のあ(浅井伸彦, 公認心理師・臨床心理士)

公認心理師、臨床心理士、保育士。「推しの子」「葬送のフリーレン」「SPY×FAMILY…

のあ(浅井伸彦, 公認心理師・臨床心理士)

公認心理師、臨床心理士、保育士。「推しの子」「葬送のフリーレン」「SPY×FAMILY」推しのしんりし。

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お仕事の依頼について

執筆、イベント登壇、取材、経営や企画に関するコンサルティング、共同研究、新規事業開発などについて。 (下記以外でもご相談ください) 主な専門テーマは、 心理学、精神、コミュニケーション、対話、海外、語学、(日本語含)ことば、トラウマ、保育、福祉、自律神経、教育、健康など。 これらについての執筆や、企業内での悩み、新しいサービスや商品の研究や開発、臨床心理学的研究など。 注意事項1と2の下に書いています。 必ずこれら「注意事項」をお読みいただいてから、必要な方はご連絡を

    • 【番外編】クリエイターとメンタルヘルス

      「クリエイターやアーティストは心を病みやすい」というのは本当でしょうか?精神医学・心理学用語には、創造の病(creative illness)という言葉があります。エレンベルガー(またはエランベルジェとも)という人は、「創造性と(精神的な)病には親和性がある」と考えました。 正確で詳細に記述すると難しいのですが、 この解放されるまでの長い苦しみの期間のことを「創造の病」と呼びました。 さて、問いを戻しましょう。 「クリエイターやアーティストは心を病みやすいのでしょうか

      • 24.クリエイターだけじゃない「うつ病リタイアコース」

        うつ病*リタイアコース*一般的には鬱はひらがなで書くので、ここでは『うつ病』で統一させてくださいね。 クリエイターだけじゃなく、また「うつ病」だけでもないですが、本当にこれはよくあるんですよね… 「いや、もう死にたいですねー」というのはもちろん、文字通り死にたいのではなくて、この止まれない・休めないのをどうにかしてほしいけど、どうにもならないから「死にたい」になるんですよね。 それを「うつ病」と呼ぶのか、はたまた身体にきて別の病名がつくのか、自律神経失調症と呼ばれるのか

        • 23.原作者と脚本家、二人のクリエイターの葛藤とダイアローグ(前編)

          【推しの子】の作中でも語られていますが、原作者と脚本家は立場が異なることから、こだわるところ、こだわらざるを得ないところで両者の間に葛藤が生じることは当然といえます。 考え方・立場・枠組み・創造性の多様性原作者と脚本家という関係性でなくても、漫画家とアニメ家、漫画の中でも原作者と作画担当者、曲作りにおいても作曲、作詞、編曲、(音楽)アーティストの間に完全に同じ意見、感想というのは存在しません。立場の違い、職業の違い、性別の違い、年代の違いだけでなく、「個性」があることから、

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        • 臨床心理士から見た「推しの子」
          26本
        • トラウマやトラウマ治療について
          2本

        記事

          22.あかねの「没入型」演技と、かなの「適応型」演技(後編)

          では、前回「21.あかねの「没入型」演技と、かなの「適応型」演技①」でのあかねの話に続き、今回は「適応型」演技についてお話したいと思います。 適応型は「俯瞰的な視野の広さ」?有馬かなの「適応型」演技というのは、黒川あかねのような緻密な分析まではせずに、そのキャラクターの特徴をつかみ、作品全体やそのシーン全体を見渡したとき(俯瞰した時)に、自分はどのように演技するのが収まりよくなるかということを計算して行う演技のことを指し示しているのでしょう。 「今日あま」の時もそうでした

          22.あかねの「没入型」演技と、かなの「適応型」演技(後編)

          21.あかねの「没入型」演技と、かなの「適応型」演技(前編)

           「東京ブレイド編」では、特に演技というところにフォーカスが当てられています。すでに前記事で「演技」と「共感」の関係性についてはふれましたが、今回はもう少しこの「演技」について多角的に見ていきたいと思います。 「役にどっぷり入り込む「没入型」と、周りの演技を綺麗に受ける「適応型」。演じ方も対照的」と総合責任者の雷田代表が、黒川あかねと有馬かなについて述べていますが、「没入型」と「適応型」とはどういうことを示しているのでしょうか? 本編ではさらっとした説明にとどめられ、あとは

          21.あかねの「没入型」演技と、かなの「適応型」演技(前編)

          20.心理学と推しの子「東京ブレイド編」

          いよいよ本日から、TVアニメ推しの子の第2期が始まります。 今回のTVアニメ第2期の前半にあたると思われる「東京ブレイド編」でも、「演技」を通して、またそれぞれの人間関係を通して、意外と心理描写が多く描かれています。 2.5次元の舞台そのものはもちろんのこと、メディアミックスにおける関係者の交錯する思い、役者(アーティスト)や漫画家(クリエイター)同士の葛藤、そしてアクアの心の傷・・・ アクアの心の傷についてはこちら(ネタバレ注意)次回の第21回目の記事からは、それぞれを

          20.心理学と推しの子「東京ブレイド編」

          19.アイとルビーにとっての「嘘」の意味(後編)

          ルビーにとっての「嘘」の意味前回はアイにとっての「嘘」の意味について検討しました。今回はルビーにとっての「嘘」の意味、そしてアイとルビーの違いについて検討してみましょう。 ルビーにとっての「嘘」の意味は、天童寺さりな(以下、さりな)にとっての「嘘」 が大きく影響していることはいうまでもないでしょう。さりなは、少なくとも4歳までは十分な愛情を注がれ、育てられてきたことが描写されています。 「10年生きられる可能性は1割にも満たないと知り、母親の心は壊れてしまいました」 さ

