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「みんな」に殺される

「みんなも苦しい」
「みんなはこうだった」
「みんな」
「みんな」
「みんな」

「みんな」なんか知るか
なんで目の前の「私」の話はきいてくれないのか

最近の怒りはこのせいだ

「みんな」に殺されてしまう

そもそも「みんな」とは誰だ
誰のことを言っているんだ
「みんな」とか言って
それあなたの価値観じゃないの

そんな言葉は休憩室の片隅でうずいて
帰宅すると白い泡になってシャワーで流している

私はいつもこうだ
ほんとうのことは隠して自覚できないまま
いつの間にか夜眠るのが怖くなって
気づいたら身体が動かなくなる

「いつか笑える日が来るよ」
「大丈夫だよ」
「あなたなら出来るよ」

そんな励ましも優しさもあたたかさも
全部が鬱陶しい気分
すべて夏のせいだ

精神の病が ただただ気分が下がる病とでも
思っているのだろうか
気持ちの問題、気分がコントロールできて
それで生きられるとでも思っているのだろうか

私にはそれが出来ない
出来ないから病で
出来ないから白い錠剤を飲んでいる

「わたしもそうだよ」
「わたしも落ち込むことあるよ」

安易な共感は私に取ったら傷だ

「わたしもそう」なら
今すぐ病院に行ってください
「落ち込む」が明日には良くなっている世界線に
住んでいるのなら それは私とは違うし きっと病ではない

アイスクリーム食べたら気分があがる
アイドルみたら気分があがる
友達と話したら楽になる

そういう「落ち込む」じゃない

いくらでも自分を責めることは出来る
環境のせいにしたくはない
周りの方に恩義も感じている

だけど 私は苦しい

「無理だ」

ずっと頭に張り付いている

私が1番苦しいとか 不幸自慢とか
そういうことが言いたいんじゃない

みんなも苦しいことくらい分かっている
それぞれに見えない苦労があって
苦労は比べるものではないことも
比べられるものではないことも

だけど 「みんな」を考えて
「私」の苦しみを無視し続けて
どこにいけばいいのだろう

私の職場はとても良い環境だと思う
尊敬できる人達でいっぱいだ

でも この孤独はなんだろう

「みんなも通ってきた道だから」

「昔はもっと大変だったんだよ」

「私の頃は」

笑えてくる

「私」を見てくれる人は
この職場にはいない

こんなことを言ったら
被害妄想と言われるだろうし
先輩からは「あなたの事を思っているよ」
と 言われるだろう

だけど だけど
本当のことをいうと

職場の人の善意は私にとっては善意ではない

どんどん どんどん 追い詰められる
息が苦しい

食べる 寝る 外出する 

当たり前のことさえも
出来ない私に
「当たり前」以上を求めないで!

心の中でいつも叫んでいる

だけど「大丈夫です」「いつもありがとう御座います」
平気なフリして馬鹿みたいに笑って
帰りの電車で泣いて
夜中に発作が起きて
寝不足の身体で出勤して

これ以上 どうやって息をしたらいいんだ

病に甘えて しがみついて
結局 私が悪いんだろうか

大丈夫なフリ出来る私が悪いんだろうか

自分を責めることは簡単だ
自分のせいにすることは簡単だ
自分を無下に扱うことは簡単だ

胃腸がどんなに痛くても
出勤前に発作が起きても
「死にたい」が頭に張り付いていても
身体が痛くてたまらなくても
ご飯が食べられなくてフラフラでも
前日に発作が起きて寝てなくても

私は「大丈夫です」「おはようございます」「お疲れ様です」とヘラヘラ笑って 何もなかったように退勤して
家で突っ伏して泣いている

そのループの中で
職場の人達がいうがいう「みんな」や
先輩の語る「経験」が
「私」を殺しているような

「良い部署だよね、あしたさんのとこ」

「そうですね、ありがたいです」

嘘つき

本当は全部投げ出したいくせに

私はきっと「みんな」にはなれない
そもそも「みんな」なんかいない
そんな幻想に私はならない

私は私だと思いたい
それだけなのに

「おはようございます」

私は今日も平気なフリして
「みんな」に溶けていく

弱虫のクソ野郎だ