裏で、採掘に携わる労働者の多くが低賃金労働による貧困や人権侵害に苦しんでいます。

人権侵害は児童労働、強制労働、借金返済のための債務労働、採掘現場での虐待行為、暴力や性的暴力など様々です。先に述べたように、キンバリー・プロセス制度だけでは防ぐことはできません。

”その数はアフリカを中心に世界に推定1300万人とも言われています。労働者が養う家族・親戚を平均5名と仮定すると、影響をうけている人口は5千万人以上になります。”

Louis Goreux, 2001, “Conflict Diamonds,” The World Bank

”国際的な人権NGO団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが2009年に発表したジンバブエのマランゲダイヤモンド鉱山での調査報告によると、ダイヤモンドの違法採掘と密輸を止めるために派遣されたはずのジンバブエ国軍自らが、違法採掘と密輸から利益を得ていて、さらには住民たちに虐待を行っていたことが明らかになりました。”

Human Rights Watch, 2009, “Diamonds in the Rough: Human Rights Abuses in the Marange Diamond Fields of Zimbabwe”


住民たちは無報酬で採掘をさせられ、それに反抗する住民への暴力が行われていました。また、採掘地域に住む女性たちへの性的暴力や、児童労働の実態も報告されています。

天然資源にまつわる紛争と汚職、環境破壊と人権侵害行為などは、ジンバブエに限らず内戦終了後の不安定な政権下にある国や、ダイヤモンド採掘・輸出に関す法律・制度が未整備な国、政治が腐敗した国では多く見られるのが現状です。

問題を規制することは現段階では非常に難しいため、非正規ルートのダイヤモンドを排除するなど、国際社会が一丸となり、新たな取り組みや制度を作り、その取り組みを機能させない限り、ダイヤモンドに関わる人権侵害をなくすことはできないのです。


児童労働


マリ共和国カイ州ケニエバ圏のタバコト鉱山で働く少年たち。
©2011ジュリアン・キッペンバーグ (Source: ヒューマン・ライツ・ウォッチ)

児童労働とは「法律で定められた就業最低年齢を下回る年齢の児童(就業最低年齢は原則15歳、健康・安全・道徳を損なう恐れのある労働については18歳)によって行われる労働」のことです。

国際労働機関ILO

⚫︎ ダイヤモンド業界における児童労働

鉱山業における子どもたちの役割もさまざまです。すべてが児童労働を意味するわけではありませんが、残念ながら多くはそうです。

ダイヤモンド鉱山のコミュニティでは、少女がダイヤモンドを掘ることはほとんどありませんが、母親の仕事を手伝ったり、支援業務に携わったりすることがあります。性売買もまた、採掘コミュニティにおける「ビジネス」であり、若い女の子はしばしば、時には親の命令に従ってそれに従事しています。性交渉は無防備に行われることが多く、こうしたコミュニティでは性感染症の蔓延が大きな問題となっています。

これらのコミュニティやアフリカのほとんどの鉱山国では、働く子どもたちは道具を運ぶなどの「お手伝い」をしていますが、実際には何千人もの子どもたちが鉱山で働いているのです。



ダイヤモンド鉱山における児童労働:アフリカ地域


ダイヤモンド鉱山で働く子どもたち:アフリカ(Source: THE DIAMOND INDUSTRY)

2021年6月の米国労働省の統計によると、ダイヤモンドは米労働省の指定する「児童労働または強制労働によって生産された品目」に含まれているとし、以下の6カ国で強制労働・児童労働が行われていると報告されています。

⚫︎ アンゴラ共和国 
⚫︎ 中央アフリカ共和国 
⚫︎ コンゴ民主共和国 
⚫︎ ギニア共和国 
⚫︎ リベリア共和国 
⚫︎ シエラレオネ共和国 

List of Goods Produced by Child Labor or Forced Labor
(Source: U.S. DEPARTMENT OF LABOR)

(翻訳)シエラレオネでは、子どもたち(主に5〜17歳の少年)がダイヤモンドの採掘を強いられているとの報告があります。ダイヤモンド鉱山は、東部州のコイドゥ地区、ケネマ地区、コノ地区に集中している。ダイヤモンド鉱山で働くために農村部から人身売買されたり、家族から派遣されたりしている子どもたちもいるが、こうした子どもたちは、しばしば人を欺くような条件で採用されている。子どもたちは、鉱山の地下の危険な環境で、長時間、無給で働かされています。十分な食事が与えられない子どももいます。さらに、職人的で独立した小規模なダイヤモンド採掘者の子どもたちの中には、ダイヤモンドディーラーに借金をして、年季奉公人として家族とともに働いている者もいます。

