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ベクトル解析から力場を理解すること -5-

計算力学を扱う上で必ず通ることになる「解析学」の話題から、ベクトルを併用した「ベクトル解析」に関する連載記事です。

ベクトルの話は高校から登場しますが、関数(任意の独立変数に従い数値の変動を起こすもの)という視点からベクトルを扱います。ベクトル場やスカラー場と呼ばれる「場」が多岐に渡り登場します。

前回はベクトル解析から「ストークスの定理」に関する話をしました。前回と同じく、導出過程と応用例を織り交ぜての話でした。

今回はベクトル解析の計算例として、電磁気学の例題に取り組みます。出典は電験(理論)を始めとして、主に参考書から引用しました。


環状電流が作る磁場について

まずは半円(環状)に流れる電流から作られる磁場を求める問題です。ビオ・サバールの法則を用いて理論通りに計算します。

計算過程については、主にこちらの通りです。本来ならば外積は行列式の要領で計算しますが、ここでは微小電流(要素)と位置ベクトルが直交関係にあることを利用しています。

また、微小電流(要素)と位置ベクトルはひとつの平面上に存在することも分かるので、磁場(ベクトル量)の各軸方向の要素はz方向だけが残ります。これは外積の性質から理解できます。

電気双極子の問題

絶対値の等しい正電荷と負電荷が少しだけ離れて置かれている(電場の観測位置までの距離に比べて十分に小さいと仮定する)。この2種類の電荷をまとめて「電気双極子」と呼びます。

両電荷が全く同じ場所に存在すると互いに打ち消し合うため、ほんの少しだけ電荷同士が離れています。この両電荷で作られる電場を整理します。

負電荷から正電荷に向けて引いたベクトルを「電気双極子モーメント」と言います。最終的に一般化した形で電場(ベクトル量)を表現しましたが、今回のケースに限定するならば、電気双極子モーメントpは次のようになります。

$${p=qs=q{\,}(0,0,d)}$$

上記より、電場(E)の各軸方向の成分は次のように求められます。

$${E=\frac{qd}{4{\pi}{\varepsilon_0}{r^5}}(3xz,3yz,3z^2-r^2)}$$

今回は主に電磁気学の話題に持ち込みましたが、ベクトル解析は物理学の習得において避けて通れない道であることが分かると思います。

この他には流体力学や量子力学にも登場するので、日頃から忘れないようにしたいところです。

おわりに

今回はベクトル解析の話題の集大成として、実際の物理学(電磁気学)の問題に触れてみました。

ベクトルの概念上の強みは各成分の分離や分離後の統合まで、ストレートに話を進められる点だと思います。この辺は物理学の考え方と親和性が高いです。

今回でベクトル解析に関する話は終了します。また数学の深い話題をお届けできたらと思います。最後までありがとうございました。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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