観音様を縁取る桜の額縁 船岡城址公園
宮城県柴田町の桜並木――。
福島⇔仙台間を結ぶ電車に乗っている際や、4号線を車で通る際にいつもこう思っていた。
「実はこの桜並木はけっこう凄いのでは?」
自分の家から比較的簡単にアクセスできるところにあるため、あまり有難みを感じていなかったのだ。とはいえ、時期が重なるタイミングで視界に入ればやはり圧巻されるところがあったし、電車で福島⇔仙台間を通っていた時分には、これを見なければ春は始まらないといった定番かつ至高の景色として心に留めていた。だから、いつかその桜並木を心行くまで写真に収めてみたいという思いがあり、天気の助けも相まって今回何とか行動に移すことができた。
ひた走る車に巻き上げられ、桜の花弁が小躍りする4号線――。鬱々とした冬空ははるか遠方に追いやられ、汗ばむほどの陽気と開放感に満ちた青の煌めき。桜が映えるにはもってこいの空だった。
この河川敷の桜並木は、「白石川堤 一目千本桜」と呼ばれ総延長約8kmにも及ぶ。なかなかお目にかかれる景色ではない。整然と立ち並ぶ満開の桜を見に、多くの外国人観光客も訪れていた。
また、河川敷の桜並木はほとんどがソメイヨシノだが、船岡城址公園ではヤマザクラ、サトザクラ、ヤエザクラ、シダレザクラ等々、いろいろな種類の桜を見ることができた。といっても、僕はそれらの種類の判別ができるわけでなく、写真に撮ったはいいけど、この花は何ですか人間になっているわけなのだが……。また、中には「コミュニティガーデン花の丘」があり、チューリップやバラなどの花を楽しむこともできる。
忘れていけないのは高さ24mにもなる大観音像だ。きっとこれを目当てに来る外国人観光客もいるのだろう。「柴田町船岡出身の野口徳三郎氏が昭和50年10月に、亡妻シズ夫人の冥福と世の平和と安全の願いを込め、私財を投じて建立した」と、柴田町観光物産協会のHPに書いてあるが、なかなかその感覚は現代の人間には掴めない。冥福のために? 私財を投じて?? なかなかスケールがでかいというか……。昭和だからそれほど仏像の建立が盛んだった時代の話ではないような気がするんだけど。個人の信仰心がもたらすものは、時に我々の想像を優に超える。
きっと桜の写真をまとめて撮れるのは、今年はこれが最後になっただろう。1年に1回の重みが、年々増していく。これが年を取るということなのか……。
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