ダイヤモンド鉱山での仕事は重労働です。大人に混じって何十キロもの砂利を鉱山から選別場に運ぶ仕事や、選別場で泥さらいをしてその中から光る小さなダイヤモンド原石を探し続けます。

子どもは体が小さいため、狭い穴でもロープを伝って入り採掘作業が可能であること、かつ安く雇うことができることから搾取されやすい対象となっています。

ダイヤモンド鉱山で働く子どもたち:アフリカ(Source: THE DIAMOND INDUSTRY)


10年間内戦が続いたシエラレオネでは、子どもは子ども兵及び鉱山労働者として働かされ、そこで稼いだ資金は反政府軍の資金源に使用されていました。

ILO(国際労働機関)の2012年の統計によると、世界における5歳〜17歳の児童労働は約1億6800万人でその割合は 子どもの全人口の11%に上ります。

「児童労働に関するILO条約」国際労働機関(ILO)


鉱山での労働は「最悪の形態の児童労働」の中の「危険有害労働(hazardous work)」に指定されています。鉱山における労働は有害な鉱山物質や危険重機との接触、土砂崩れや崖崩れ、溺死等の事故に巻き込まれる可能性が高く、子どもの成長にとって非常に有害で危険な労働であるとされています。

ダイヤモンドを見つけた分に応じて支払われる賃金

成果報酬がある場合の日給:0.15~0.60 USドル(約15円から60円程度)
成果報酬がない場合の日給:最大2.10 USドル(約210円)

大人の鉱山労働者に支払われる金額よりも日常的に安い金額しか支払われていないとの調査報告もあります

International Human Rights Clinic, 2009, “Digging in the Dirt,” International Human Rights Clinic at Harvard Law Schoo



ダイヤモンド研磨工場での児童労働:インド


インドは、ダイヤモンドを含む宝石のカット・研磨の中心地です。
特にインドのグジャラート州は、世界のダイヤモンドの85%をカット・研磨しています。

ある工房では、少年たちが研磨用のダイヤモンドを受け取るために待機しています。この工房で働く人の平均年齢は12歳で、もっと若い子どももたくさんいます。

業界のリーダーとしての役割を果たすために、子どもたちに頼っているのです。理由は、子どもたちは低賃金で、大人よりも目が良く、手先も器用であるため、より良いカットができるからです。

カット・研磨工場で働く子供:インド
(Source: INDIA - CHILD LABOUR IN DIAMOND INDUSTRY)


カットの仕事は激しく、不健康です。若い労働者は仕事場と同じ部屋に住んでおり、そこで多くの事故が起こる。また、工場の中で働く子どもたちの多くは、健康被害のリスクを負っており、研磨に使用される研磨剤は酸化クロムとダイヤモンドパウダーを混合したもので、長時間にわたり肌に直接触れると人体に非常に有害な影響をもたらします。多くは大人になる前に足が不自由になります。

インドのダイヤモンド産業における児童就労は、憲法で廃止後も継続されているのが現状です。


カット・研磨工場で働く子供:インド(Source: 


ダイヤモンドの研磨作業1日7~9時間行い、賃金は一ヶ月で30ドル程度とも報告されています

“Child Slave Labor in India’s Diamond Industry”

鉱業では子どもたちが重要である、これは大きな問題です。明らかに児童労働があり、その労働条件がひどいことが多いからです。また、子どもたちは教育を受けることなく、鉱山や裁断工場で一生を終えることになります。

ダイヤモンド産業は、「子どもの権利」を侵害しているのです。

児童労働は国際条約で禁止され、多くの国で批准されているとともに、ほとんどの国には児童労働を禁止する法律があります。しかし、児童労働を禁止する法律が存在したとしても、機能していないケースが多いのです。

問題は、ダイヤモンド産業が正規のセクターと、取り締まりの難しい多数の下請け業者とに分かれていることです。


環境破壊


ダイヤモンド、および他の貴金属および宝石の原石は、世界中の熱帯雨林にある重要な資源です。これらの天然資源の抽出は、頻繁に熱帯雨林生態系を破損し、近隣および採掘作業の下流に生存する人々に問題を引き起します。ダイヤモンドの採掘の中には、看過できない自然環境の破壊と、それに伴う劣悪な労働環境があるのです。

