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新・夢十夜(一)



一 もう落ちてもいい


 高校の同窓会か。2次会でカラオケに行こうということになった。部屋に入ってみると2人の先生がギターを持って何やら古いフォークソングを歌っている。好きだった女性がこちらに来たからついてきたのだが、その女性も含め何人かはもう一つ別の部屋に移って行った。でも僕はまあここでいいかと思って一緒に歌ったりしている。トイレに行こうとして外に出ると、テニスコートに人だかりができている。上の方から眺めていると、顧問のK先生と生徒が打ち合っている。僕はそれをかなり高いところから見ていた。ふと足元を見ると、下に落ちそうである。50cmほどの隙間を乗り越えて柵をくぐり抜ければいいのだが、柵が狭くて抜けられない。何とかしようと体をひねるが力が尽きて、もう落ちてもいいかと思う。どうせ夢だから死ぬことはない。

二 大サービス


 10年ぶりに学生時代の親友Sと落ち合う。僕は品川の1つ西側の駅大崎から南へ10分ほど歩いた戸越銀座に住んでいる。下町である。小さなホールからハードロックが聞こえてくる。中に入ってみるとまだ準備中のようで明るい。客席も全然埋まっていない。Sのケータイに電話がかかってくる。さらに西の駅に住んでいる知人とも合う約束をしているらしい。僕たちは外に出る。西に行って渋谷に近づくほどおしゃれな街だと思うよ、行ってきたら、と僕は言う。ふと川の向こうを見ると2階のベランダから飛び降りる人がいる。一瞬自殺かと思った。でも、下にはマットがあり、飛び上がって喜んでいる。何かの出し物のようだ。成功に終わったようで観客たちも満足げに離れていく。主催者だろうか、成功のお祝いにとお餅を1ついただく。美味しそうだが、食事は済ませたあとなので、今食べるとお腹が痛くなりそうで、どうしようかと悩む。Sは今夜、我が家に泊まって、明日も一緒に過ごす予定だ。だから、しばらくの間は他の知人と会うのは認めようと思う。ふと前を見ると、超ミニの軽いワンピースを着ている女性の後姿が見える。一瞬突風が吹き、下着がはっきりと見える。大サービスですね、などとSが言う。

三 カオナシ


 友人と駅に着く。ホームに降りるとすぐに下りの電車がやって来る。僕はその電車に飛び乗る。友人が乗るのは上りだ。君は反対向きだからね。気をつけて帰ってね、と声をかける。友人はちょっと不安そうな顔をしている。ドアのガラス越しに僕は手を振る。電車が動き出す。だが逆向きだ。車内は暗い。なぜこの駅で折り返すのか。仕方ない次の駅で降りよう。と思って車内を見渡すと、客は皆、カオナシであった。

四 馬


 少年と並んで歩いている。しかし、なかなか乗せてはくれない。小走りになる。君と色々話したいのだけれど、このままではしんどくなってついていけなくなる。背中に乗せてほしい、と僕は言う。少年は腰を少し曲げて僕を背中に乗せてくれる。もう少し上に。何度か僕はお尻を上にあげる。次第に背中が湾曲してきて、座りやすくなる。鞍ができている。少年は馬に変わり始めている。喫茶店の中に入ると男性が女性の背中にまたがっている。この女性も馬に変身しようとしている。顔を見ると、いったん目鼻が溶け出して馬面に変わろうとしている。他の客や店員は驚かないのだろうかと周りを見渡すと、そこにいる人々は皆馬のようであった。

五 器のきず

 
 妻の実家にいる。食事の準備をしている。僕は陶器とガラスの器を持っている。どちらも汚れているようなので、水道の水で洗いながそうとしている。陶器の底にきずがある。そこに水が入り込んでいく。塗料だろうかそれとも接着剤だろうか。白くて粘性のある物質がじわじわと染み出してくる。これではこの器は使えないなあと僕は思う。横では僕の実父がその様子を見ている。

