33. カモの食害報告、または、敵について十分な考察をするべき理由について
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1ヶ月前、田んぼに12羽ものカルガモ家族が襲来。育っていた稲を絨毯爆撃の如くモシャモシャと食べられる、という事件が発生しました。
たわわに実った稲の先っぽが食害されたせいで頭を垂れるはずの稲がツンツンと立っているのを見つけたことから、被害が発覚したわけでございます。
周りのみんなは
「カモが米なんて食わんやろ。スズメや」
とか
「カモが米なんて食わんやろ。水草食べとるんや」
とか。言うんですが、うちの田んぼにスズメがいるの見たことないし、ハッキリ言ってカモ以外に考えられないくらいの量のカモが田んぼの中かがワラワラと出てきてバババババッ!って飛んで行くし、ネットで調べると、やっぱカモの食害はあるみたい。
カモが米を食べる、って言うと
「じゃあ、あいがも農法はどうなん?」
って聞かれますが、アイガモも大きくなったら食べます。あれは稲がまだ苗の時に、周りに生えてくる水草を食べされるのが目的なので、その期間が終わればアイガモも撤収されます。
12羽ですよ!でもって、田んぼの広さが2畝(せ)ですから、1畝につき6羽。1畝は約100㎡。
100㎡=6羽
50㎡=3羽
16.6㎡=1羽
大体10畳の部屋にカモが1羽いるという計算に。
それで、対策として、周囲に海苔養殖に使う網(農作業では結構使われる。ホームセンターにも売ってる)を周囲に張り巡らし、
さらに!上部には鶏が嫌がる細い糸を張り巡らせ、侵入を阻もうと思った訳でしたが…ある日田んぼへ行ったら、その張り巡らせた糸の間から
「グワァグワァグワァ!!!」と鳴きながら、バババババッと…カモが、糸などものともせず、田んぼの真中から飛び立って行きましたよ。
なんやねん。「鳥が嫌う糸」って書いてあったのに…ぜんぜんやん…。私のこの労力と時間、一体なんやったんや…。
結局トータル約10日間。毎日カモに入られました。野生の鳥って、人間が近づいたら逃げると思うでしょ。もちろん、田んぼの中から10羽くらいはびっくりして飛んでいくのよ。けど…
「おいおい、12羽おるはずやろ?残りの2羽はどこやねん…」
って、田んぼの周りを歩いていると、すぐそばの田んぼの中から突然、
「グワァグワァグワァ!!!」と鳴きながら、バババババッと…飛んでいくのよ。残りの2羽が。
めっちゃ神経図太い…。彼ら。私が諦めて帰るのを息を潜めて待ってるんですよ。田んぼの中で。
網も、糸も、まったく効果がなく、すっかりしょぼくれていた私。
毎朝、夕。田んぼを見回っては、カモがいると走って行って
「コラーッ!!!」
って追い払ったり(カモが飛んでいるの見えますか?)、
火薬鉄砲で「パンパンパーン」って、脅かしたり
けれど食害は止まらず。
毎日、みるみるうちに稲の米粒が少なくなっていく。ああ、このまま全部カモに食べられてまうんやろか…。
「立派に育った米子も、全部カモに食べられてしまいました」
ってなるんやろか。わしゃ、カモに食わせるために米作ってるんとちゃうぞ!と憤りながらも、悲しくなっていたある日のこと。
いつものように「コラーッ」と、カモを追いかけていた私は、
バシャバシャバシャバシャーッ!!
「グワァグワァグワァ!!!」バババババッ
と、例のごとく、田んぼの中からカモが飛び立っていくのをみました。またか…と肩を落とし、トボトボと車に戻った私。
バシャバシャバシャバシャーッ!!
