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フローティングトレモロ、ブリッジ

ジャズマスターから採用されたフローティングトレモロはシンプルな構造ながらレオ・フェンダーの考案したトレモロユニットの完成形でした。
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設計思想
・ジャズギターとの類似点
・可動式ブリッジ
・トレモロロック
フローティングトレモロの構造
・弦間ピッチ
・弦落ちのメカニズム
・トレモロスプリング
・ブリッジレッグ
・ブリッジサドル
・ブリッジ高さ調節ネジ
・ブリッジアンカー

設計思想

フローティングトレモロは、レオ・フェンダーがストラトキャスターで採用したブリッジ一体型のシンクロナイズド・トレモロのアイディアを一新し、全く異なるコンセプトの元で設計し直した、ブリッジとトレモロ分割型のユニットです。

ジャズギターとの類似点

お椀型のトレモロプレートからは想像することが難しいですが、ジャズプレイヤー用に設計された新開発のトレモロユニットは、多くのジャズギターで採用されているブランコテールピース+独立ブリッジを参考にデザインされています。
下の写真を見るとイメージし易いと思いますが、ブリッジサドルに対してテールピースから同じように弦が張られていることが分かります。ジャズマスターのトレモロユニットがジャズギターのテンション感と弦振動を得ることをコンセプトにデザインされたことが想像できます。

ES-125の木製ブリッジとブランコテールピース
62年製ジャズマスターのブリッジとテールピース

この構造は、弦がボディ裏から回り込んでサドルに接するテレキャスターやストラトキャスターとは異なり、弦を不自然に折り曲げることがありません。そのためサドル上を弦が滑るように移動し、安定した音程と滑らかなビブラートを実現しています。

可動式ブリッジ

フローティングトレモロとセットで開発されたブリッジはすり鉢状に加工されたアンカーとブリッジスクリューが点で接地しトレモロの動作に合わせて前後に倒れる仕組みになっています。

オリジナル・ジャズマスターのブリッジ。オクターブ調節ネジ用の穴は指板アールに沿ったものではなく、1弦、2弦の位置が高めに設定されています。

トレモロロック

フローティングトレモロは演奏中のトラブルに対処するための、画期的な機構「トレモロロック(トレムロック)」が搭載されてています。
演奏中に弦が切れてトレモロと弦のバランスが崩れると、他の全ての弦のチューニングがシャープしてしまいます。この際、トレモロが正しくセッティングされていると、一旦アームを押し込んでトレモロをロックすれば、即座に正しいチューニングに戻って演奏し直すことができます。

①トレモロロック・ボタンをアンロックポジションにセットします。(丸いボタンをネック方向にスライドさせます。)

②弦をチューニングします。

③トレモロ調節ネジ(ボタンの真下にあるネジ)を少しずつ締め込みます。

④トレモロロック・ボタンをロックポジションにセット(丸いボタンをブリッジ方向にスライド)できなくなる手前ギリギリに調整します。

⑤最終的にトレモロロック・ボタンのアンロック←→ロックでチューニングが変化しないように設定します。

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トレモロロック

トレモロロック・ボタンがうまく動かない場合はトレモロ調節ネジをゆるめて下さい。

フローティングトレモロの構造

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