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Prism

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Prism(3)

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 翌日の面接がうまくいくはずもなかった。
 それから10社の企業を受けて、どこにも受からなかった。僕は憔悴し、やつれ、疲れ果てていた。フットサル仲間と会う心のゆとりすら持てなくなった。
 幻聴がまた聞こえた。クズ、クズ、クズ、クズ。中澤のせいだ。あいつにボランチなんかさせなければ良かったのに。雄登はマジクズだ。メンタルの弱い情けないヤツ。
 これだから内定もできないんだ。内定一つもらえないんだ。

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Prism(2)

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 退院してすぐに僕たちは付き合い始めた。
 僕は母親や舞依の勧めで、入院していた精神科の五芒星病院のデイケアに通い始めた。僕くらいの歳の若い人からおじいさん、おばあさんまで、精神を病んだ人々が社会に戻るためのリハビリの場所だ。スポーツをしたり、絵を描いたり、自分の病状を話し合ったり。僕はそこで週5日はスポーツをしていただろう。バスケ、バレー、バドミントン、ソフトボール、そしてフットサル。一日中身体

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Prism(1)

Prism(1)

 僕の世界が光を失ったのは忘れもしない、2014年のことだった。
 2014年、僕の憧れのサッカー選手、長谷部誠がブラジルでワールドカップを戦っている年、僕は毎日サッカーボールを蹴っていた。小学生から高校3年生までずっとサッカーを続けていて、長谷部と同じミッドフィルダーを任されて、余計なことは何も考えず、ただ前だけ、ただサッカーのことだけ見て生きてきた。毎日ボールを蹴っては、長谷部の大好きなミスタ

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