という、この時の音。その時は気づかなかったけど、後でじわじわとこの音が気になってきました。
これはカモが水面を蹴って助走をつけて飛び立っているこの音。どうして、自分の田んぼにだけカモが入るのだろう。その疑問と、この音がカチッと嵌った瞬間でした。
みなさん、カモが飛び立つ動画って見たことありますか?あるいは、カモが地上に降りてくるのを見たことありますか?
まず、この動画を見てください。
「カモ 着水」で出てきた動画です。まず、ここでカモという鳥を想像したとき、空から降りてきて、地面に降りる。というのがあまり想像できません。そう、カモというのは、基本的に水のある場所に降りるのです。つまり、水のないところにわざわざ着地しない。念の為「カモ 着地」て検索しても、殆どが水の上に降りてきているものが表示されます。つまり、カモというのは水のあるところに降りてくるのです。
うちの田んぼのすぐ横の田んぼは、まだ稲が育っていなくて、水もたっぷりはられている。着水にとても適した場所です。カモはまずそこに着水して、それから、私の田んぼにヨチヨチと歩いて入ってくるのであろう、そういう予測はしていました。
ところが、ヨチヨチ入ってくるだけなら、周囲に網を張り巡らせたら防止できるはず。しかし、まったくものともせずに、相変わらず食害が続いているのはどういうわけだろう。そこが疑問であり、悩みでした。
次に「カモ 飛び立ち」で検索してみました。
うちの田んぼの中で
バシャバシャバシャバシャーッ!!
って、やってたのは、この助走ですね。稲が邪魔するので、普段より余計に助走をつけてたと思います。しかし、このように水を蹴って助走をつけなくても、カモというのは直で飛び立つことも可能です。こんな感じで。
飛び立つ時にまったく助走をせずに飛ぶことができます。ちなみに、カモには2種類あります。助走をつけて飛ぶタイプと、助走なしで飛べるタイプ。そう思うと、あの発達したカモの胸肉がおいしいのも理解できます。あの胸筋で羽ばたいてるわけですから。
ところで、みなさんはカルガモの赤ちゃんというニュース動画を見たことありますか?まあ一定の周期でかわいいカルガモが陸上を赤ちゃんガモと移動している微笑ましい動画です。
まあ、こういうヤツですね。で、このカモがチョコチョコ、ヨチヨチと地面を散歩している様子と、これをちょっと見比べて欲しいんですよ。
カモには、足に水かきがついています。つまり、カモというのは、基本的に陸上よりも水上で機敏な動きができるような体の仕組みになっているわけです。そこでハッ!!!と、私が思ったことと言えば。
うちの田んぼ、めっちゃ水入ってる…
まあ、普通の田んぼも水が入っています。けど、よその田んぼは肥料をたっぷりいれて、稲を太らせていますから、田んぼいっぱいいっぱいに稲がギュウギュウに植わってる。けど、うちの田んぼは無肥料なのでスッカスカなんですよ。
もし、カモがこれを空からみたらこの稲の間にスルーって入っていけそうに見えるんじゃないですかね。縦に細長いので、飛行機で言う滑走路の部分も十分あります。しかも、下には潤沢に水があるので、着地しやすい。この右横の茂みにはイタチが住んでいますが、水があれば機敏な動きができるので、そういった天敵にもすばやく対処できる。おまけにたわわに米粒も実っている。こんな好条件のところはありません。
水や!
そう思った私は速攻、田んぼに水を抜きに行きました。結果、どうなったでしょう。その後、何度も見回りに行ったけど、鴨の姿を見ることは一度もありませんでした。つまり、この田んぼに張られた水、無肥料のスカスカの稲が彼らにとっての好条件だったわけです。
カモの習性を知らず、ただただ対策を取るだけだったら、食害は止まることなく続いていたかも知れません。そう思うと、何につけても、仕事でも、日常生活においても「敵を知る」というのは大変大事なことなのだと身をもって実感したこの夏。敵を制するには敵を知るべし。
そんなお米たちも、来週にはいよいよ稲刈りです。
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