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中小企業はヒトの問題と、どう向き合うか?

少し前かがみになって、妙に神妙な顔つきで小さな声で「横溝さん、ちょっとご相談が・・・」

中小企業経営者にとって、これほど怖い瞬間はない。

この言葉の次にくる言葉が「実は退職をさせていただきたくて…」の確率はおそらく98%くらいなんではないでしょうか。

中小企業にとっての「ヒト」の悩みはなぜこれほどまでに重いのでしょうか。

せっかく育ててきた人材の退職、いい人材が育たない、人が採れない。


「中小企業は砂の上の楼閣だ」

弊社の創業者である私の父の言葉です。


日々強い気持ちをもって上に上がっていこうと思っても足元が砂に取られて、むしろ下に沈んでいく気分。


特にサービス体制も財務も脆弱な中小企業にとって、たった1人のスタッフの退職が業務に与える影響の、なんと大きなことか。

今回は中小企業にとっての人材問題の解決策について、私の考えを込めてお話させていただきます。


中小企業の悩みは、いつもヒト

中小企業の経営者の悩みの第2位は人材不足です。

私もいろいろな経営者様とお話ししますが中小企業の課題は「売上確保」「人材不足」「資金難」の3つ。

実際に野村総研さんの統計でもこのような統計結果が出されています。

NRI「中小企業経営に関するアンケート」(2021年3月)

おおざっぱに従業員別に考えてみても、

スタッフ数1~10人:
・知名度も圧倒的に低く人がそもそも採れない
・業務は完全に属人化していて教育体制がなく人が育たない
・給料も低くモチベーションが低め
・1人に依存する業務の割合が大きいため、退職されると業務が滞る。そして後任が採れない
・すべてのしわ寄せは全て経営者にのしかかる

スタッフ数11人~50人
・知名度はある程度出てきて全く採れないわけではないが採用には苦戦する
・商品サービスの提供者が経営者ではなくスタッフになっているため、退職による商品サービス提供のオペレーションが滞る※特にサービス業
・離職率が高まり、採っても採っても人が増えなく士気が下がる

スタッフ数51人~
・知名度もあり福利厚生も整ってきて採用はそれなりに苦戦しなくなる
・部署も増え、様々な人材が増えるが、部門間等のセクショナリズムが生じる
・退職者が出るのが当然の文化になり、スタッフ間での関係も希薄になる
・経営者とスタッフの距離は遠くなり、組織を支えるのは組織文化と給与となる。これらが育っていない企業は成長が止まる。

