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【英語推し本】Inside the O'Briens(Lisa Genova)/遺伝性ハンチントン病をめぐる家族の物語

推し作家のLisa Genovaはどれもはずれがないのに、まだ日本語になっていないものが多いのでぜひ翻訳も出していただきたいと思います。医学用語は辞書を使いつつ、英検準一、TOEIC800くらいあればぜひ原作をチャレンジしてみてください。

”Inside the O'Briens”ではハンチントン病という、あまり聞きなれない病気が取り上げられます。
まず、ハンチントン病とはどういうものか本書の冒頭より。

Huntington’s disease (HD) is an inherited neurodegenerative disease characterized by a progressive loss of voluntary motor control and an increase in involuntary movements. Initial physical symptoms may include a loss of balance, falling, slurred speech, (略), there exists an insidious prodrome of HD. The symptoms are both psychiatric and cognitive and may include depression, apathy, paranoia, outbursts of anger…There is no treatment and no cure. It has been called the cruelest disease known to man.
(ハンチントン病は遺伝性の神経疾患で、進行性の運動制御の喪失と不随意運動の増加を特徴とする。身体的な初期症状はバランスの喪失、転倒、ろれつが回らないなど、(略)、そして前駆症状としては精神医学的、認知医学的なものがあり、うつ、無気力、パラノイア、怒りの爆発など。治療法もなく、人類が知る最も残酷な病気と言われている。ー拙訳)

主人公は、警官のJoe。10代どうしで結婚した妻と4人の子を育ててきました。
普段は朗らかなJoeが、30代半ばから、ちょっとしたことでキレることが多くなります。ある時、キレて怒りが収まらない自分を鏡で見てJoeはハッとします。
Joeが12歳の時に病院でなくなった母Ruthもこんな目をしていた、と。

Ruth O’Brien drank herself to death.
(ルース・オブライエンは酒に溺れて死んだ)

自分の母は酔っぱらいで、怒りっぽく、いつもふらふら前後不覚でろれつも回らず、しまいには何もできなくなって病院に入れられ、5年後に死んだのだ、酒に溺れて死んだのだ、というこの言葉は、子供のころからJoeには呪いのように刻まれていました。自分にもこの酔っ払いの血が流れているかと思うのが嫌で、ビールも2杯までしか飲まないと決めています。

40代になり、Joeは犬の散歩中に、階段を踏み外して転んでしまいます。自分の体をうまくコントロールできなくなってきたのです。
そして、改めて母の死は本当に酒のせいだったのか、病院では長らく酒も飲めなかったはずなのに、と考えだします。
Joeの身体的症状が進み、警官仲間でもドラッグでもやっているのではと噂されるほどになります。そしてようやくハンチントン病と診断され、母も苦しんでいたのだと理解します。
さらに、哀しいかな、4人の子に50%の確率で受け継がれるのが遺伝性という残酷な宿命で、治療法もまだない中、このあと家族はどうなっていくのか、、、はぜひ本書を読んでみてください。

Lisa Genovaの他の作品についてはこちらにも書きました。


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