          19.アイとルビーにとっての「嘘」の意味(後編)

          18.アイとルビーにとっての「嘘」の意味(前編)

          「嘘はとびきりの愛なんだよ?」星野アイを象徴するようなこのセリフ。「嘘は愛」。なぜそのように思うようになったのでしょうか。 それは、斉藤社長の「嘘で良いんだよ」という言葉がターニングポイントになっていると思われます。 アイ「嘘でも愛してるなんて言って良いの?」と言うときの表情が、「愛してる」という言葉を言いたかったが、「愛する」がわからないから言えなかったのではないか?と考えさせられます。 それを感じ取った斉藤社長は、その言葉につなげてアイの気持ちに入っていきます。

          18.アイとルビーにとっての「嘘」の意味(前編)

          ひとりでもできる!トラウマやストレスのセルフケア①

          しばらくシリーズで、「トラウマ」や「ストレス」に関するセルフケアについて可能な範囲でご紹介していこうと思います。一つ一つは短い記事になるかもしれませんが、少しずつ増やしていきますので、よろしければフォローやマガジン登録お願いします!(無料) トラウマ(心的外傷)について「トラウマ」と「ストレス」は別個のものです。トラウマ(心的外傷)は正式には、トラウマティック・ストレス(traumatic stress)といい、ストレスの一つともいうことができます。衝撃的な出来事を直接体験

          ひとりでもできる!トラウマやストレスのセルフケア①

          17.アクア(とゴロー)は二重人格?

          【推しの子】では、星野アイ(以下、アイ)の産婦人科医を担当していた雨宮吾郎(以下、ゴロー)は殺され、アイの双子の子ども(アクアとルビー)の一人、アクアとして転生しました(本名:星野愛久愛海(あくあまりん))。 最初はゴローの記憶をもとにして、アクアとしての生活をしていましたが、アイが殺されて以降、事あるごとにアクアの中の別人格であるかのように、ゴローが現れてきます。これは二重人格といえるのでしょうか? アクアの中のゴロー二重人格という言葉は、多くの方にとって聞いたことがあ

          17.アクア(とゴロー)は二重人格?

          カウンセリングが高すぎるのはなぜ?

          カウンセリングは、だいたい地方でも5000円ほど、都会だと1万円前後することがほとんどです。カウンセリングは、健康保険の診療報酬としてごく一部しか認められていないので(2024年5月現在)、医療機関では赤字覚悟のサービスとして、患者さん向けに行われているか、医療機関(保険診療)とは別に自費でやっていることがほとんどかと思われます。 (筆者注:2024年6月からトラウマにかかわる公認心理師の対応には少しだけ診療報酬がつくようになりました) このようにカウンセリングは、5,00

          カウンセリングが高すぎるのはなぜ?

          16.アクアとPTSD④(心理的逆転編)

          幸せになりたいのに、いつも逆の行動をとってしまう「心理的逆転」とはロジャー・キャラハンによって開発されれた「TFT(思考場療法)」と呼ばれる心理療法で用いられる考え方です。心理的逆転(Psychological Reverse: PR)とは、「治療で治りたいのに治療を妨げるような行動をとる」「幸せになりたいのに惨めになる行動をとる」など、心のブロックによって自分が望んでいることと真逆のことをしてしまう状態のことをいいます。心理的逆転は、精神疾患や悩みに限らず、身体症状や人生そ

          16.アクアとPTSD④(心理的逆転編)

          15.アクアとPTSD③(感情コントロール編)

          推しの子第50話では、アクアが客席に「刀鬼」に感情を届ける演技をするため、感情演技について考え始めます。 その際、有馬かなから「今回の場合、『刀鬼』は生きてる『鞘姫』を見て喜びに包まれるわけだから、まぁ嬉しかった事を思い出しながら演技すれば良いわけよ。アンタだって嬉しかった事の一つや二つあるでしょ」と言われます。 アクアが嬉しかった時の記憶を辿り、嬉しい感情を思い出していると、恨みの感情を抱いたゴローの姿がアクアの背後に現れ、アクアに警告し、その後アクアはフラッシュバックを

          15.アクアとPTSD③(感情コントロール編)

          14.アクア&ゴローと心理社会的発達段階

          今回は、アクア&ゴローの心理社会的発達段階について、考えを紹介したいと思います。ちなみに、エリク・エリクソンの心理社会的発達段階については、以下の3つの記事をご参照ください。 ゴロー(死亡時推定30歳前後)の発達段階「成人初期(20,21歳頃〜40歳頃):親密性 対 孤立」ゴローは6年生の医学部を卒業し、その卒業後の研修医時代(多浪や留年をしていなければ20代後半。26歳くらい?)に、当時12歳のさりなと病院で出会っています。さりなはアイのことを同い年と言っているため、アイ

          14.アクア&ゴローと心理社会的発達段階

          13.アクアとPTSD②(トラウマへの取り組み編)

          前回の「アクアとPTSD①(概要編)」では、アクアに見られるPTSDと思われる症状やトラウマとの違いについて紹介しました。今回の記事では、「PTSDなどのトラウマ治療の実際」について紹介し、「アクアはのトラウマ回復過程の可能性」について考察したいと思います。 (PTSDなどの)トラウマ治療の実際日本でトラウマ治療という言葉が注目され出したのは、本当にこの10年とかそれくらいではないでしょうか。 古くは、19世紀に始まるフロイトの精神分析から始まっているとも言えるでしょう。

          13.アクアとPTSD②(トラウマへの取り組み編)