独断も入りますが、それぞれのステージごとにおいてヒトに関する悩みはずっと付きまとう。


中小企業はヒトの問題から脱却できるか

結論から言うと、中小企業が組織を運営する以上、ヒトの問題から脱却することは不可能です

言い換えると、ヒトの問題から脱却しようとする考えが間違えであり、中小企業経営者は常にヒトの問題と適度に寄り添いながら前に進むのが正しい。

上述の1~10人のステージを脱却して次のステージに移行できても、また次は11人~50人のステージ特有の悩みに対面する。その次も同じです。


なぜなら、中小企業にとって経営者とスタッフの距離の近さこそがその原動力なのです。

そのため、その原動力となっている距離感がある限り、中小企業にとってのヒトの問題は尽きないのは当然。


考えてみてください。

就職の際に、大手でなくあえて中小企業を選ぶ理由なんて「社長と同じ夢を一緒に追っていくことができる」以外ないのです。

だから、中小企業にとっては経営者の情熱とスタッフが一丸となって前に進んでいく以外に成長の道はない。

「半年後に新店舗を出す準備中に店長候補がやめてしまった」

「何を聞いても、「はい」としか答えないメンバーばかり」

「もう1年以上求人を出しっぱなしだが、応募が1人も来ない」


1歩進んで2歩下がるなんてもんじゃない。

「5歩くらい下がってる気がする」なんてジョークは、酒の肴くらいにしかならない。


中小企業にとってのヒトの問題を解決する方法

では中小企業において、ヒトの問題を解決する、つまりはヒトの問題から解放される方法を考えていきましょう。

私の考えるところ、おおきくは2つ。

①サービスをシステム化する
②アウトソーシングする


まず①「サービスをシステム化する」ですが、ヒトの問題で悩むのは、ヒトに依存するからなんですね。

ともすれば、ヒトに依存しない体制を構築するしかない。

重要なオペレーションをシステム化して、「誰にでもできる仕事」にする。

業務遂行において重要なのはシステムであり、ヒトではない状況にすることで、優秀な人材が採れない、人材が育たない、人材が流出するというリスクは抑えられる。

実際に弊社のお客様でも、このシステム化に成功し、圧倒的なスピードで成長されている企業もあります。


2つ目は②アウトソーシングしてしまう方法。

ヒトの問題で悩むくらいなら、いっそヒトを置かないという選択もあり。

ただ、実際のところ全てのオペレーションを全てアウトソーシングで回すというのも現実的ではないと思います。

全てアウトソーシングにすることも可能ですが、安定的にサービスオペレーションとして成り立つかは疑問です。

おすすめなのは、バックオフィス部門をアウトソーシングすることです。

経営者にとっての一番の関心ごとは「売上」であり、ここに関連する部署である営業やサービス提供部門はやはり社内スタッフで構成しておきたいもの。

一方、売上を上げない間接部門であるバックオフィス部門(経理、人事、総務)に人件費をかけることに消極的な経営者は多い。

実際にバックオフィス部門の専門職は比較的人件費も高くなり、さらにその専門性から、他の経営者含めたメンバーからすると「何をやっているかわからない部門」となるため属人化しやすい。

そのためバックオフィス部門で人を抱えるリスクはとても高くなります。

そこで、最近ではこのバックオフィス部門をアウトソーシングで請け負う会社も増えてきています。


上記2つの方法は、ヒトと付き合うことを実質的に諦める方法とも言えます。

いや、そうじゃないんだ、横溝さん。

そうではなく、マニュアル・規定・組織図・職務分掌といったルール作りをきちんと作れば、ヒトを育てる環境もでき、安定して仕事ができるようになり離職も減るのでは?という質問も多くお受けします。

最後にこの質問に回答していきましょう。


ルールを組織に入れるのにも、またルールがある

よく企業のことを理解もせずに、マニュアル・規定・組織図・職務分掌といったルールを流しこめば、素直にスタッフがそれらのルールに従い、ヒトが変わったように経営者の思ったように動くようになりますという幻を見る方も少なくありません。

これは大きな間違いです。

これらのマニュアル・規定・組織図・職務分掌といったルールを組織に入れるのにも、またルールがある。


順番が必要なのです。


想像してみてください。

あなたが一般スタッフだったとして、なにやら社長が連れてきたなんたらコンサルタントが、社長室で社長とコソコソこもって、やれマニュアルだったり、やれ職務分掌だったりを入れようとしていて、ある日突然社長が朝礼で「はい。では今日からうちは生まれ変わる。今日からはこれらのルールに従ってやっていけば、みんなの業務も随分と楽に…」


おそらく、みんな死んだ目をしてあなたを見ています。


残念ながらスタッフは会社の成長を経営者と同じ目線で見ている人なんていません。

なので、こうすれば「会社が良くなる」という説明ではスタッフは動かない。

違う、順番がそうじゃないのです。

まずやるべきは、スタッフの今の不安・不満の解消です。

時にはスタッフの不満を爆発させるのもいいと思います。

その不満を、とにかく聞き取ってください。(時に怒りたくなるような理不尽な不満であっても)

その不満が、今の御社をとりまく黒幕です。


そして、丁寧に聞き取った不満を解決するために、今みんなで何ができるかを膝を突き合わせて考えてみる時間を作ってみてください。

そして、その次に経営者がこれからどうしていきたいのか、そのために今どのような部分が課題になっているのかを穏やかに全員に共有してください。

・不満の解消
・課題の共有

システムを会社に入れたいなら、まずやるべきはこれら2つの要素を含めた社内の一体感の醸成なのです。

この一体感を無視して、会社にルールという名のシステムなんて入れようとするからほとんどの会社は失敗する。

組織やスタッフがカチカチに硬直してしまっているところに、システムなんて堅苦しいものをダイレクトに入れようとしても入る余地がないのです。

まずは、固まってしまっている組織やスタッフの心を一度柔らかくすることから、システム化の第1歩は始まる。


事実です。これは私が実際に失敗した経験者としてのアドバイスです。


ヒトの問題に対して、ヒトから逃げずに解決していきたいのであれば、その解決方法はルールではなく、やはり社長の理念の共有だということを忘れないでください。

中小企業という灯の灯った船を動かしていきたいのであれば、そのエンジンはモノ(システム/ルール)ではなく、やはりヒト(経営者の情熱)なのです。


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今回は、事業の飛躍に必要な3つの要素のうち、組織戦略の中から人材戦略の問題について切り込んでみました。


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