ジャズマスターピックアップ
はじめに
このエントリーではジャズマスターのピックアップについて様々な角度から分析した結果を記しています。記載済みのコンテンツは下記の通りで、後半は有償コンテンツとなっています。
ピックアップの特徴
・薄型のデザイン
・プロトタイプ
・ハムキャンセル
・直流抵抗値
・マグネット
・ボビン素材
・マグネットワイヤー
ピックアップの高さ調整
ピックアップ・データ
・'50s-60'sビンテージ
・USA
・Squier Classic Vibe Jazzmaster
・セイモアダンカン
・リンディーフレーリン
・フェンダージャパン
ピックアップの特徴
ジャズマスターにはフェンダーギターの最上位機種にふさわしいサウンドを提供するために新たにデザインされた薄型のピックアップが搭載されています。
薄型のデザイン
メインコントロールに大きなザクリを設けるため、ジャズマスターのボディーはギブソンES-335のセンターブロックに相当する部分を大きく掘り込まないセミアコのような設計となっています。テレキャスターのフロントPUのザクリ深さが17.5mmであるのに対し、ジャズマスターPUのザクリ深さは10mm。ジャズマスターに搭載する新型ピックアップは可能な限り薄くしなければなりませんでした。
ストラト・ピックアップのコイルの厚みは約12mm、これに対してオリジナル・ジャズマスターのコイルの厚みは約3.5mmです。ジャズマスターのコイルの厚みは一般的なストラトタイプの1/3程度しかありません。
ちなみにジャズマスターとよく比較されるギブソンのP90は実はコイルの厚みが約7.5mmもあります。
プロトタイプ
フェンダーは57年にペダルスチールFender 1000で8ポールピースの薄型ピックアップを開発しており、ジャズマスターのピックアップにこのアイディアを展開しています。
ジャズマスターのプロトタイプでは7本のポールピースを持つピックアップが試されており、一本の弦振動を2本のマグネットで捉えることで、アタックを抑えたスイートなサウンドを狙ったものと思われます。このアイディアは続くジャズベースで採用されています。
ハムキャンセル
プレベで採用されたハムキャンセル機構をフロント・リアピックアップ間で実現しており、フロントピックアップとリアピックでマグネットの着磁方向は逆、コイルを巻く向きもそれぞれ逆方向になっています。
直流抵抗値
ピックアップのコイル・デザインはピックアップのEQを左右しています。
ピックアップのコイルに使用される銅線をマグネットワイヤーと呼びますが、多く巻けば巻くほど、ワイヤーの径が細ければ細いほど直流抵抗値は高くなります。また、コイルの温度が高くなると直流抵抗値も高くなります。
直流抵抗値が高くなるほど出力が高くなり、中低域が増します。逆に、直流抵抗値が低ければ中低域はすっきりし、高域が出てきます。
ハンドワインディングの技術的には高さのあるコイルを巻くよりも、幅のあるコイルを巻く方が難しく、ジャズマスター・ピックアップは非常に個体差の大きいピックアップとなっています。
ジャズマスターのピックアップは、PRE CBS期は直流抵抗値が8kΩ強、'65ぐらいには7.5kΩ、'66ぐらいには6.3kΩぐらいまで下がっています。この直流抵抗値の変化については、マグネットワイヤーの章で述べます。
PRE CBS期のフェンダー・ピックアップはフロントとリアの直流抵抗値に明確な仕様差はありません。そのため、より弦振動の大きなフロント側の方が出力が大きいというギターがほとんどです。リプレイスメント・ピックアップはそういった出力差を考慮して、ブリッジ側の巻き数を多くして直流抵抗値を上げたものが多いです。
※直流抵抗値の計測方法
シングルコイル・ピックアップであれば、HOTとCOLDにテスターを当てて測ります。ハムバッカーの場合も同じです。タップできるPUは4芯線だったりしますが、どこがHOTでどこがCOLDなのかを理解していれば測れるはずです。分からない場合は4本の組み合わせを全て試してみて下さい。一番大きな数値がそのピックアップ全体の直流抵抗値です。
マグネット
ここから先は
¥ 350
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?