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【エッセイ】頭の中のエッセイ


 しばらく前のこと。
 長らく自発的に文章を書くことから離れていた時期があった。
 そのころ、不思議な感覚を覚えた。
 脳が勝手に、文章を書いている。
 目に見えるもの、思ったこと、周囲の様子。
 湧き上がるというのでもなく、絞り出すというのでもなく。
 単語ではなく、律儀に文章に組み立てられた言葉が浮かんでは消えていく。脳というのは良くできている。上手くもなく、てんで下手でもなく、ごくごく普通で当たり前の言葉たち。
 ああ、と思った。
 これがエッセイなのだ。
 淡々と流れてゆく文章を、あとは文字にすればいい。(それが難しい)
 
 そして、今。
 脳はいつのまにか自動運転を取りやめたらしい。
 指先でありきたりな言葉を絞り出す。それでもまあなんとかやっているのだけど。
 頭の中で、エッセイは今もどこかに人知れず書き溜められているのだろうか。
 無断転用しているのがばれて、取り出せないようにセキュリティがかかったのかもしれない。あるいは、頭の中のエッセイはもう絶滅したのかもしれない。
 

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