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Complete Jazzmaster Settings

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ジャズマスター概観

フェンダー社のエレクトリックギター「ジャズマスター」は、フェンダー社の最上級モデルとして1958年のNAMMショウで発表されました。 多くのジャズ&ブルースギタリストのスタイルにあわせ、座って演奏する場合でも体にしっかりフィットするようデザインされた「オフセット・ウェスト」型のボディ、独立したボリューム&トーンコントロールが可能な2系統のコントロールサーキット、弦が切れた際にチューニングの狂いを抑止できる、ロック機能のついたフローティングトレモロ。メロウでジャジーなトーンを

プロトタイプ〜仕様の変遷

プロトタイプ フローティング・トレモロのアイディアはストラトキャスター開発時のシンクロナイズド・トレモロの対案として存在したといいます。ストラトキャスターは販売直前まで別のトレモロが搭載されることになっていましたが、サスティンが無くなってしまうという課題を克服できず、直前で全く違うトレモロをゼロから設計し直したということです。ストラトキャスターに採用されたのはシンクロナイズド・トレモロでしたが、この際にお蔵入りしたアイディアの一部がフローティング・トレモロに生かされているとい

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'62ジャズマスター

Inside of ’62 Jazzmaster

62年はジャガーの発売もあり、ジャズマスターにもいくつか仕様変更がありました。 大きな違いとしてはスラブ指板(slab boad)からラウンド指板(Veneer boad)への変更ですが、その他にも細かな変更があります。 プリセットコントロール用のブラスプレートはカッターの刃を利用してボディーに固定され、カッターの刃はしっかりとプレートにハンダ付けされ固定されています。 メインコントロールのバスタブプレート、厚み0.5mmほどのブラス製で、ザクリと同じ大きさ

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クローズアップ

ネックアングルの調整

ジャズマスターを始めとした60年代のフェンダーギターのほとんどのモデルで、ネックはボディー面と並行ではなく若干の角度が付くように調整されています。特にフローティング・トレモロという新たなトレモロユニットを導入する上で、ジャズマスターのネックに角度を付けるのは必須事項であったに違いありません。ネックの仕込み角をつけないとどうなるかはネックポケットにシムを挟んでいないFender Japan製のジャズマスターやジャガーを弾いてみれば分かるでしょう。良く調整されたギターもありますが

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ジャズマスターピックアップ

はじめにこのエントリーではジャズマスターのピックアップについて様々な角度から分析した結果を記しています。記載済みのコンテンツは下記の通りで、後半は有償コンテンツとなっています。 ピックアップの特徴 ・薄型のデザイン ・プロトタイプ ・ハムキャンセル ・直流抵抗値 ・マグネット ・ボビン素材 ・マグネットワイヤー ピックアップの高さ調整 ピックアップ・データ ・'50s-60'sビンテージ ・USA ・Squier Classic Vibe Jazzmaster ・セイモアダ

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フローティングトレモロ、ブリッジ

ジャズマスターから採用されたフローティングトレモロはシンプルな構造ながらレオ・フェンダーの考案したトレモロユニットの完成形でした。 このエントリーには下記のコンテンツが含まれます。後半は有償コンテンツです。 設計思想 ・ジャズギターとの類似点 ・可動式ブリッジ ・トレモロロック フローティングトレモロの構造 ・弦間ピッチ ・弦落ちのメカニズム ・トレモロスプリング ・ブリッジレッグ ・ブリッジサドル ・ブリッジ高さ調節ネジ ・ブリッジアンカー 設計思想フローティングトレモ

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塗装

オールドジャズマスターの塗装 オールドフェンダーの塗装には当時ニトロセルロースラッカーが採用されています。フェンダーはデュポンやディツラーなど車向けの塗料を扱っていたメーカーから塗料を仕入れていました。当時は基本色に染料を混ぜる形で多くのカラーバリエーションを作っていたため、ロットによって微妙に色味の違うギターが多数存在します。また、複数のメーカーから似た色を仕入れていたため、ディツラーのレイクプラシッドブルーはデュポンのレイクプラシッドブルーよりも緑がかっている、といったこ

50年代から60年代初期に発表されたギターの多くは.012-.052ゲージの弦を使用することを想定して設計されています。 意外と知らない人も多いのですが、ギター弦の表記はインチです。.012は0.012Inches=0.3048mm。.052は0.052Inches=1.320799mmです。 現在主流となっている.009や.010ゲージの弦を使用してバズやビビリなどの問題が発生した場合、最も効果的なのは弦のゲージを変えることです。少なくとも.011~のセットを使用するこ

トラスロッドの調整

レギュラーチューニング時の弦の張力は、010-046のゲージで約47kg。開発当時の標準だったと言われる012-053のゲージで約75kgです。常時こういった弦の張力にさらされるネックは湿度の変化等をきっかけとして曲がってしまうことがあります。弦を張っている方向にネックが反ることを「順反り」、逆方向に反ることを「逆反り」と呼んで区別します。 ネックが反らないよう強制するため、ネックにはトラスロッドと呼ばれる金属の棒が仕込まれています。ジャズマスターのトラスロッドはボディー側

ネジやスプリングの調整

ジャズマスターはサドルの固定用にスプリングを使用していますが、このスプリング部分でバズが発生したり、サドルやブリッジの高さを調節するネジ部分でバズが発生することが多いです。特にブリッジは構造が複雑なので、こういった問題の温床となります。 ギターを良く鳴らすために「固定するべきところはしっかりと固定する」「滑らせるところはしっかり滑らせる」という考え方に基づいて各部をチェックしてみてください。ブリッジ固定用のネジが緩くなっていないか、ペグを止めるネジが緩くなっていないか等、ネ

フレットワーク

オールドジャズマスターで利用されたフレットワイヤーは、インチ換算で0.080"のものです。Stewmacの#0155、ジムダンであれば#6240を選ぶと良いと思います。 60年代初期のフェンダーはフレットと指板のエッジの処理が特徴的です。 フレットが指板のエッジごと丸く削り取られており、手に馴染みます。丸く面取りされた指板エッジとフレットサイドがツライチに処理されているためスライド時にもほとんどひっかかりを感じることがありません。 現在主流の背の高いフレットでこれを行お

ナットの調整

狂わないチューニング、弾きやすい弦高、開放弦を弾いた際の音質にダイレクトに影響するパーツがナットです。 最近ではカスタムショップ製品もプラスチック製の整形ナットを使用していますが、オールドは牛骨のナットを使っています。その他、ブラスや人工象牙、特殊な樹脂を使用したナットも市販されています。 材質以上に加工精度がそのギターの弾き易さやチューニングの安定感に直結します。リペアショップに依頼するのが最も確実な方法ですが、ナットファイルと言われる専用のヤスリを購入して自分で加工し