オフライン授業(10.07)
8ヶ月ぶりのキャンパス。
季節は1周まわって、憎らしくも懐かしい銀杏がそこら中に転がっていた。
下ろしたての真っ白いスニーカーを履いてきたのは少し失敗。
他学部の授業だけど、もともと興味のある分野だったし、何より目を引いたのは「対面」の2文字。
半年前の私なら億劫に感じただろう対面授業も、今はワクワクが止まらない。
しかもディスカッションまでできちゃうなんて…なんたる幸せか。
私の学部の方のゼミは、始まってからずっとオンライン。議論も飲み会も捗らないのなんの。
同時に一人しか話せないし、画面越しの相手は海一つは挟んでるくらい遠い。圧倒的に遠い。むしろ孤独を感じる。暖簾に腕押し。文句は止まらない。
そうして半年かけてアンチオンライン派に染まった私は、心の底からオフラインを求めていたのだ。
で、結果はどうだったかというと…
めちゃくちゃ楽しかった〜〜〜!!
先生の雑談と自己紹介という第一回授業にありきたりなラインナップだったが、みんなの笑い声が聞こえて、初めましての人ともヒソヒソ話したりして…
これこれ!これが授業じゃん!失って初めて気づくオフラインの幸せ!
オンラインでは、無音の空間に先生が一人で話し続ける。チャットでの質問はあるが、基本ラジオのパーソナリティ状態。面白いことを言おうが、雑談をしてみようが、うんともすんとも言わない無の空間。の中の一人の私。
反対にゼミなどで発表するときには私が無の空間に取り残される。
初めて20分間一人で話したときは冷や汗が止まらなかった。反応が見えず、声も聞こえず、伝わってるのか伝わってないかも分からない。圧倒的孤独。ブラックホールに吸い込まれそう。
だからこそ、先生のくだらない冗談にも、誰かが笑って、それにつられて笑いが広がって、自己紹介では席を立ってみたりして、教室の端まで聞こえるように声を大きくしたりして、お気に入りの服で着飾ってみたりして、おしゃれな人の服をジロジロみちゃったりして、その全てが楽しくて仕方がなかった。
オンライン授業でも知識を身に付けることはできるけど、こんな一つ一つの何気ないやり取りに、人の生きている実感は詰まっているんだと思う。
対面の決断をしてくれた先生には感謝しかありません。
大学生らしい生活を少しだけ取り戻させてくれてありがとう。
大学生活のバイブルにしてる伊坂幸太郎さんの『砂漠』という小説に、「真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係における贅沢だ。」という言葉が引用されてたな。
大学は、社会に出るまでのオアシスだし、それは人間関係という贅沢を味わう場所でもあるんだよね。
どうか私たちに真の贅沢が戻ってきますように。
オンラインでも友達と繋がれる便利すぎる世の中で、私はオフラインの温かさを求めてしまうよ…。
授業のあとは、予約して入った図書館のすっからかん具合にびっくり。
あんだけ席探しに苦労してたのに!快適すぎる!
ただ、着席禁止の席にテープが貼ってあったのは寂しさを感じたな。
全共闘のときは、大学に学生が立てこもって、バリケードを作ったと聞くけれど、今じゃまるで正反対。大学が学生にバリケードを張ってるみたい。
大学にそんなつもりはないことは百も承知だけど、図書館に行く前に寄った本屋さんで見かけた全共闘の写真が蘇ってきちゃったんだもん。
我が物顔で闊歩していたキャンパスのいたるところに入館許可がいる現状への虚しさと、感染防止を徹底してくれている大学への感謝を込めて。