芦田ガマ

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  • 【小説】ラドンライター/大東公出版・書籍第二部

    東宝三大怪獣が実在する世界。ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語

最近の記事

祝『ゴジラ-1.0』アカデミー視覚効果賞で思う「特撮」の本質について

祝『ゴジラ-1.0』オスカー受賞歴史的な瞬間だった。 米国時間2024年3月10日、かねてよりアカデミー賞・視覚効果賞にノミネートされていたわれらの『ゴジラ-1.0』が、第96回アカデミー賞授賞式にて同賞を受賞。プレゼンターのアーノルド・シュワルツェネッガー氏とダニー・デヴィート氏がゴジラのタイトルを読み上げ、登壇した山崎貴監督、VFXプロデューサーの渋谷紀世子氏、高橋正紀氏、野島達司氏がオスカー像を手渡された。 悲願は成った。 怪獣映画のファンとして心からお祝いしたい。

    • 『空の大怪獣ラドン』公開当時はどう評価されていたのか?

      国会図書館で1956年公開当時の文献を調べてきたので紹介したいnote。最初は4Kデジタルリマスター版『空の大怪獣ラドン』の個人的レビューや国会図書館の説明が続くので、興味ない人は飛ばして読んでね。 本稿で取り上げる文献 ・『週刊東京』1956年11月3日出版号 ・月刊『電波科学』1956年11月出版号 ・『キネマ旬報』1956年12月下旬出版号 ・月刊『東宝』1956年12月出版号 ・『週刊サンケイ』1957年1月6日出版号 ・『週刊東京』1957年1月19日出版号 ・『

      • 【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話/エピローグ

        ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ エピローグ:ここに残ったもの『怪獣公論』が社の期待ほど売れていない。  それに加え、無理のある取材経費の申請も付け入る隙を与えた。  さらに不味いことも起きた。怪獣シェルター紹介記事のなかで、間接的とは言えラドンによる経済効果にも言及していた。それをラドン擁護と捉えた一部の読者から、クライアントである帝洋丸友不動産へクレー

        • 【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑩営利と矜持の狭間

          ラドン飛翔災害を目の当たりにした怪獣専門誌の編集部は矜持の炎を静かに燃やす。 ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ 営利と矜持の狭間 後の政府発表によれば、このラドン飛翔災害による被害は、家屋・建造物の全壊が四五三軒、半壊三四〇〇軒余。  被害の大半はラドンが東シナ海へ抜けるまでの往路で発生していて、阿蘇への帰巣時にもたらされた損害は軽微であった。その理由は、

        祝『ゴジラ-1.0』アカデミー視覚効果賞で思う「特撮」の本質について

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        • 【小説】ラドンライター/大東公出版・書籍第二部
          11本

        記事

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑨ソニックブームの爪痕

          ラドン残したソニックブームの爪痕を前に、怪獣専門誌の編集部が為せることは……? ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 注意⚠️ここから災害被災地の描写が始まります 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ 注意⚠️この回は災害被災地の描写があります ソニックブームの爪痕 日が暮れてからしばらく時間が経つと、警戒警報が解除された。特生自衛隊による観測で、ラドンのバイタルサインが休眠状態になったと報告さ

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑨ソニックブームの爪痕

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑧ラドン飛翔災害

          阿蘇の空をラドンが飛ぶ。怪獣専門誌編集部はソニックブームの脅威を目の当たりにする。 ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ ラドン飛翔災害 時間にすると十秒にも満たない一瞬の出来事だったが、外がどんな被害を受けているか想像がつかなかった。  破壊音はしなくなったものの、何かが地面に叩きつけられるような音は断続的に続いている。  ソーラー設備に向かった藤林氏はど

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑧ラドン飛翔災害

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑦阿蘇にて

          阿蘇の民家でラドンからの避難用シェルターを取材する編集部に、阿蘇山に向かったラドンライターから緊急のメッセージが届く…! ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ 阿蘇にて  熊本駅東口のほど近くにある大型商業施設・アマプラザくまもとの一階に、創業七〇年を超える喫茶店「岡本コーヒー」のサテライト店が入居している。  取材前に飛倉と千若はここで落ち合う手筈になってい

