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聴こうとする遠い冬の日の音

バンコクに住んでて、なんとなく不思議な感覚に襲われることの一つが、暑さの中でクリスマスツリーを見ることかもしれない。

どこに住んでいようとも、クリスマスが近づくとやはりわくわくするもので、12月といえど暑いバンコクの街中で、偶然吹かれた涼しい風に、冬を見つけだそうともがいたり、冬を嗅ごうともだえたりする。

そして本当は着たくもないカーディガンを羽織って街を歩き、暑い暑いと言いながらも、我慢して着続ける。

今は12月なのだから、そしてクリスマスも近いのだから、身に纏うべき服の素材はウールなのだと思い込んで。

日本のように明確な季節の区別を付けにくいタイで、それでも季節の到来を感じたいと思うのは日本人の性なのだろうか。

日本人が1年を24もの節気に分けたことからして、これは古来から日本人の魂の根底に流れている感覚なのかもしれない。

かくいうバンコクの12月だが、実はやはり12月というだけあって、他の月に比べたら、一番気温は低い。

特に朝は冷んやりとしていて、ブランケットが必要なくらいだ。タイ人がこぞって薄手のセーターを着るのもこの時期。そしてその間は約1ヶ月ほど。

僕は思う。彼らのセーター、きっと20年は色褪せないだろうと。

冬を感じるために、エムクオーティエへ行く。
デパートって、なんか冬っぽくて好きなのだ。

クリスマスの催事をやっていて、買い物客たちは楽しそうに、目の前に陳列されたクリスマス商品を眺めている。幸せな風景ときらびやかな光。

そしてエムクオーティエの前にそびえたつクリスマスツリー。プロンポン駅のホームから眺めていると、だんだんと暮れゆく薄闇の先に、ツリーの放つ光の形が浮かび上がる。

12月のバンコクに吹くやわらかい南風のなかで佇み、耳をすまして、聴こうとする。遠い冬の日の音を。

2020年7月27日

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