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急速に拡大する美容医療市場

本日は私の専門性のひとつである美容医療の市場に関して端的に書かせていただきます😁

この領域、誰もが興味を持ってるにも関わらずブラックボックスが多いため明確な市場調査を行いにくいという特徴があります。

MBBやBIG4クラス、または海外のコンサルファームからもLinkedinやビザスクを通じて私に仕事の依頼が来ることがあります。なので詳細部分は記述できませんが、この領域の魅力について少しでも知っていただければ嬉しいです。



美容医療(美容整形)のマーケット

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美容医療の市場そのものは2019年の段階で4000億円を超えています。CAGRも110%を超えです。(注1)ただこの報告書はあくまで自由診療を主体とする医療機関の数字であって、大学病院・一般の病院における市場が反映されていません。AGAやEDといった保険診療外であっても一般的に処方されている市場を加味すると2021年の段階で美容医療市場は6000億の規模を超えているというのがKCCの見解となります😊 最近ではエクロックゲルという医薬品も登場しました。

また、多汗症ボトックス、ヒルロイド処方などの保険診療でありながらも限りなく美容に近しい品目を加えると更に跳ね上がります。

学会報告にも目を向けてみました。ISAPS(International Society of Aesthetic Plastic Surgery)が2020年12月に発表した資料では日本は世界3位の美容医療施術件数を誇ります。日本の人口数から考えると美容医療の浸透率はこのランキングほど高くないので、潜在市場もまだまだある美容大国ニッポン🇯🇵という表現がしっくりくるのではないでしょうか。(注2)

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ただ、勘違いしてはいけないのは、そもそもの医療市場が圧倒的に大きいという点です。

日本国民の医療費支出は厚労省によると2019年に43.9兆円ですので、これと比較すると美容医療の規模はまだまだミニマムで成長段階ということがわかります。

保険診療に頼ることのない分野ゆえに不利な要素(景気の左右)もあるのですが、2030年には美容医療のシェアは全体の医療費支出の2%前後のシェアまで育つでしょう。

また、美容医療の中でも伸長著しい領域は「美容皮膚科」が群を抜いています。いわゆる切らない美容医療になりますが、昨今開業する美容クリニックの大半は美容皮膚科を標榜しています。

ちなみに「美容皮膚科」という診療科は厚生労働省の診療科区分コードには存在しません。(「美容外科」は存在しています。)

本来存在しない診療科目の標榜がまかり通っていることも、なかなか闇が深いと感じます。


医師の立場から見る美容医療

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美容医療がここまで普及してくる背景には「美容医療をやりたい」という医師がいなければ成り立ちません。最近では研修医期間が終わったらすぐに美容クリニックに勤めるという医師も増えてきています。

美容医療を希望する医師が増加している理由は主に二つでしょう。

一つは美容医療が著しい成長産業であること。二つめは日本の病院の労働環境が過酷であること。大学の医局制度(白い巨塔の世界)が現代の考え方とマッチしないことにあります。
特に女医であればライフイベントやWLBの観点からハードな医局制度に見切りをつけて美容医療という領域を選ばれるのはごく自然な傾向といえます。

日本の大学病院の医局制度は深刻な問題です。誰かの犠牲に成り立っている制度はいつか崩壊します。これは少し大きなテーマになるので機会があればまた後日記載できればと思います。


製薬企業の立場から見る美容医療

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国内医薬品の市場規模は約10兆3700億円と大変大きな市場規模となっています。もはや日本を代表する産業のひとつです。(注3、4)

しかし、この医薬品産業は実は5年成長率(2014~2019年)の日本市場は年平均マイナス0.2%なのです。これは先進10カ国に中国、ブラジル、インド、ロシアを加えた14カ国で唯一のマイナス成長となりました。

自分が製薬企業に勤めている時から、「もうヘルスケア概念だけの開発は先細りだな、ウェルネス領域を絡めていかないといけない」と考えていました。事実、大半の製薬企業は特定疾患に焦点を当てた開発をするか、認知症などのハードルが非常に高い領域で勝負をかけています。

アンメッドメディカルニーズは確かに存在しているのですが、「病気」に対する医薬品の製品開発はある程度出尽くした、というのが現状です。

このため、製薬・医療機器会社の開発は健康促進/ウェルネスという観点からのアプローチが盛んになってきています。事実Allergan社(現 AbbVie社)をはじめとする美容医薬品のリーディングカンパニーがその頭角を現し出しています。医療機器であればCutera社やCandela社の成長にも目を見張るものがあります。


患者の立場から見る美容医療

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美容医療はこの10年で本当に市民権を得ました。

一昔前は胡散臭い、怪しいというイメージがあったと思いますが、いまや一般的にもそのイメージは払拭されつつあります。社会的許容度が圧倒的に増したことが市場促進に拍車をかけました。

リクルートライフスタイル社の調査では女性は自分自身が美容医療の施術を受けることに、抵抗感・違和感を感じない」のは40.8%ということでした。ちなみに男性も35.6%です。(注5)

ただこの数字は、受けた施術が「医療脱毛」なのか「変化の激しい外科手術」なのかで大きく分かれると思います。スキンケア〜外科領域まで一色にしてしまう市場調査が多いので、この辺りは今後の改善に期待します。


日本の美容医療の今後の展開と課題

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市場性・ヒト・モノ・カネといった観点から美容医療には非常に明るい未来を持っているといえます。

その一方で業界特有の課題や懸念事項は何か?といわれるとズバリ、
コンプライアンス意識の低さ。ではないでしょうか。
(これは教育体制や倫理観といった幅広い定義で表現しております。)

コンプライアンスの重要性は現代社会において語る必要はないと思いますが、市場性に比べてコンプライアンス意識が低いのが美容医療の世界です。

その証拠に未だに消費者センターは目を光らせていますし、医療広告ガイドラインの監視が離れません(今年もデロイトトーマツが見張ってるぞ😅)

医療の基本的思考であるエビデンスベースを疎かにされるケースも少なくはありません。これはとてもとても残念なことです。

「No Compliance, No Business」

法令遵守意識の無い所にビジネスは無いと私は考えます。

美容医療には大きなイノベーションが起きています。市場が更なる進化を遂げ、明確な専門性が誕生し、新しい角度から日本のヘルスケアに貢献してくれる分野でありますように😊

KCC

【参考資料・文献
注1)矢野経済研究所「美容医療市場に関する調査を実施(2021年)」
注2)ISAPS「Global Survey from ISAPS Reports」
注3)IQVIA「2020年医薬品市場統計売り上げデータ 」
注4)経済産業省「令和元年8月経済産業省における 医療機器産業政策について」
注5)株式会社リクルートライフスタイル「美容センサス2020年下期」

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