【小説】牛島 零(10)

放課後

 ボウリング場に向かい僕たちは歩き出した。牛島とはもう普通に話せるレベルまで僕は成長していた。えらい。

 しかし、牛島は僕に対して何を考えているのだろうか。僕と同じ型の銃は決して偶然ではない。そして、牛島は僕が銃を持っていることを知っている。美咲はたぶん俺のことが好きなのだろう。にちゃあ。

「ボーリングで一番勝った人が負けた人に何でも言うことを聞くってことで言い?」

「え?まじで!」

「美咲ちゃんそれは・・・」

「なんでもってことはさあなんでもってコト⁉」

「下村なんか変なこと考えてない?」

「考えてない」

僕は銃とかもうどうでもよくなった。優勝すればどっちかと必ずSEXできるからなあ。

 僕と美咲が賛成したため、多数決で優勝者が最下位に何でも言うことを聞いてもらえる権利がもらえるようになった。


 ボウリング場についてシューズを選び、ドリンクバーでドリンクを取ってきた。

「下村君は足の大きさ何センチなの?」

牛島が僕に聞いてきた。

「28だよ。あと下村君じゃなくて下村でいいよ」

「君は下村君だよ」

「あ、そう」

僕は勃起した。

難しそうな顔をして美咲はタッチパネルをいじっている。

「よし!できた」

天井からつるされているモニターをみると名前が上から


アンダーソン

ビューティーフラワー

オーストラリア


と、書かれていた。

「なんで名前変えたんだよ」

「いいじゃん、そっちのほうが面白い」

牛島がソファーに倒れ込むように笑っている。いつも冷静で勉強もできるまじめキャラがこんなに笑っているのを初めて見た。

「そんなに面白いか?」

「美咲ちゃんって本当に面白いんだね」

美咲は自分が褒められてうれしかったのか機嫌が良くなった。

「よーし!じゃあ始めるぞ」


「僕の夢は終わった」

僕がビリで、牛島が一番になった。

「どんなこと頼もうかな」

牛島は嬉しそうにして、なぜか美咲が悔しそうだった。いや、どんだけ俺を貶めたいんだよ。それか俺と付き合いたかったのか。

 美咲はみんなのドリンクをかたすために席を立った。

「なあ僕のことどれくらい知ってるんだ」

「うーん内緒かな」

「根尾のことは知ってる?僕の友達なんだけど」

この質問で僕のことをつけているかが分かる。

「根尾って誰?どこのクラス?」

「いやいい。何でもない」

つけてはないのか。じゃあ何が目的だ。

「何二人で仲良く話してるの?」

「いや何でもないよ。罰ゲーム何にするのか話し合ってただけ」

「そっか。それじゃあ!パンケーキ食べに行くぞー!」



 駅前のおしゃれなカフェ。こんなところには絶対に一人ではいかない。女子二人ははしゃいで写真を撮っている。この店は、席に着く前に注文するシステムである。

 僕は、注文は女子に頼んで先に席に着いて考え事をしていた。そもそも牛島は俺の銃のことも知っているのかが怪しくなってきた。

「油断するな。奴から情報を聞き出すんだ」

「根尾!」

「お待たせー」

「お待たせしました」

確かに根尾の声がした。二人はコーヒーを持ってきた。

「ねえなんで無視するのよ」

「ああすまない」

少し疲れてるのか。牛島が俺の分のアイスコーヒーを持ってきて、美咲がコースターを三人分置いた。

「ボウリングで疲れちゃったのかな」

牛島が心配そうにこちらを見る。美咲がバッグをあさっている。

「やばい!バッシュ―忘れたわ。先にパンケーキ頼んでて、ボウリング場まで行ってくるわ」

美咲はカフェをダッシュで出ていった。

 牛島は席でパンケーキを二つ頼んだ。牛島はスマホを取り出して僕の写真を撮った。

「ねえ、SEN私と交換してよ」

「わかった」

牛島のスマホに出たQRコードを読み取った。ラッキー(笑)。牛島はUSSHIJIMAではなく普通に牛島だった。

「それよりどうして二つ?後で美咲が来るだろ」

「いや二つでじゅうぶん」

なんでだ?

「どうして、美咲の分は?」

「ううん、美咲ちゃんの分はもう頼んだ」

「え?」

「君はこの店から美咲ちゃんが来る前に、店から出るから二つしか頼まなかった」

「もしかして罰ゲームでってコト?」

「違う。君が現実から背を向けるために、かな」

何を言っているんだこの女は。俺が美人二人を置いてこの店から出るとでも?

「私さパパ活やってるんだ」

僕は固唾をのんだ。声のトーンが低くなった。これはガチだ。

「別にパパ活やってることが問題じゃないんだ。驚かないでほしいんだけど私は人生二周目なの」

「は?」

「別に信じなくてもいい。でも君も二周目だよね、たぶん。まだ理解していないだけで」

「やっぱり、分からないな」

牛島は話を続ける。

「人生二周目っていうのは、同じ人生を二周目っていうことなんだよ。前世が~とかじゃなくてね。だから、以前勉強しかしてなかった人生だったから散々遊ぶようにしたの。自分の体を売ってまでも遊ぶ金が欲しくてね」

「何が言いたいんだ」

「君が言っていた根尾君っていうのがまさにそれなんだよ。そして根尾君は君の中にいる」

「話が飛躍しすぎてるし、よくわからない。それに今根尾は関係ないだろ」

「じゃあ根尾君のクラスは何組?根尾君の連絡先は?根尾君の家は?根尾君の」

「あれ、根尾は誰?」

「君、多重人格者だよ。そして今話してる君は根尾君だね」

「お、すごいご名答」


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