ダイヤモンド採掘による森林破壊

ダイヤモンド鉱山を作るためには森林伐採が必要です。森林破壊は、大気汚染を助長し、気候変動の加速も懸念され、生態系のバランスも崩れてしまいます。また、ダイヤモンドは採掘時に大量の土を掘り起こす必要がありますが、掘り尽くした後の鉱山跡地は再利用されることなく放棄されることも少なくありません。そのような跡地は水がたまり、池になってしまいます。農地としても使えない上に、マラリアを媒介する蚊が繁殖したり、落ちて溺れる人もいたりして危険なのです。

deforestation

ダイヤモンドの採掘方法


ダイヤモンドの採掘には大きく分けて3つの方法があります。

❶ パンニング:ザル状の大きなお皿を持って川に入り、砂を洗い流しながらダイヤモンドを探す手法で、古くから伝わってきたダイヤモンド採掘法の1つ。キンバーライトは自然による風化や浸食によって砂利になり、河川や海に流れ出して水底に堆積しているため、それを回収することでダイヤモンドを採掘します。(※キンバーライト:ダイヤモンドの母岩)

ウォッシングの様子:西アフリカ・シエラレオネ共和国(出典: Diamonds for Peace

環境への影響

”❶パンニングのような原始的な零細採掘現場では、環境への十分な配慮がなされていないことが問題となっています。川に潜って採掘をする場合、採掘エリアを厳密に区切ることができないため、現場の管理が困難であったり、土地の所有権が不明確なことが多いため、その土地を持続的に活用していこうというモチベーションが働きません。さらに「ゴールドラッシュ」のように目先の利益に目がくらみ、環境に配慮しない土地を荒廃させる無理な採掘が行なわれ、採掘が終わったあとは元の状態に戻さずその土地を離れるというケースが少なくありません。そのような土地は、採掘後農地利用もできず放置されているのです。”

出典: Diamonds for Peace「環境破壊」


❷ パイプ鉱山:地面に大きな穴をあけて、その中からダイヤモンドを採掘します。爆薬を仕掛けて粉砕したキンバーライトを回収する方法や、ドリルなどの工具を使い、掘削されたものを運び出す方法など。大規模な採掘が可能である代わりに、掘り進めていくにしたがって崩落などの危険性があります。

キンバーライトパイプからの採掘イメージ (出典: Diamonds for Peace


❸ 漂砂(ひょうさ)鉱床:低リスクで、しかも広範囲の採掘を一気に進められる。パワーシャベルやブルドーザー、真空吸引機材といったもので、ダイヤモンドが含まれた砂利を回収する方法

漂砂鉱床からの採掘イメージ (出典: Diamonds for Peace

環境への影響

”❷のパイプ鉱床や❸の漂砂鉱床の採掘には、大規模な機材を投じる必要があり、企業が採掘現場を管理しています。近年では、これらの企業はISO14001 (環境マネジメントシステムに関する国際規格 )を取得し、ダイヤモンド採掘によって生じる環境への影響を持続的に改善するためのシステムを構築しています。またこのような採掘現場は一局に集中し、企業による統制が効きやすいため、環境への影響も最小限に抑えることができると言われています。ただし、ISO規格には環境パフォーマンスの評価に関する具体的な取決めはなく、組織は自主的にできる範囲で評価を行うに留まります。”

出典: Diamonds for Peace「環境破壊」



ダイヤモンド採掘の中心国:ロシア


ロシアの国土のちょうど中心の位置に近い場所、サハ共和国の西部にあるミールヌイ (Mirny)は、ロシアのダイヤモンド生産の99%を担っています。

世界の天然ダイヤモンド生産量・国別ランキング2020年のデータによると、ロシアは世界のダイヤモンド原石の30%を生産している事がわかります。

Top 10 Diamond Producing Countries in the World 2020 | Diamond Production by Country

天然ダイヤモンド生産量 国別ランキング(2020年データ)
1位 ロシア(23,000,000カラット)
2位 ボツワナ(16,000,000カラット)
3位 カナダ(13,000,000カラット)
4位 アンゴラ(8,500,000カラット)
5位 南アフリカ(7,700,000カラット)
6位 コンゴ民主共和国(3,700,000カラット)
7位 ナミビア(1,900,000カラット)
8位 レソト(1,100,000カラット)
9位 オーストラリア(340,000カラット)
10位 タンザニア(260,000カラット)


永久凍土を”核爆破”して採掘されるダイヤモンド

そんなロシアでは、1970~80年代、永久凍土を核爆破して地下資源採掘を進めた歴史があります。永久凍土を核爆破して穴を空け、その下に眠る地下資源を採掘していることから、環境破壊に繋がるという指摘が有ります。永久凍土の破壊は自然環境に多くの悪影響を与えているであろう事は推測されており、現在の技術では永久凍土を再生することは出来ないのです。

