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学童保育で感じた職務の限界と歯がゆさ ~一市民としてシェアリングエコノミーの成功事例を広げる市職員の挑戦~

埼玉県内で公務員として働く、山岸智也さん。2020年6月から一般社団法人シェアリングエコノミー協会の公認アンバサダーをつとめ、2020年7月にはAsMamaのシェア・コンシェルジュにも認定されました。

※2020年9月公開の記事。現在は市職員を退職し、グラフィックレコーダーとしてもご活躍中です※

— 山岸さんは、2019年までの4年間、学童保育の管理・運営・人事を担当していたそうですね。

学童保育に入れない方と、窓口で対面して直接お話をすることの多い仕事でした。子どもの預け先がない、と困っている親御さんたちに対して、職員としてできる対応には限りがありました。一般的に、役所・役場では預け先のない方に対して、ファミリーサポートセンターを紹介することが多いです。もちろん、AsMamaの「子育てシェア」のように、子どもを預けたり頼りあったりできるサービスは、民間企業にもたくさんあります。一個人としてはできる限りの選択肢を伝えたい、紹介したい。でも、個人の独断ではできないのです。それが、とても歯がゆかった

待機児童問題や、それにより職を失う母親たちの話は、知識として当然ありましたし、ニュースでもよく耳にしていました。ですが、ひとり親や共働きの親御さんの相談、悩みを実際に目の当たりに自ら体感すると、その苦労に想いを寄せずにいられませんでした。

「学童に入れないと仕事ができない」と窓口へ相談に来た市民の方に、街なかで偶然お会いしたこともあります。「あの時はすみません」と声をかけると「その後、仕事は辞めてしまったのですが、そのぶん子どもと向き合って過ごす時間が増えました」と。

それでも、学童保育のほかに人が集まれる空間・場をつくれないか、子どもと一緒にいながらも働ける環境を増やせないか、何かできることはないのか、悩みは尽きませんでした。

— そんなとき、スキルシェアに出会ったのでしょうか?

3年前、個人の時間を30分単位で売り買いできるスキルシェアサービス「タイムチケット」を利用しはじめました。はじめてシェアリングエコノミー、民間サービスに足を踏み入れたきっかけです。

僕は独身なので(笑)恋愛相談や異性に好かれるための会話術など、コミュニケーションや心理学を中心に「買う側」で。シェアしてもらったスキルは、人と接する職務でも役に立ちました。

それから、ライティングやグラフィックレコーディング、カメラやスプーン曲げ・手相に至るまで、ユーザー表彰されるほど利用しました。

— 売る=提供側ではなく買う=利用側だった山岸さんが、なぜシェアリングエコノミー協会のアンバサダーに応募しようと思ったのでしょうか?

こうしたシェアリングエコノミーを自治体の行政活動に取り入れたい、と考えたのがきっかけです。たとえば神戸市は、地域住民のコミュニティの希薄化や、働く世代の運動実施率の低さという課題解決のために、うまく民間のシェアリングエコノミーを活用しています。

学童保育においても、学童保育員の人材不足という大きな課題を抱えています。人材不足により、長く働いてもらっている方を引き止めているのが現状です。ところが、年齢の上昇に伴い、賃金も上がります。学童保育員は、家族の扶養の範囲内で働きたいという職員が圧倒的に多数で、そうなると勤務時間の短縮で調整せざるを得ません。

このままでは早かれ遅かれ限界を迎えてしまいます。だからこそ、市民の力、民間の力の活用が必要だと僕は考えています

— AsMama認定シェア・コンシェルジュとなった今、やりたいことは?

