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【#10】材料力学の強化書 〜トラス構造について〜

今回のトップ画像は旧神岡鉄道の廃線跡。富山県富山市の猪谷駅から岐阜県飛騨市の奥飛騨温泉口駅に至る鉄道路線です。渓谷に架かるトラス構造の鉄橋は、今でも飛騨方面の隠れた観光スポットのひとつです。

さて、材料力学の話に戻りましょう。

前回は熱応力について扱いました。物体に温度変化が生じると変形を引き起こしますが、その変形が何かしら拘束されると、物体内部に応力が発生します。

今回はトラス構造について。トラスに関する計算の詳細は「構造力学」の分野になるので、そこは構造力学にお任せします。ここでは簡単なトラス構造を題材に、トラスの変形について話を進めたいと思います。

注記:棒材を連結させた構造(骨組構造)としては、ラーメン構造とトラス構造の2種類があります。ここでは棒の変形問題に焦点を当てるため、トラス構造について説明します。

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トラス構造とは

複数の棒状の部材を互いに軸力を伝え、モーメントは伝えないように連結した構造のことを「トラス構造」と言います。部材同士の連結点を「節」と呼びますが、トラス構造のように部材同士の相対的な回転を許容するような節を「滑節」もしくは「ヒンジ」と言います。

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トラス構造を採用するメリットとして、主に下記の3点が挙げられます。

(1)比較的に強度がある
トラス構造は部材をピン接合で三角形にしたものを組み合わせて構成します。三角形は四角形と比較して安定しており、強度の高い構造と言えます。また、部材にモーメントが作用しないため、曲げによる変形が発生しません。そのため、同じサイズの部材でも効率的な断面を選定することが可能です。

(2)軽量化が可能である
トラス構造は部材にかかる負担が少ないため、大きな部材ではなく細かな部材で構成することが可能です。例えば、ドームを建築する場合でもトラス構造が採用されますが、大きな部材で全体を覆う必要が無いことから、より軽量な構造物を建築することが可能です。

(3)デザイン性がある
細かな三角形の部材を組み合わせることで、大きな曲線を描いたアーチ状の構造物を造ることが可能です。これは強度というメリットの他に、意匠的に魅力のある建築物が造れることを意味します。

もちろんメリットばかりではなく、デメリットもあります。例えば、部材の種類が多岐にわたり複雑化しやすいこと(手間がかかること)、構造上の制約である程度の高さを出す必要があることが挙げられます。

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演習問題を解いてみる

2本の棒材で構成されたトラス構造の変位量を求めてみます。たいていのトラス構造の問題では「変位量は棒材の長さに比べて十分に小さい」「棒材のなす角度は変わらない」という仮定を設けています。

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手順として、まずはお馴染みの力のつり合いから考えていきます。トラス構造では軸力のみが作用します(モーメントは作用しません)。力のつり合いの方程式は立てやすいと思います。

力のつり合いから2本の棒材の内力を求めます。今回は見た目からも分かるように両方とも引張力が作用するので、各棒材の伸びはの符号は正です。

最後に各棒材の伸びから変位量を求めます。作図が必要になりますが、それは数をこなしていけば自然と慣れると思います。

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おわりに

今回は骨組構造のひとつであるトラス構造について、変形の観点から説明しました。また、簡単な演習問題にも触れました。

トラス構造は実際の建築現場でも使われる話でもあるので、今回の知識は何かと役に立つかと思います。興味のある方は、より専門的に扱われる構造力学の参考書にも当たると良さそうです。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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