ロシア・ミールヌイにあるミール鉱山 1:直径1.2キロ、深さ約500メートルの巨大な穴
2004年に露天掘りでの採掘が終了し、現在は鉱山跡地として観光地になっている。
Open-pit mine at the Mir pipe. City of Mirny, Yakutia
(Source: ALROSA website)
ロシア・ミールヌイにあるミール鉱山 2:穴の空洞に吸い込まれてしまう危険があるため、ヘリや小型機は穴の上空を飛行することを禁じられている。


しかもこのダイヤモンドの採掘エリアでは、核爆破により広大なエリアが核汚染された事で世界中から非難を浴びました。

一度汚染されると長期間にわたってその影響から逃れる事の出来ない放射能。その為、この鉱山で働く工夫は日常的に被爆し命の危険にさらされながら働くのです。現在、この地域に鉱山労働者として働くすべての工夫の飲料水の主要な供給源は汚染されており健康状態に大きな影響を与えている事が報告されています。(https://bridge-antwerp.com/faq/faq_25518.html

ダイヤモンド採掘を継続するために森林伐採、土壌擾乱、大気汚染、核物質の大気への排出、地表水質汚染、地下水汚染、ほこり、騒音、職場の健康と安全、等多くの犠牲を払いながら続けているのです。

ダイヤモンドの採掘は、経済的な理由から中断されることは無く現在も続けられているのです。現在もロシアのダイヤモンド鉱山では、天然ガスが自然噴出し逆火しているために気流が安定しない事から鉱山の上空をヘリコプターで飛行することは禁止されています。永久凍土の発破は自然環境に多くの悪影響を与えているであろう事は推測されているにもかかわらず、現在の技術では永久凍土を再生することは出来ないのです。

(Source:Bridge)

また、核汚染と自然破壊の問題があるロシア産ダイヤモンドについては、ダイヤモンド業界はロシア産のこれらの問題点は認識しつつも高品質ということで需要があるため、産地不明ということにしてダイヤモンド取引所で取引されています。


露天掘り鉱山で起きた産業爆発
Industrial explosion in the open-pit mine of the Internatsionalny pipe. 2008. 
(Source: ALROSA website)



エシカル鉱山


ダイヤモンドの採掘・生産過程には人権問題、児童労働、環境破壊などの社会問題がつきものですが、一方で正しい労働環境でクリーンな採掘が展開されている鉱山も存在します。

コンフリクトフリーダイヤモンド、または倫理的に調達されたいわゆるエシカルダイヤモンドの信頼できる供給元はまだ数少ないですが、

オーストラリア、カナダ、ボツワナで産出されたダイヤモンドはエシカルとして最もよく知られています。

オーストラリアの鉱山
1. アーガイル鉱山:リオ・ティント所有(2020年11月3日に閉山)
2. エレンデール鉱山:グッドリッチ・リソーシズ所有

カナダの鉱山
1. ディアビック鉱山:リオ・ティントとハリー・ウィンストンが所有
2. スプリングレイク鉱山:デビアスが所有・運営
3. ビクター鉱山:デビアスが所有・運営

ボツワナの鉱山:デブスワナ所有ボツワナ共和国政府とデビアスグループが50%ずつ共同出資)

カナダ鉱山で産出されたすべてのダイヤモンドは、カナダ政府によって記録・鑑定され、カナダマークカードと呼ばれる真正性の証明書が与えられます。現在、ボツワナ鉱山からの証明書は発行されていませんが、近い将来発行される予定です。

カナダマークについてはこちらの記事をご覧ください🔽

“■カナダマークダイヤモンド 100%トレーサブルな原産地”



これらの鉱山が倫理的と見なされる理由?


ではオーストラリア、カナダ、ボツワナの鉱山から算出されたダイヤモンドが倫理的と見なされる理由は一体何でしょうか。

それは、採掘方法、公正な賃金、人道的な取り組みが主な理由です。

オーストラリア、カナダ、ボツワナの鉱山での採掘方法は、労働者の安全が経営陣の最優先事項であり、正しい労働環境でクリーンな採掘が展開されており、より安全であると考えられています。

また、地下資源採掘を行う鉱山の何倍ものサイズの森林を保護する活動を行っています。

世界をリードするダイヤモンド会社デビアスは、南アフリカから隣国モザンビークへ良環境で増えた野生の象を移動するプロジェクトを開始するなど、など、野生動物の保護にも力を入れています。