シェア・コンシェルジュには「つたえる」「つなぐ」「あずかる」の3つの活動があります。まずは、市職員として職務ではできなかった民間のサービスをで伝えることからはじめたいと思っています。noteやSNSを活用する予定です。

AsMamaの「子育てシェア」は、人と人とがつながって頼りあうしくみです。地域の人同士がつながれる交流の場づくりにチャレンジしようと思っています。僕はボードゲームが好きなので、子どもも親も一緒に楽しめるボードゲーム会を企画・開催しようかな。楽しみながら親睦を深め、シェアできる関係性をたくさん増やしていきたいですね。

実は僕、けん玉準初段なんですよ(笑)。窓口業務におさまらず、学童保育の現場に足を運んで、けん玉あそびをしたことも。グラフィックレコーダーというイラストを書くことできます。送迎や託児のシェアもお受けして、お父さん・お母さんたちに、少しでも気持ちや身体を休める時間をつくれたらうれしいです。

AsMamaのシェア・コンシェルジュは活動に応じて奨励金が支給されたり、頼りあいのシェアによって謝礼を受け取ることもできますが、公務員は副業規定に反するので、あくまでもボランティアとして活動していきます。「子育てシェア」では謝礼支払いの不要な「お気持ちポイント」制度があるので、使ってみたいです。

— 学童保育にかかわる仕事をしていたとはいえ、子育て・親としては「当事者」でない山岸さん。どうしてそんなに一所懸命になれるのでしょうか?これまでの人生で、どんな経験をされてきたのですか?

僕が「タイムチケット」ではじめてグラフィックレコーディングしてもらったものを紹介しますね。とても分かりやすいです。

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高校時代に「アカペラ」に出会い、全国大会に出場した経験があります。大学でもアカペラサークルに所属し、イベントづくりに注力しました。セミプロとしてアーティスト活動していたこともあるんですよ。

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ところが、大学卒業後の進路で大きな壁にぶつかりました。アカペラを通じて受けた刺激と出会いを胸に、進路希望はエンタメ系の企業でしたが、必ずと言っていいほど全国転勤がありました。

僕の父は公務員、母は介護職で、家族がいつも一緒にいる家庭で育ちました。だから僕自身も、夫婦が離れて暮らすという生き方は考えられません。就職活動のとき付き合っていた彼女がいたのですが、遠距離恋愛をすることはまったく考えられず、結果的にエンタメ系をあきらめ、全国転勤のない企業を探すことにしたんです。

4年生の6月に、思い切ってシフトチェンジ。9月の公務員試験を受けることに決めました。その彼女とは試験の1カ月前にお別れしてしまったのですが、父と同じ、公務員の道へ進むことになりました。

音楽活動の経験から、人と話す楽しさも大切もよく知っていますし、人との出会いと刺激がどれほど大事かも知っています

学童保育の仕事をとおして知ったのは、預け先がないことで家庭内不和が起きてしまったり、理想の親論に苦しんでいたり、古い仕事概念にとらわれたりして、あきらめていく親御さんたちの存在です。

「本当の気持ちは何ですか?本当はあなたは何をしたいですか?」と、ひとりひとりに聞いてあげたかった。もちろん職務上、そのような突っ込んだ質問はできないのですが・・・

だからこそ、公務員でありつつも、一市民として新しいことを取り入れる成功事例をどんどん広げていきたいんです。

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— 最後に、山岸さんの目指す未来を教えてください。

昔のように、隣の家に遊びにいけるご近所付き合いを「子育てシェア」を使ってよみがえらせたいですね。助けあって、預けあって、シェアできる世の中をつくりたいです。

現代においては、人に助けを求める力・頼る力が、もはや一つの能力としてすごく大事だと、僕は思っています。頼る=悪いこと、ではなくなってほしい

市の職員でも育休を取る方がいますが、権利なのにもかかわらず、休むときにはとても申し訳なさそうにします。そこは「申し訳ない」ではなく、頼らせてくれて「ありがとう」と、みんなが笑顔で言える社会がいいですよね。

《あなたも子育てシェアやシェア・コンシェルジュに参加しませんか?》

▼AsMama認定シェア・コンシェルジュインタビュー


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