六 靴下


 朝なにか暑いなと思って目覚めると靴下を履いたまま寝ていた。どんなに寒くてもいつもは裸足で寝ているのに。靴下を脱いでベッドの上に放置する。しばらくして仕事に行くために着替える。革靴を履いて外に出る。なにか違和感がある。そうだ、靴下を履いていなかった。

七 孫のように鳥を大切にする


 僕は遠くに旅行に来ているようだ。帰りにお土産を買って大きな紙袋に入れてもらう。僕はそれをホームに置いたまま、用を足しに行く。戻ってみると紙袋がない。誰かが落とし物として届けたのだろうか。余計なことをしやがって、と思いながら駅員を探す。もう電車が到着する。これに乗らなければならない。ホームの端にいた駅員に聞くと、これでしょうかと紙袋を渡してくれる。ちょっと変な顔をしている。僕はそれを受け取る。中身が増えているのだ。クックックッと音がする。抱きかかえると、重たくて暖かい。どうやらちょっと大きめの鳥が入っているのだ。僕は仕方なくその紙袋を抱えて電車に乗る。大人しくしてくれていたらいいのだが、と思いながら。また、これを持って帰ってどうすればいいのかと、思いながら。しばらく電車が走っていると乗り物酔いをしたのか、紙袋から頭を出して吐き戻しをした。僕は背中を擦ってやりながら、厄介なことになったと思う。一緒に乗っていた父親がタオルを出してくれる。それで床を拭いた。駅に到着して停止している間に外の空気を吸わせる。少し楽になったように見える。僕は近くにあった水道の蛇口をひねってタオルを洗う。台の上が濡れてしまう。ここは使わなかったほうが良かったのかなと妻に聞く。おばあちゃんが滑るといけないからね、と答えが返ってくる。娘が僕に、お父さんにはこれを、と言って、お弁当箱を渡してくれる。それを受け取りながら、僕はタオルで台を拭く。もう一度紙袋に入っている鳥を抱きかかえる。暖かい。少し気分はましなようだ。僕はその子を自分の子ども、いや孫のように大切にしようと思う。

八 シースルーのスカート


 妻とディスカウントショップに来ている。僕は大量のスリッパの中から良さそうなものを探している。ふと横を見ると妻はシースルーのスカートを試着している。僕はそれを見て、いつそれ履くの?と聞く。妻はムッとしている。

九 國分功一郎


 僕は加茂川と高野川が合流する賀茂大橋が見える建物の中にいる。その建物のまわりは狭いテラスのようになっており、ぐるりを散歩することができる。角を曲がったところからは、勾配が急になり転げ落ちそうになる。僕は必死に耐えて元の場所に戻る。元上司のIさんと國分功一郎(昨夜テレビに出演していた)が何か話をして盛り上がっている。僕はその話の隙間を狙って、その勾配の急なところを試してみてほしい、あれは危険ではないかと言う。そこで、他の人達も一緒に問題の場所まで行ってみる。ところが子どもたちも平気に歩いている。なんと転げ落ちそうになったのは自分だけなのか、と思っていたら國分功一郎が転げ落ちそうになったので僕はあわてて手をつかむ。応援を頼んで必死に引っ張り上げる。でも、もう一度よく下を見ると、高さは1mくらいしかない。國分功一郎は必死の形相であった。

十 保健室


 僕は小学校の教員なのだろうか。体の弱いクラスの女子が、自分でも学級委員ができることを証明するために廊下を何往復もしている。これでどうですか?と僕の目の前に現れる。ところがそこでふらふらになり倒れ込む。僕はその女子生徒を抱きかかえて保健室に運ぶ。そして、ベッドの上におろそうとするが、そこにはコードがたくさんある。僕はそれをよけながら少女をそっとおろして寝かす。養護の先生がいろいろと対応を考えてくれている。僕はこの人は看護の資格を持っているのだろうか、お家への連絡はもう誰かがしてくれたのだろうか、救急車を呼んだほうがいいのではないかなど、いろいろと頭の中で考えている。

このところ夢を記憶していることが少なかったが、最近連続して記録できたので夢十夜を再開する。

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