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑦阿蘇にて

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑥ 20:30発、博多行き

          阿蘇山での取材へ経費削減のため長距離バスで向かうことにした窓際編集長・飛倉。バスで出会った親子との交流を経て飛倉が得たものとは? ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ 東京駅20:30発、博多行き高速バス  ともあれ、取り掛かった仕事は進めなければならない。  帝洋丸友不動産の広報担当者との間に入って担当してくれるのが、広告代理店・博愛AD社の細見氏だ。彼女と

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑥ 20:30発、博多行き

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑤阿蘇山の異変

          阿蘇山の異変を受けて『怪獣公論』次号の特集がラドンに決定! 広告クライアントも見つかるが……。ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ 阿蘇の異変と『怪獣公論』ラドン特集号  次の企画会議でも特集は決まらなかった。それどころかさらに二週間が過ぎても企画案は二転三転。たまに妙案が出されても上層部からの横槍があったり、他部署の一般誌でスポット的に怪獣を取り上げているコー

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話⑤阿蘇山の異変

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話④編集会議

          『怪獣公論』編集部の企画会議編!ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ 怪獣専門誌『怪獣公論』編集企画会議  別フロアの会議室で、三ヶ月後に発売が決まった次号『怪獣公論』の編集企画会議が始まった。とは言っても参加者は四名だけ。飛倉、千若に、例外的ではあるが外部ライターの●●、そして営業本部メディア課の志治枝だ。  営業本部にはふたつの課がある。刊行物を売るための

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話④編集会議

          調布シネマフェス『空の大怪獣ラドン<4Kデジタルリマスター版>』上映イベント行ったよ

          先日、調布シネマフェスティバルの『空の大怪獣ラドン<4Kデジタルリマスター版>』上映イベントに行ってきました。 上映後にトークイベントがあり三池敏夫さんと清水俊文さんが登壇。惜しまれながら閉所となった東京現像所が手掛けた4Kデジタルリマスターにまつわる貴重なお話を聞くことができました。 現存するRGBフィルムを参照して行われたリマスター作業について、それを手掛けたご本人から解説いただけるというまたとない機会に。 なんと旧DVD版と4K版の比較映像も上映され、68年前の初

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          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話③大東公出版・書籍第二部・後

          東宝三大怪獣が実在する世界。ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ 大東公出版・怪獣専門誌担当・書籍第二部②  そのころ、パーテーションで区切られた書籍第二部の編集フロアでは、企画会議の準備を終えた千若と、スーパー銭湯から帰ってきた●●が会議が始まる時間を待っていた。 「そう言えば、今度の旅行ムックって、なんでチワちゃんたちがやることになったの? ちゃんと売れそ

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話③大東公出版・書籍第二部・後

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話②大東公出版・書籍第二部・前

          東宝三大怪獣が実在する世界。ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 最初(プロローグ)から読みたい人はこちら↓ 大東公出版・怪獣専門誌担当・書籍第二部①  次の日の朝九時三〇分を回ったころ、印刷所へ下版データの納品を終えたラドン先生こと●●が、色校サンプルを抱えて編集部に帰ってきた。  飛倉も千若も、自分の椅子の背もたれに深く身体を預け、まぶたを閉じている。ここ五日ほど締め切りに向けて追い込みが続いていた

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話②大東公出版・書籍第二部・前

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話①プロローグ:ラドンライター

          東宝三大怪獣が実在する世界。ラドンを追うことに情熱を燃やす女性ライターと、出版社のお荷物・怪獣専門誌編集部によるドタバタお仕事物語 プロローグ その夜、千代田区に社を構える大東公出版三階の書籍第二部は、六日後に発売となる単発旅行ムック本の校正作業の真っ只中にあった。  デザイナーから上がってきた初校データに、編集チームで目を通し、誤字脱字を潰していく。修正箇所には朱書きで指示を入れ、再校を作ってもらう。修正箇所が正しく反映されていれば校了とし、下版データを印刷所にパスする

          【小説】怪獣専門誌の編集部が巨翼と邂逅する話①プロローグ:ラドンライター