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(今日の身体アート)ロバート・モリスの「Waterman Switch」とマネの「オランピア」

ロバート・モリス(Robert Morris,1931-2018/US) :身体アート(身体表現)を含む、現代アートの作家・美術評論家。
そして、ロバート・モリスは、ミニマル・アート、ランド・アート、プロセス・アート、コンセプチュアル・アートを代表する芸術家・評論家であり、これらの運動を理論的に推進した美術批評は著名だ。
前科の続きで、今回は、このロバート・モリスの身体アート作品である「Waterman Switch」をご紹介を致したく・・

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「Waterman Switch」(ウォーターマン・スイッチ-1965)は、代表的な、いわゆる身体芸術としての「パフォーマンス」作品だ。
それは、モリス扮するひとりの男が白いマスクをし、Tシャツ姿で作業手袋をはめ、8フィート×4フィート(1フィートは、30.48cm)の白い合板を運搬する。ここでは、いわゆるパフォーマンス(身体アート・身体表現)が行なわれている訳だ。音響には工事現場のドリルの音だ。3枚目の合板を取り除くと、そこに出現するのは、マネの「オランピア」(1863)に描かれた娼婦に扮して裸体で寝そべるキャロリー・シュニーマンだ。(Carolee Schneemann,1939-2019/US 視覚実験アーティスト)
静止したまま観客にじっと目を向けたシュニーマンの顔や体は白く塗られている。

「Waterman Switch」の評価について
評論家のクレメント・グリーンバーグ(Clement Greenberg, 1909- 1994/US-美術評論家)は、「オランピア」において裸体をベタ塗りに近い仕方で白く描いたように、フラットネスへの傾向を先駆的に示したマネを最初のモダニストとみなしている。「オランピア」の引用は「モナリザ」の複製品を自分の作品として用いたマルセル・デュシャンへのオマージュと考えられたとも言われる。

マネの「オランピア」(1863)

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そのあたりは、ルーシー・リパード(ルーシー・R・リパード/Lucy R. Lippard、1937- /US-ライター、芸術批評家)も同様に「芸術の非物質化」の中で、その前後の舞台装置(また、彼のインスタレーション)もレディメイドという事もあり、ロバート・モリスのミニマリズムを定義するうえで、その形態的な単純さよりも、むしろデュシャンに通じるような観念性の方向性に注視している。
それは、具体的には、「非物質性・概念性」という論点から、コンセプチュアル・アートとミニマリズムとの境界が曖昧に受容されていた、1968年当時の状況を生々しくドキュメントしていると言う事だ。観る側の視点(極)の幅は多様だ。


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