ジャズマスター概観
フェンダー社のエレクトリックギター「ジャズマスター」は、フェンダー社の最上級モデルとして1958年のNAMMショウで発表されました。
多くのジャズ&ブルースギタリストのスタイルにあわせ、座って演奏する場合でも体にしっかりフィットするようデザインされた「オフセット・ウェスト」型のボディ、独立したボリューム&トーンコントロールが可能な2系統のコントロールサーキット、弦が切れた際にチューニングの狂いを抑止できる、ロック機能のついたフローティングトレモロ。メロウでジャジーなトーンを提供する専用のピックアップ等、数々の先鋭的な機能が盛り込まれています。
ジャズ市場を狙うという基本コンセプトも明確で、ジャズマスターはソリッドギターでありながらボディーに大きなザクリを施し、ストラトキャスターベースのバックコンター、エルボーコンターを踏襲しながらジャズギターのホロウ構造を擬似的に実装するという、実に挑戦的なことを行っています。(非常に似たデザインを持つジャガーはターゲットとする市場が異なるためボディーのザクリは最小限となっています。)
しかし、残念なことにジャズギタリストにはほとんど受け入れられませんでした。(それでもジョー・パスのように、一時期使用していたギタリストもいました)
ジャズマスターはその後、意外にもサーフロック市場から支持を得ることになりますが、70年代にはオフセット・ウェストのギターは時代遅れとされ、サーフロック市場を狙った「ジャガー」ともども、フェンダーのラインナップから消えていくこととなります。(フェンダーはカタログ上、1980年までジャズマスターを販売しますが、多くのコレクターは実際の生産は1976年頃に終了していると考えています。)
フェンダー社はレオ・フェンダーの体調の問題から1965年にCBS(Columbia Broadcasting System)社に売却され、技術顧問として同社に残ったレオも数年で退社します。67年には多くの(楽器など扱ったこともない)労働者が工場に送り込まれ、Fender製品の品質は急激に低下していきます。(70年には優秀な人材がFenderを離れ始め、80年にはレオ率いるG&L社でオールド・フェンダースタイルの楽器製造が始まります。)
CBS傘下のFenderでもいくつかの新しい技術が開発されましたが、品質低下による影響からは抜け出せず、85年にCBSから売却されることになりました。品質低下が始まるCBS買収(65年)以前のFender製品はプリCBSとして人気を集めています。
1984年よりフェンダー・ジャパンにて、非常によくできたリイシューモデルが販売されています。(残念ながら、ピックアップだけはその構造上、海外のフォーラムで批判が多いです。)
1999年よりフェンダー・USAでもリイシューが販売され、USAは62年の仕様(2012年からは65年の仕様)を、ジャパンは66年の仕様をそれぞれ再現しています。
Fender advertisement (1962)
Fender advertisement (1965)
Fender advertisement (1966)
Fender advertisement (1967)
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