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千葉県の進学校Mapその1(北東部・南部)

千葉県の中学生で学力上位10%の子どもたち(10%er)は、どこの高校を選ぶのだろうか?この記事では、10%erが順当に選ぶと考えられる高校を「進学校」と定義し、千葉県の進学校を紹介する。

※この記事は、2020年3月末時点の情勢に基づいて執筆している。『進学校Map』における進学校の選定基準は、以下の記事を参照のこと。

概要

人口:約625万人 (※2017年10月1日現在。総務省人口推計)

中学校卒業者数:55674人 (※2017年3月。文部科学省学校基本調査)

国公立高校入学定員:36080人 (※2017年4月。文部科学省学校基本調査)

中学校卒業者数に対する国公立高校入学定員比率:64.8%

進学校:16校(公立11+国立0+私立5)

緩い学区制度

千葉県の県立高校の全日制普通科は、原則として9つの学区に分かれている。

第1学区:千葉市
第2学区:市川市・船橋市・松戸市・習志野市・八千代市・浦安市
第3学区:野田市・柏市・流山市・我孫子市あびこし・鎌ケ谷市
第4学区:成田市・佐倉市・四街道市よつかいどうし八街市やちまたし印西市いんざいし・白井市・富里市・酒々井町しすいまち栄町さかえまち
第5学区:銚子市・香取市・匝瑳市そうさし・旭市・神崎町こうざきまち東庄町とのしょうまち・多古町
第6学区東金市とうがねし山武市さんむし大網白里市おおあみしらさとし・九十九里町・横芝光町・芝山町
第7学区茂原市もばらし・勝浦市・いすみ市・長柄町ながらまち長南町ちょうなんまち睦沢町むつざわまち一宮町いちのみやまち・白子町・長生村ちょうせいむら・大多喜町・御宿町おんじゅくまち
第8学区:館山市・鴨川市・南房総市・鋸南町きょなんまち
第9学区:木更津市・市原市・君津市・富津市・袖ケ浦市

学区が9つもあると言うと制限が厳しそうに聞こえるが、自分が住んでいる学区とその隣にある学区に志願でき、隣の学区の高校を受ける場合も、自分が住んでいる学区と同条件で選抜されるので、学区のせいで涙を呑むケースは少ない。隣接学区からも幅広く生徒を集めて、学区外からの入学者が半数近くを占める公立進学校もある。

この記事では便宜上、北東部を第4学区・第5学区・第6学区・第7学区、南部を第8学区・第9学区、北西部を第1学区・第2学区・第3学区と定義する。その上で、人口密度が比較的低い北東部・南部のMapを先に紹介し、記事を改めて北西部の進学校Mapを紹介する。

Map(北東部・南部)

※地図は『MANDARA』で作成。進学校を中心とした同心円は、すべて半径20kmで描いている。※赤字は公立進学校、青字は国立・私立進学校。

※北西部の進学校Mapは「千葉県の進学校Mapその2」の記事に掲載。

千葉市の吸引力とその限度

千葉市の北東部・南部から都心まで通学する人もいなくはないが、やはり遠い。このため、遠征するにしても都心の手前にある千葉市(第1学区)に集まりやすい。

第4学区の10%erは少なからず千葉市(第1学区)の進学校を志向する一方、学区内の佐倉市にある佐倉高校にも集まっている。佐倉高校は京成電鉄京成本線の京成佐倉駅が最寄り駅なので、第2学区だが京成本線沿線にある八千代市や習志野市からの通学も多い。一方、同じ第4学区でも北総鉄道北総線沿線にある白井市からは、佐倉高校よりも第2学区・第3学区の高校に通うことが多い。佐倉高校の志望者はその受検前に、八千代松陰高校(八千代市)の普通科IGSコースや、成田高校(成田市)の普通科特進αクラスををよく併願で受験する。2つとも高校入学者の学力最上位クラスだが、これらに合格できるかどうかが、佐倉高校を安心して受検できるかどうかの目安とされている。

