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6割の経営者が間違える「その投資はすべきか否か」の判断

経営は判断の連続。

経営は日々様々な判断に迫られます。

売るか売らないか
買うか買わないか
雇うか雇わないか
やるかやらないか
いつやるか、今でしょ。。

今までいくつの決断をしてきましたか?

その決断の結論が今のあなたの事業だとしたら、いままでの決断は合っていたと思いますか?


今回のお話は、
「その仕事を受けるべきか受けないべきか」
「そのビジネスモデルは成り立っているか成り立っていないか」

という判断をできるようになるポイントをご説明します。

これを理解すると、
・受けるべき仕事と受けるべきでない仕事が判断できるようになる
・新しいビジネスモデルを積極的に投資すべきか。そうでないとしたらどこを改善すべきかがわかるようになる

売上が伸び悩んでいるまたは利益が伸びずに悩んでいる経営者様はぜひご確認ください。


その仕事、受けるべきか受けないべきかクイズ

ここで1つクイズをしましょう。

印刷業を営むA社があります。A社の2月のコスト構成は次のようなものだったとします。(印刷枚数60万枚)
材料費  1,500万円(1枚あたり@25円)
人件費  3,000万円
償却費  1,500万円
合計   6,000万円(製造単価@100円)
(なお、月間の印刷能力は人員・設備ともに100万枚で、現状40万枚の余裕があります)

今、B社から、「格安でできるなら、ダイレクト・メールを40万枚発注したい」という打診が来ました。

A社は一体いくら以上の価格なら、この依頼を受注すべきなのでしょうか。

ちなみに、受注して合計100万枚印刷紙したときのコストは次のようになります。
材料費 2,500万円(1枚あたり@25円)
人件費 3,000万円(1枚あたり@30円)
償却費 1,500万円(1枚あたり@15円)
合計  7,000万円(製造単価 @70円)

この問いに対しては、3つの「回答」が考えられます。
1)70円以上、2)55円以上、3)25円以上、の3通りです。
正解は?


正解は3)25円以上となります。

質問のコストの中で、人件費と償却費は印刷枚数が60万枚でも100万枚でも同じです。

印刷能力の範囲内に収まっている固定費だからです。

受注をしなかった場合でも、両者で同じだけのコスト4,500万円がかかります。

すなわち、このコストはどういう意思決定(受注の是非)をしようが、それと関係なく発生するのです。

ということは、このコストはこの問いの検討要素に入れてはならないということが分かります。

このように、意思決定に影響を与えないコストのことを、「埋没原価(サンク・コスト)」と言います。

結局、追加受注により追加的に発生するコストは材料費だけです。

したがって、材料費(1枚あたり25円)を超える価格であれば、DM印刷を受注してもよいという結論を得ます。

全体を平均すれば確かに原価割れですが、固定費の回収には貢献します。
(仮に1枚30円で受けた場合)
売上高 3,000万円(1枚あたり@30円)
材料費 2,500万円(1枚あたり@25円)
人件費 埋没原価
償却費 埋没原価  
合計  500万円(利益単価 @5円)

このようにちゃんと利益が500万円残るのです。

この依頼を断ってしまったあなたは、経営者のポジションを追われることになるかもしれません。。


その仕事受けるべきか受けないべきか

いかがでしたでしょうか?
正解できましたか?

実際に私たちのような会計事務所スタッフにこの問題を出すと結構な割合で間違えます。

会計の知識があると余計に勘違いの沼にはまるようです。

その仕事を受けるべきか受けないべきかは、その仕事により増加する売上と増加するコストの見合いで判断するわけですが、その増加するコストの計算の中に埋没原価が含まれていないかを適切に見分ける力が必要です。

なぜ埋没原価といえば、判断をするうえで判断基準から除外する(もともと埋没していて関係ないもの)という意味合いかと思います。

埋没原価には固定費のうち、例えば
・正社員の固定給
・家賃
・リース料
等がよく含まれるものとなりますのでご注意ください。


そのビジネスモデルは成り立っているか否か

この埋没原価の考え方は、このような場面でも活用できます。

新しい事業を考え、その事業に対してどの程度営業コストをかけていいかを考える場面において、顧客生涯価値(LTV)という概念が登場します。

顧客生涯価値は一顧客が生涯にわたって生み出す粗利益の合計のことです。

この顧客生涯価値を計算するにあたり、粗利益を算出するのですが、この粗利益は「売上高ー原価」で計算します。

そう、この原価(コスト)の計算において、その原価が埋没原価になるか否かをきちんと判断しないと誤った判断に陥ってしまうのです。


例えば介護事業のデイサービスを例に説明します。

デイサービスを営むC社があります。
C社の3月のコスト構成は次のようなものだったと します。
(一日受入利用者数7人)

人件費  25万円/月
家賃   30万円/月
合計      55万円/月
(なお、この施設は一日受入可能利用者数10人であり、スタッフも一人あたり利用者10人まで対応可能でまだ余裕がある)

ここでこの会社は新しいビジネスモデルを構築して、新規利用者に対して1日3人まで新サービスを提供することとしました。
この時に、新規利用者から得られる売上が1万円/月です。

この新規利用者の粗利益はいくらでしょうか?

粗利益の計算
売上高  1万円
人件費 ▲3万円(≒25万円÷8人)
家賃  ▲4万円(≒30万円÷8人)
粗利益 ▲6万円

ではないことはもうお分かりだと思います。

この新規利用者を受け入れても、人員も施設キャパもまだ余っているため、人件費も家賃も埋没原価となります。

すなわち、このコストはどういう意思決定(受注の是非)をしようが、それと関係なく発生するのです。

ということは、このコストはこの問いの検討要素に入れてはならないということが分かります。

正しい粗利益は、

粗利益の計算
売上高  1万円
人件費 埋没原価
家賃  埋没原価
粗利益  1万円

となるため、このビジネスモデルの粗利益は1万円となり、顧客生涯価値の計算においてもこの粗利益1万円を使用することになります。
(そのあとの計算方法についてはこちらをご確認ください)


逆に、例えばスタッフが新人で、一人あたり利用者7人までしか対応できない場合はどうでしょう?
新しい事業をするには新しいスタッフを採用または既存スタッフに残業してもらう必要があります。

この場合の粗利益を計算する場合は、
粗利益の計算
売上高  1万円
人件費 ▲10万円(≒固定給25万円÷7人×新規対応3人分残業代)
家賃  埋没原価
粗利益 ▲9万円

となるため、この新規事業は難しいという結論となります。


このように、この埋没原価となるか否かはケースバイケースで考え方は異なりますので、慎重な検討が必要です。


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いかがでしたでしょうか?

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今回は、事業の飛躍に必要な3つの要素のうち、ビジネスモデルについて、投資意思決定の観点から切り込んでみました。

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