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収穫の喜びという幻想

どうも一般の人は収穫と言うのは「喜び」だと思っているらしい。確かに、昔から収穫祭と称する祭りは各地にある。これまで育ててきたものが無事回収できればホッとする。しかしだ。まず考えてみて欲しい。植える時は小さい種や苗でも、それがめっちゃ大きくなるんやで。重量とか、嵩(かさ)を考えたら、とてつもない巨大さだ。

これが…

こうよ。

これが…

こうよ。

もちろん、何度でも言うけど。無事収穫できればホッとする。嬉しいとか言う喜びよりも、ホッとするのだ。なんだろう、この違い。多分、イベントとかする人なら分かってもらえるかもなんだけど、そうじゃないですか?十分準備をして、段取り付けて、それでもなんやかんやと不測の事態が発生して。いよいよって時でもギリギリまで油断できない。それで、ようやくイベントが無事終わったら、これ、やっぱり嬉しいとかよりも「ホッとする」が先にくると思うんです。農耕もそれとおんなじ。

私の地方は毎年決まって台風が来る「台風銀座」なので、一般的な地域よりも一ヶ月くらい田植えが早い。すなわち、稲刈りも一ヶ月早い。それで、この真夏のクソ暑い時期に稲を刈ります。台風が9月ころ来るって想定で。

でも、最近は7月とか8月でも台風来るし、8月終わりは雨ばっかりだし、9月だって雨ばっかり。それで、刈り取り時期はいつも天気とにらめっこ。顔を合わせれば「おい、どうや、雨」とお互い天気予報の情報交換。とにかく時間との勝負。この時期は予定を入れないか、入れてもキャンセル覚悟で入れる。結局今日も三味線のお稽古と移住見学の説明受け入れが入ってたけど、どっちも断りました。8月20日~30日はそんな感じ。

本当なら一昨日済んでいるはずの稲刈りが雨で伸びている上に、今日もにわか雨の様相があったりでハラハラ。稲穂は濡れるとコンバインが詰まるし、機械によくないから、空のコンディションだけじゃなくて、刈る稲、田んぼの土、機械のコンディション。すべてを考えなくちゃならん。農耕って、そうやってパズルを組み合わせるような感じなんです。

そういうのが終わったら、そりゃホッとするよ。喜びよりも先に。で、農耕をやってて喜びあるのか、って聞かれた場合、冷静に考えてみたけど…。ない。喜びってないのよ。そんじゃ、何があるんだよ、って話ですよ。まあ、大体頭の中は次のようなことばっかり。

・こればっかりはどうにもならん(諦め:天気)
・わかった、お前の方が賢い(認知:虫)
・わかった、お前の方が強い(認知:雑草)
・わかった、けどこっちには来るな(祈り:イノシシ)
・どこでも好きなとこへ行っていいからうちにだけは来るな(祈り:台風)
・くそ!お前らの裏をかいてやる(対抗心)
・ヨシ!お前らの戦略は大体わかってきたぞ(学習)
・ヨシ!勝った!(満足)

常にこういうループです。ちなみに、最後の「ヨシ!勝った!」ですが、今年は田んぼの雑草とカルガモの食害攻略に成功しました。それから、畔や土手の雑草も伸びきる前に刈れた。他のことも天気が崩れる前に攻略できたので私としては勝利です。肥料を入れなかったので、軒並み倒れている他の田んぼと違って、私の田んぼは倒れませんでした。今年は勝利が多かった。(満足)は喜びでしょう?と言われたらそうなんですが、もっとなんて言うか、達成感と言うのでしょうか。だって、来年はまた条件が違うから同じようにはできないのです。手放しで喜べるような感じでもない。そう考えると喜びってどういう感情なのでしょう。私も自分が米作るまで「収穫の喜び」なんて思ってました。でもね、よくよく考えてみたら、

お米を自分で作って食べられること。

これは間違いなく「喜び」なんです。だって、そういう人あんまりいないでしょ。トマトとかキュウリならいるだろうけど、米やで。自分で種から育てて、植えて、草取って、水の心配して、風の心配して、雨の心配して。それから、自分の手で刈り取って、一杯のご飯になる。これを喜びと言わずしてなんと言いましょう。

しかし、収穫作業そのものは「苦しみ」。炎天下の下泥だらけになって稲を刈るとか、しんどいわ。やけど、誰もやってくれんからな。やらんかったらいつまで経っても稲は植わったままやし。そやから自分で刈る。腕も顔も背中も真っ黒になるけど、まあええんや。こんなこと、いつまでできるか分らんけど、まあやれるまでやる。お米作るのって面白いよ。

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結婚を20年で卒業。趣味は農民、スロー旅、映画を見ること、書き物。ワインバーを17年やり、45歳で稲作へ。元夫の武司くんと民泊やってサトナカ売ってます。ペットは鶏、夏はツバメが飛び回る部屋で暮らします。農耕の話、男女の話、結婚の話、時々小説。ヘッダー画像は伊勢神宮の神田。女です。

コメント1件

自分の手で育てたお米はきっと美味しいでしょう!
生き生きとした文章に生きる力を感じました。
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