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26.感情演技-感情の解放とコントロール-

「感情を出す」ということ。これは子どもの頃には考えずに自然にしていたことです。子どもの頃の方が、ある意味「感情を出す」ということはしやすいのかもしれません。

推しの子63話より

感情の抑圧

もちろん大人になっても感情を出すことはありますが、子どものころと比べると、理性が感情を抑えることが増えてきます。理性が感情を抑えるようになれば、本来出すべき(解放されるべき)感情も身体や心といった器(うつわ)の中に閉じ込められてしまいます。

アクアはアイが亡くなってから、感情が乏しくなったようですが、このような「重大な事件がきっかけで感情を出さなくなること」と、「成長することで理性が勝ってくることによる感情制御」とは別物です。

推しの子40話より

「重大な事件がきっかけで感情を出さなくなること」については、「15.アクアとPTSD③(感情コントロール編)」で紹介しましたので、ここでは主に「成長することで理性が勝ってくることによる感情制御」を話題として取り上げたいと思います。(上記・下記のリンク「15」は、ネタバレ注意)

感情は本来、解放されるものです。解放されている状態がデフォルトといえるでしょう。それを社会関係(人間関係)の中で、抑圧せざるを得なくなったり、トラウマによって感情等のコントロールが難しくなったりすることで、本来の状態ではなくなってしまいます。

感情を司る脳の箇所

脳を大きく3つに分けて考えた時、人間脳(大脳新皮質)・哺乳類脳(大脳辺縁系)・爬虫類脳(脳幹)に分かれます。このうち、哺乳類脳が感情の部分を司っていると考えられています。
(この分け方には賛否両論ありますが、直感的にもわかりやすく臨床的にも有用なことから説明に使うことがあります)

爬虫類には感情が見られず、爬虫類脳と呼ばれる部分では、呼吸や心拍など生命を司っているといわれます。哺乳類(犬や猫など)には感情が見られ、そして哺乳類の中でも特に人間には理性が見られます。自分のもっている感情を隠さなければと思うのは人間脳であって、哺乳類脳は感情を表出します(飼い主が帰ってきた時の犬の喜び方を見ているとわかりやすいですね)。

ちなみに、そのうちの扁桃体と呼ばれる箇所が情動記憶(感情にかかわる記憶)を司っているといわれています。

感情演技

さて、ついに本題の「感情演技」についてです。
そのような本来自然と表出していた感情を、成長していくにつれて理性で抑え込むようになっている状態から、意図的に感情を普段よりも出す方向に持って行くものと考えられます。

推しの子50話

感情演技の難しいと思われるところは、理性で「いま、ここ」の状況・場所などを理解している状態で、なおかつ「あのとき、あそこで(想像上も含む)」の感情を取り出してきて、その感情が出てくるのに半分は任せつつも、もう半分は理性でその場に必要な「演技」として行動やセリフを言わなければいけないというバランスの取り方です。

バトル物の漫画でもよく出てくるようなシチュエーションですが、自分の中に飼っている何かを完全に解き放つのではなく、それに意識が乗っ取られてしまわないように、ギリギリのところで抑え込み制御をかけるというものです。ジャンプ作品では、NARUTOの「ナルト⇔九尾(九喇嘛)」や怪獣8号の「日比野カフカ⇔怪獣8号」が思い浮かびました。

このギリギリのバランスを保ちながら演技を行うということは、感情演技は、究極の感情労働といえるかもしれません。感情を何度も出したり引っ込めたりすることは、脳にもかなりの負担がかかると思いますので、十分な休息が必要なことでしょう。千秋楽までずっと続けていくためには、メリハリをより意識した生活をすることが求められるのだろうと思います。
そういった意味では、姫川大輝の普段のゆるい感じからの切り替えは、余分なエネルギーを使わないための必要なセーブなのかもしれませんね。

推しの子41話より


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