【小説】牛島 零(2)
僕と美咲
僕は高校二年生である。変にいきりもせず、しかし暗くもない。無気力なクラスの一員である。委員会も無難にこなし、平均点以上を取るほど勉強はしない。問題行動もしたことがない。校則も犯さない。教師からの信頼もあるわけではない。
知り合いは僕の名前を知っているが、僕は相手の名前は憶えていない。
もちろん女子との接点は少ない。自信がないのだ。性欲はないわけではない。しかし、性欲を解消するために今の立ち位置を崩すほどのリスクを負いたくない。失敗を前提に行われる行動なんてたかが知れている。
僕は銃を拾った。銃はこんな高校生活に終止符を打つピリオドになりうるかもしれない。ただそう思った。学校のバッグに銃を入れた。持ち運ぶのはリスクがあると思っただろう。それは違う、自信がつくのだ。
僕は銃を持っているんだぞ。そう言い聞かせることによって自然と自信がわいてくる。心の中でお前を殺せると言ってやるんだ。
僕には好きな人がいる。美咲という僕と同じクラスのクラスで三番目にかわいい女子だ。活発な性格でポニーテールの薄化粧。バスケ部だということは把握済みである。
そんな美咲はこんな僕にも積極的に話しかけてくれる。
高一の時。
「下村君は家で何してるの」
美咲は僕に対して会話初級者への質問を毎回してくる。
「そうだね。自分磨きかな」
美咲は首をかしげて、わからないよというような態度を取った。すかさず僕は美咲に言う。
「ごめんごめん答えになってなかったね」
美咲はうんと頷いた。
「自分磨きって言っても何個もあるからわからないよ」
僕は少し笑みを浮かべてとどめを刺す。
「あーただのマスカキだから気にしないで」
美咲は言う。
「マスカキって何?」
次は国語の授業だったので国語の先生に聞くことをお勧めしてチャイムが鳴った。
国語の授業が終わる時、美咲は男性老教師のところへ赴き、マスカキは何かの説明をしてもらっていた。国語教師は驚いていたがきちんと説明したらしく、美咲の顔は真っ赤になっていた。
この時点で僕の股間にはサーカスのテントが建っていたが、これに追い打ちをかける出来事が起こる。
美咲が自身のチェアに着席すると思ったが、自分のところへ向かってくる。内心まずいと思ったがテントが張っているため立てない。いや、建ってはいるが。美咲は僕の横に立つ。僕は恐れ多かったため横を向くことができない。
耳元で美咲がささやく。
「バーカ」
僕は射精してそこからの記憶は一切ない。気づいたら家で寝ていた。
これが僕の美咲を好きになった原因である。
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