ダイヤモンドビジネスを通して、生活インフラの整備、水道やガス電気、道路や学校の整備、病院から商業施設まで、大きな雇用を創出して国策となるような産業を生み出すなど、経済的安定性とともに、採掘地域の人々の生活向上のために貢献など、正にエシカルな活動と言えるのです。



私たちの消費行動は社会の課題と密接に結びついている


他の大規模な採掘や掘削作業と同様、ダイヤモンド産業も環境保護主義者や人道主義者からの批判がないわけではありません。

しかし、消費者がより透明で責任ある業界を求め続ける中、ダイヤモンド業界は追跡可能なダイヤモンドや環境・社会の改善で応え続けているのです。

私たちの消費行動は社会の課題と密接に結びついている。
ダイヤモンドもその一つであることを改めて私たちに気づかせてくれます。

何にも変えがたい大切なダイヤモンドジュエリー。婚約や結婚の証であったり、誕生日や記念日のプレゼント、または自分へのごほうびなど、私達の人生の幸せな時間を彩るダイヤモンドは愛と幸せの象徴です。

あなたが選ぶダイヤモンドの意義は、それが象徴する「愛」にあります。

愛をもってこういった事実を意識して消費購買選択をするなど、これから私たちがよりよい社会を維持するために持続的に取り組める行動をする。
この意識と行動が問題解決に一歩近づけるのではないでしょうか。

日々の行動が社会を変える「消費アクティビズム」という言葉があるように、私たちが動けば、社会は変えられるのです。


では、エシカルジュエリーを選ぶために見るべきポイントとは何なのか。まとめていきたいと思います。


「負の要素」がないジュエリーを選ぶ


「エシカルジュエリー」「サスティナブルジュエリー」というジャンルが確立され、その取り組みの輪が社会に広がり、ジュエリー業界に新しい時代の風を吹き込んでいる昨今、

さまざまなアプローチの方法がある中でその意味には多様性がありますが、共通しているのは、世界が抱えている環境問題や社会問題の解決に繋がっている点です。

ジュエリーの購入を考える際には、宝石や貴金属の調達方法や素材選び、フェアトレード、トレーサビリティに対する取り組み方など、それぞれのブランドや企業としての活動を確認してみるといいでしょう。

取り組みや素材選びについての確認ポイント

■ 内戦当事国に不当に外貨が流れ込まないようにするため、紛争地域で産出される鉱物資源(ダイヤモンドなどの宝石類、金などの金属)を取引の対象外とする取り組みを行なっている

=紛争ダイヤモンドや紛争鉱物ではないコンフリクト・フリーの宝石類・金属などを使用している

■ 採掘・カット・製造の過程において、労働者への搾取(低賃金労働による貧困)や不当な労働(児童労働・強制労働)などの様々な人権侵害の問題を是正する取り組みを行なっている

=労働者の生活向上や労働環境の改善を目的にフェアトレードされた素材を使用している

■ 地球環境・天然資源の維持や保全のために、鉱山における環境破壊の問題に配慮している

=環境負荷の少ない素材を使用している(合成ダイヤモンドなども扱っているなど)またはリサイクルされた素材や、中古品やデッドストック、不良在庫から回収された素材を使用している

■ 貧困地域の人々に仕事を与えることで産業振興を図り、自立性を支援する取り組みを行なっている

=貧困地域の人々の自立に向けての支援活動で作られた素材を使用している

■ 採掘されてから消費者の手に届くまでの経路が明示されている

=原産地証明書などを提供している、など


まとめ


「エシカルジュエリー」「サスティナブルジュエリー」を選択することは、消費者側としては、環境問題や社会問題などの世界が抱えている様々な問題の解決の一端を担う、もしくは環境問題や社会問題などの悪化に加担してしまう恐れがないというメリットがあります。

世界に目を向けた時に、紛争や内戦への資金源だけでなく、児童労働・過酷な労働環境・貧困といった人権問題から、劣悪な方法による採掘での環境破壊など、実に様々な社会問題が、今でも少なからず続いているのです。
エシカル消費がただの流行では済まされない理由がここにあります。

正しく取り引きされたダイヤモンドの収益は、人々の生活の向上に大きく貢献しています。これからはこういった問題は自分事として捉え、ダイヤモンドの産地やバックグラウンドに興味を持ち、最終的にクリーンでエシカルなダイヤモンドを選んでみてはいかがでしょうか。

これからのジュエリー選びは自分と世界の誰かのために。

そのジュエリーの向こう側に、たくさんの笑顔や豊かな自然が見えるような、そんなジュエリーを身につけていれば、

毎日がきっともっとハッピーになるはずです!


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