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そもそも 「論文」ってなに?とフリーズしてしまったあなたのためにー社会人大学院生のための研究・論文マニュアルー

2019年 5 月 7 日
「そもそも 「論文」ってなに?とフリーズしてしまったあなたのために」
名古屋市立大学大学院人間文化研究科地域文化と共生
M2 (4回生) 柴田英知
Email: bxf00517@nifty.com

1.はじめに

社会人院生の 柴田英知です。 「 地域開発と参加 」 が研究のメインテーマで、修士論文では日本の戦後初の地域総合開発事業である愛知用水の歴史について一次資料の取りまとめをおこないました。

特に、社会人院生のみなさんは、 現場の経験をまとめようとする場合、書きたいことがありすぎて、盛りだくさんの研究計画書をつくられたことと思います。しかし、「 一論文一テーマ 」 と いわれるように、 結局、多くの興味深い事象の中から、ただひとつの問い(リサーチクエスチョン)に絞って、「論文」として、「論文のかたち」にまとめ上げなければなりません。

わたしが、 博士前期課程(修士)に 入院してから 直面したことは、関連分野の ディスプリンや先行研究のレビューはもちろん大切ですが、結局、 「 論文とはなにか 」 がわからなければ、アウトラインも、問い( リサーチクエスチョンも立てられないという厳しい現実でした。

3 年目にようやくやったことが、大学生向けの卒業論文など、論文の書き方そのものについての勉強でした。この名古屋市立大学の滝子キャンパスの図書館だけでも 50 冊以上の論文の書き方の本があります。

もちろん指導教員や、 他の院生から教えてもらうこともあるかと思いますが、 20 冊以上の本を実際にみたり読んだりしてみて、「初学者」にわかりやすいと思ったものを、いくつかご紹介いたします。

2.おすすめの論文の書き方の本

(初心者用)

S1. 小笠原喜康、 2009 、『新版 大学生のためのレポート・論文術』、講談社現代新書 ※2018 年に、『最新版 大学生のためのレポート・論文術』が出版された 。


S2. 石井一成、 2011 、『ゼロからわかる大学生のためのレポート・論文の書き方』、ナツメ社

S3. 小笠原喜康、片岡則夫、 2019 、『中高生からの論文入門』、講談社現代新書

わたしにとっては、 S1. と S2 の 2 冊が一番わかりやすかったです。問いの立て方、スケジュール管理の仕方、研究方法、文章作法 について、必要最低限の基礎的な知識をコンパクトにまとめてあります。 論文を書き始めてから読み直しても 、 いろいろ気づきがあり、 とてもおすすめです。

S1は、 2018 年に、『最新版(後略)』が 出版されました が、インターネット の活用法関連以外でのアップデートは、 ほとんど ありません。

S 3. は、 S1 の著者が、中高生向けに論文指導している片岡氏と組んだタイトル通りの本ですが、こちらのほうが、さらにわかりやすいかもしれません。

(中級者用)

このレベルでは、ディスプリンによって、かなり突っ込んだ説明が必要なため、それぞれの専門分野の本を読むべきだとは思いますが、ここでは比較的、汎用性の高いものを紹介します。

C1. 井下千以子、2013、『思考を鍛えるレポート・論文作成法 第2 版』、慶應義塾大学出版会 第3版(2019)が最新です。

C2.  上野千鶴子、2018、『情報生産者になる』、ちくま新書

C1 は、初心者用と思いきや、ある程度、論文の構造がわかっていないと、この本だけでは逆にわかりにくいです。ただし、各ステップのツボをおさえたチェックリストが充実しているので、自分の論文の構造の見直しに役立つと思います。

C2 は、問いの立て方からアウトプットまで、上野の社会学者としての手の内を明かしてくれているマニュアルというよりむしろ解説本です。漠然とした問いを論文というかたちに落とし込むために必要な「思考の過程(プロセス)」がわかります。

(上級者用)

J1. 明石義彦、2018、『社会科学系論文の書き方』、ミネルヴァ書房

J2. ポール・J・シルヴィア、高野さきの訳、2016、『できる研究者の論文作成メソッド 書き上げるための実践ポイント』、講談社

J3. 川﨑剛、2010、『社会科学系のための「優秀論文」作成術』、勁草書房

J1. は中級かも知れませんが、修士論文というより、「学術論文」とはなにかがコンパクトにわかりやすく書いてある好著。版型が小さいので、コンパクトで読みやすいですが、必要なことが過不足なく書かれている気がします。

J2.は、翻訳ですが、論文そのものを楽しく仕上げるためにユーモアたっぷりに、論文の各パートの書き方のテンプレートを提示している、いわば裏技本です。読んでいて楽しいです。

J3 .は、おそらく、学術論文の欧米のスタンダードの型を日本人向けにわかりやすく書いた本。修士論文だけではなく、博士課程、さらには博士号を取得後に、どのように研究を進めていくのかを系統だって説明しています。構成は、まず査読論文のあるべき型を先に示した上で、博士論文、修士論文、そ
して学士論文のそれぞれの作成過程における留意点をのべています。

これらの本は、自分の研究のあるべき姿をさぐる(知る)上でヒントになるのではないかと思います。

3.まとめ

上記の8 冊についてレベル別に、簡単ではありますがコメントをつけさせていただきました。もちろん分野やディスプリンによってもベストなものは異なるでしょう。しかし、自分にあったレベルや書きぶりの、いわゆる「ウマの合った」基本となる概説書をみつけることが、研究生活に先だった、そも
そも「論文」とはなんぞやという、最初の関門を潜り抜けるのに必要なことだと思います。

当然、自分の研究課題を深めることは必要ですが、特に、大学教育から長期間はなれていた人は、ぜひ、早めにこれらの「論文」の書き方についての本に目を通すことをおすすめします。

以上

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