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電動未来_002-EVを作るなんて簡単だ。ただ◯◯を持ってきてくれ。

もう遠い昔のような気がする。それは一段と蒸し暑かった夏がようやく終わろうする、ある日の深夜だった。大きなスクリーンのある一室に何人かの人間が集まり、ガラスの向こうに住んでいる人と話し合っていた。当時はまだZOOMのような便利なものは普及しておらず、専用の設備のある場所まで出向いて、ビデオ会議を行うのが一般的だったのだ。
私たちが話し合っているテーマはEVについてだった。そのころはEVは地球環境問題をテーマとして、久しぶりに注目され始めた時期で、日本ではスバル・R1e、三菱・i-MiEV、日産・リーフなどが発売され、アメリカのテスラが紙面を賑わせ始めていた。
私はそれほど考えずに、その場の責任者の一人に質問した。
「御社はどうなさるんですか、電気自動車」
その人は少し考えるようにしてこう言った。
「テスラみたいなものを作るのは簡単ですよ。いつでも作りますよ。その代わり…」
その代わり?
「マーケットを持ってきてください」
ああ…。
その時、私はなんでそんなことが分からなかったんだろうと自分が恥ずかしくなった。あの日本を代表する自動車会社にとっては、電気自動車を製造することは、技術の問題というよりマーケットの問題なのだ。というより、電気自動車だけでなく、ガソリン車も、ディーゼル車も、ハイブリッド車も、おそらくほとんど全ての製品はマーケットの問題なのだ。私はその企業の強さの理由を明確に理解した。

あれから十数年。世界の自動車市場は、誰が得するのか分からない、いや得をしようとしている人にしか特にならない、地球環境問題の美名のもとに、電気自動車へと傾倒してきているように見える。
特に私がショックを受けたのは、2021年7月の次のニュースだった。
「独自動車大手ダイムラーの高級車事業会社、メルセデス・ベンツは22日、販売する新車を2030年にもすべて電気自動車(EV)にすると発表した。」
それからEUを中心に、多くの自動車会社がEVへの転換を宣言した、ようだった。
しかし、このダイムラーに関しての元記事はこうなっている。
「Mercedes-Benz will be ready to go all electric at the end of the decade, where market conditions allow.」
Conditions allow?
どういうわけか日本語で書かれている記事にはこの一文が落ちていることが多かった。
Conditions allow.
そう、メルセデスも「マーケットの状況次第で」と言っているのだ。あの日の某社のように。
電気自動車を巡る状況は目まぐるしく変わっている。ただ私が言えるのは、あの日の某企業の言ったことは、おそらく正しいのだと言うことだ。

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