第5学区は第4学区・第6学区としか隣接していないので、志望できる公立高校の中で最も合格難易度が高いのは第4学区の佐倉高校になる。とは言え、第5学区からは佐倉高校にしても遠いので、多くの10%erは学区内でJR成田線沿線の佐原高校(香取市)を選ぶ。ただ、同じ第5学区でもJR総武本線沿線の旭市・匝瑳市から佐原高校に通う生徒はあまりいない。第5学区のうち旭市・匝瑳市を除いた中学校卒業者数(2017年3月。以下同様)は約1500人しかおらず、一見すると佐原高校は進学校として十分な10%erを集められないように見える。ところが、佐原高校の合格難易度や大学合格実績は、約1500人の通学圏にある公立高校とは思えない高水準である。なぜだろうか?それは、佐原高校には茨城県の鹿行地域の10%erも数多く進学しているからだ。茨城県の進学校Mapで解説した通り、鹿行地域は茨城県内の他地域の進学校に通いづらい。このため、鹿行地域の10%erは隣接県協定を活用し、佐原高校に越境通学する。佐原高校の生徒の約4分の1を鹿行地域出身の生徒が占めていることからも分かるように、佐原高校の通学圏には、茨城県の鹿行地域も含まれるのだ。鹿行地域の中学校卒業者数は約1200人なので、千葉県の第5学区の一部と併せて、佐原高校は約2700人の通学圏を有する計算になる。もっとも、鹿行地域には清真学園(茨城県鹿嶋市)という私立進学校があり、千葉県の第5学区からも一定数が進学している。

第6学区の公立高校で最も合格難易度が高いのは成東なるとう高校(山武市)だが、進学校Map三訂版では進学校に選定しなかった。第6学区の10%erの多くが学区外に流出しているからである。とくに、東金市や大網白里市の10%erは、成東高校よりも千葉市(第1学区)や第7学区の進学校を志向することが多い。代わりに、第5学区の旭市・匝瑳市からはいくらか成東高校に流入しているものの、仮に第6学区から東金市・大網白里市を除き、旭市・匝瑳市を加えたとしても、成東高校の通学圏内の中学校卒業者数は約1800人に留まる。そもそも成東高校がある山武市ですら、他学区に10%erが流出しているのが現状だ。ちなみに、成東高校の理数科は“普通科特進クラス”としては位置付けられていない。

第7学区の公立進学校である長生高校(茂原市)は、学区内はもちろん、第6学区の東金市・匝瑳市や、第9学区の市原市のちはら台、第1学区の千葉市緑区から幅広く生徒を集めている。長生高校の生徒に占める第7学区の生徒は、かろうじて5割を超える程度にすぎない。市原市や千葉市緑区の10%erにとっては、千葉市内の進学校の次に選ぶ学校かもしれないが、第7学区の南部や第6学区の東金市・匝瑳市の10%erにとっては、いわゆる“トップ校”という意識が強いと考えられる。

第8学区の公立高校で最も合格難易度が高いのは安房高校(館山市)である。しかし、第8学区の中学校卒業者数は約1000人しかおらず、学区内にある全日制の公立高校普通科は、ここと長狭ながさ高校(鴨川市)の2校しかないので、大学進学を望む地元の生徒を一手に引き受けるための学校という性格が強い。安房高校にも多少の10%erは進学するが、学区外の進学校を選ぶ10%erも多い。

第9学区のうち、木更津市・君津市・富津市・袖ケ浦市では木更津高校(木更津市)に10%erが集まるのに対し、市原市では千葉市(第1学区)に10%erがかなり抜ける。市原市の人口は木更津市の約2倍あるものの、高校選びという観点では第9学区の中心都市ではなく、“千葉市市原区”の様相を呈している。

千葉県(北東部・南部)内高校の大学合格実績(2020年春)

※進学校は黄色で示す。各高校の公式Webサイトで発表されたものを参照した。原則として現役・浪人の総数で、現役での合格者数が分かる場合は( )内に併記した。★は高校全体の実績を示していることを意味し、成田高校(1学年約310人)は学校全体の実績である。

【2022/12/30追記】この記事を含む北海道・東北・関東地方の進学校Mapの記事を、加筆修正して収録した書籍(同人誌)を通販中です。詳細は以下の記事をご覧ください。


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