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「船の男」ロバート・ラプソンの生き方とその晩年を考える/アウトサイダーアート

「船の男」ロバート・ラプソンの生き方とその晩年を考える


数多くの美術賞とロバート・ラプソン/アウトサイダーアート

 ロバート・ラプソンと彼の陶器の船、飛行機、車。2010年

ロバート・ラプソン(Robert Rapson,1951-2020/ニュージーランドの陶芸家)

ロバート・ラプソンが「窮地に追い込まれている」のではないかと・・

その後、ロバート・ラプソンは、自分が「船乗り」としては、もう、「窮地に追い込まれている」のではないかと考えた。
そこで、彼はさらに話を広げた。(アイロニーを含めて)

「私は昔から車も好きだった。一部のデザイナーが特別な外観を創り出すために全権を委ねられているのがわかる。そんな彼らは完全にやりすぎで、私はそれがとても好きだった」 -Robert Rapson

-Robert Rapson
ラプソンは「船員」として窮地に追い込まれることを恐れ、自動車や飛行機にも手を広げた。

彼の車は、背景を設定し物語を完成させる人物、木々、その他の物体とともに小品となった。
彼のロンドンバスは、側面に広告として描かれたキャッチーなフレーズで文化史を記録した。

ラプソンのロンドンバスは文化史を記録しており、側面にはキャッチーなフレーズが広告として描かれている。

数多くの美術賞

ラプソンは数多くの美術賞を受賞しているが、最も有名なのは、ニュージーランド最高の陶芸賞である2013年のポーテージ・セラミック・アワードで、マルチインスタレーション作品「 ヒマラヤは世界に奉仕する 1949-70年代初期」で受賞したプレミア賞だ。

カナダの審査員エイミー・ゴガーティ氏はこの作品について次のようにコメントしている。「彼は想像力とウィットで鮮やかな子供時代の思い出を再構成し、興味をそそる鮮やかな情景を作り出している。彼の作品は、遠く離れた場所や祝賀行事の集団的空想に触れている。それらから、彼は私の最高の評価と尊敬に値する。」
優勝後、ラプソンは「賞金を持って逃げるように、3か月間の世界一周の旅に出た。」
そして、アーツ・アクセス・アーティスティック・アチーブメント賞

「陶芸の旅ではありませんでした。中年期の危機でした。突然、歳月が経ったことに気づきました。私は62歳です。私は変わってしまいました。すべてが変わってしまいました。」 -Robert Rapson

-Robert Rapson

帰国後、彼は「精神疾患を経験したアーティストの優れた業績と貢献」に対して、アーツ・アクセス・アーティスティック・アチーブメント賞を受賞したことを知った。

ロバート・ラプソンの作品は国際的に評価され・・

ロバート・ラプソンの作品は国際的に評価され、ニューヨーク国際アウトサイダーアートフェア、ニューヨークのダットンギャラリー、ロサンゼルスのサウスウィラード、パリのギャラリーアンペール、シドニーのキングストリートギャラリーなど、世界中で展示されてきた。
彼の作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の元館長ロバートスター(Robert Starr)など、影響力のある芸術家によって収集されている。ベルリンの収集家は、特別に建てられた部屋にラプソンの船を100個保管している程だ。

アウトサイダーアート展

ラプソンの作品をニューヨークとパリのアウトサイダーアート展に持ち込んだ研究者でアートディラーのスチュアート・シェパード(Stuart Shepherd/美術評論)は次のようにコメントしている。
「ラプソンの作品のノスタルジックな雰囲気がニューヨークのバイヤーの心をとらえた。彼らは、複製の真正性と細部へのこだわり、そしてロバートが作品の題材に対して抱く明らかな知識と愛情に大喜びしていた。」-Stuart Shepherd

「ロバートが人々からの依頼を受けられるという事実は、ボーナスのようなものです。それは購入者とアーティストと作品の間に個人的なつながりをもたらし、家族旅行の思い出を閉じ込めることもよくあります。」-Stuart Shepherd

-Stuart Shepherd

パリの展示会では、展示会が開かれる前に、なんと、ラプソンの船がすべてイギリス人のコレクターに売却された。
翌年、ニューヨークのアウトサイダー・アート展を批評したスコット・インドリセクは、同展で気に入ったアーティスト6名を取り上げ、その中にはラプソンもいた。
(註)アウトサイダーアートフェア第 27 回フェアは、ニューヨークのメトロポリタン・パビリオンで 2019.1.17-1.20 まで開催された。(アウトサイダーアートフェア:ニューヨークとパリで、隔年に開催される)

愛らしく不格好な作品は歴史的な船を再現している。海洋建築の堅固さを、ふわふわと溶けた何かに変えている

彼はラプソンの作品についてこう語った。「愛らしく不格好な作品は、歴史的な船、つまり定期船やたまにクルーズ船を制作したものだが・・。それらは海事建築の堅固さを、ふわふわと溶けた何かに変えている。」

ロバート・ラプソンとその晩年

Robert Rapson,1951-2020

ロバート・ラプソンは、2匹の猫と1人で暮らしていたが、他の人たちと一緒に働くのが好きだった。
「郊外で孤立し、孤立しているような気がしていました。Mix(コミュニティクリエイティブスペース)の委員を務めていたので、そこに行くようになりました。今ではコミュニティがあるように感じます。行く場所があり、社交的なつながりがあります。」

彼は2019年後半に膵臓がんと診断された。診断後も、2020年のニューヨーク・アウトサイダー・アート・フェアに向けて、ソニア・ダットンに最新作を届けようと懸命に努力していた。

最期が近づくにつれ、彼の最も優れた資質、鋭い機知と並外れた優雅さがすべて発揮された。
彼は多くの物事、人々、そして、自分自身と和解した様相だった。
彼は愛する家族に見守られながら、ローワーハットのテ・オマンガ・ホスピスで亡くなった・・・・

その生き方は

精神疾患と膵臓ガンである自身の病に、どう、自身が向き合い、納得して、その病に共存して生きていくか?
ロバート・ラプソンの姿は、その造形作品にあり、彼のジョークまじりの姿「船の男」は、いつまでも印象に残るだろう。

(参照)Dominion Post 他

(追記)フォレスト・ガンプ 一期一会の映画を観た方は、それを思い出すかもしれない。
ただ、ロバート・ラプソンの、この生きざまに演出はないという事だ。終始明るい。
どなたか、機会があれば、小説化していただければ、障害と共存して生きている方達にとって、幸いなのかも知れない。

-artoday

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