旅と食のはなし。

アート・オブ・ライフは「生きる術」と邂逅できる場を作りたいという思いからはじまった。想…

旅と食のはなし。

アート・オブ・ライフは「生きる術」と邂逅できる場を作りたいという思いからはじまった。想像力を刺激する雑誌のようにありたい。遠藤一樹 EATer.Co.,Ltd.【Instagram】https://www.instagram.com/eater_web/

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野菜の料理を食べたいときに

春の休日のこと。天気の良い朝の空を見上げていて、一人のシェフが頭をよぎった。それは、野菜を使ったイタリア料理が印象的な小嶋シェフだった。     南青山にお店があったころ、僕はよく通い、食事をしてワインを飲んだ。いろいろな料理を食べたけれど、いつも新鮮な野菜を使った料理があったように記憶している。気持ちの良い気候のせいか、身体がおいしい野菜を求めていたのか、僕は何年も会っていない小嶋シェフの料理を求めて、ショートトリップの準備に取りかかることにした。  店の名前は「クッ

    • コロニアル風焼そばパン

      脳味噌が煮えてしまいそうな暑さが続いてる。 プールサイドでひと息つくことも、海辺のリゾートでのんびりと過ごすことも叶わない夏。しかしながら妄想の旅なら誰に束縛されることもなく、自在に好きな場所へと出かけられる。 本棚には、そのきっかけになりそうな背表紙が並んでいる。「旅のラゴス」筒井康隆の隣に、「ラオスにいったい何があるというんですか?」村上春樹を見つけた。ルアンパバーンの街、確か僕は村上春樹を読んだ後に行ったことがあった。 そんな記憶と送られてきた食材が結びついて編み出

      • 小さな魚たちの昼食

        旅の記憶は、写真だけとは限らない。 僕の家の冷蔵庫には、いつも小さなコラトゥーラ・ディ・アリーチの瓶が入っている。 この調味料は、僕の旅の記憶とつながっている。 2017年の9月、僕はアマルフィに居た。 サンタ カテリーナに泊まり、アマルフィの街を散策した。 その記憶とTVで観たアマルフィのチェターラを取材した番組の映像が重なりながら、頭の中にしっかりと残っている。冷蔵庫を開けて、この瓶を手に取るたびに、またあの青い海を見たい衝動に駆られる。  5月も最終週になろうかという

        • 三種類のトマトソースの話

          夏空の2020年8月、梅雨明けは遅かったが毎日夏日が続いている。 海へ行きたいと思いながら、どこにも行けない夏というのも経験がないことだ。 気温や湿度、季節の香りが旅の記憶を呼び覚ます。 おいしかったものや、楽しかったことが、再編集された記憶として甦ってくるようだ。その記憶を辿る旅へ出てみよう。 キッチンとダイニングから、世界の国へ行けるかな。  2016年の10月、僕は晴天のイタリアにいた。  ミラノのホテルに迎えに来てくれた“ニコ”は、まだ三十前のような若い青年だった。

        野菜の料理を食べたいときに

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        • ART OF LIFE season2.
          4本
        • ART OF LIFE season1.
          11本

        記事

          南樽市場とスルメイカ

          初出の原稿を書いた2016年の9月、僕は好きなように移動をしていた。 北陸を車で走っていた。小松から金沢を経て能登へと旅していたようだ。思うように動けないでいる2020年の夏からは、考えられない時間を過ごしていたんだなとふと振り返ってみた。さて、この夏から秋をどう楽しもうかと考える。能登大橋を渡ってすぐのところにある「みず」での朝食に匹敵するような、楽しい朝食を作ってみるのもいいかもしれない。何よりも、止まってしまったSEASON2.を書く時間が与えられたのだと思えば、こんな

          南樽市場とスルメイカ

          相性のいい味わい 〜エビとつるむらさき〜

          近年、夏から秋へと向かう時間は、激しい天候の変化と湿気ばかりが印象に残り、季節の食材に出会ったことや、味わったことが薄らいでいるように感じる。 そんななか、新緑のつるむらさきは記憶に残っている食材のひとつだ。 気分は天気に大きく左右されてしまうけれど、僕の記憶の中では、つるむらさきは晴天と結びついている。 それは、もし、つるむらさきと出会ったならば、明日はきっといい天気になるだろう、と思ってしまうほどなのだ。  よく晴れた週末、家で過ごす早めの夕方にお酒を飲むのは、とても楽

          相性のいい味わい 〜エビとつるむらさき〜

          ピカピカのあじを見つけたら〜あじのハンバーグ〜

          新鮮な魚に出会うと思わずうれしくなってたくさん買ってしまうことがある。 そんなときは、だいたい魚をおろすことに集中力を使い切って、 その先のつくろうと思っていた料理までたどり着けないかったりする。 とりあえずカルパッチョとか、とりあえず刺身とかを食べて あとは干物にしてみたり、処理だけして翌日に持ち越したりしてしまう。 今週の週末は、そんなことがないように初志貫徹を目指して魚屋さんへ。 おいしいスープが作りたいと思い、ストックの取れる魚に出会えることを祈りつつ、ごはんのことば

          ピカピカのあじを見つけたら〜あじのハンバーグ〜

          あさりのナチュレール

          料理書をつくっていたときに、 「この料理には、どんな料理をあわせるの」と聞かれることがあった。 聞かれてみてはじめて、そこが気になるところなのだと気づいた。 料理の組み合わせは、自由自在であることが楽しいと思う。 家で食べるなら、イタリアンの料理だから、全部イタリアンにするみたいな発想で 考えない方が、味わいの楽しみも増えるし、広がるに違いない。 もちろん、組み合わせのセンスは必要だと思うけれど、 それを身につけるには、食べてみるという経験に勝るものはないのではないだろうか。

          あさりのナチュレール

          ポルトガル・ナザレで食べた『魚介類のシチュー・ナザレ風』

          目的もなく出かけられたらカッコいいんだろうな、と思いつつ、 いつも何らかの目的の旅へと出かける。 ポルトガルは、とても素敵なところだった。 気候がよくて、食事がおいしくて、人がやさしかった。 ランチを食べに立ち寄った食堂のオヤジさんは、英語が苦手だといった。 その日の魚を教えるのに、図鑑を持ち出し、写実的なイラストを指差して、 「この魚だよ」と時間をかけて説明してくれた。 奥さんが焼く前の魚を見せにきた。 僕が、「ああ、太刀魚だ」といってオヤジさんを見ると、 ホッとした表情

          ポルトガル・ナザレで食べた『魚介類のシチュー・ナザレ風』

          たぶん一番たくさんつくっているスープ・レシピ

          数日前、リビングでつけっぱなしになっていたテレビで、 医師がファイトケミカルは重要であると話していた。 健康であるために、病気を遠ざけるために、その植物化学物質が大事だと話し、 ご自身の食生活の一例を挙げ開陳していた。 その中に、カボチャとにんじん、玉ねぎ、キャベツを煮たスープがあった。 チラッと見ただけなので、どのようにつくっているのかは確認できなかったが、 同じ材料で自己流の野菜のスープをつくって、3日間食べ続けた。 最終日は、パリで入手したカレーパウダーとガラムマサラで

          たぶん一番たくさんつくっているスープ・レシピ

          生タラの傑作料理〜タラのグラシオサ風〜

          僕自身の旅と食と人との出会い、巡り会ったモノのことを記すことから始めてみることにしたART OF LIFE。少し先まで書きすすめてみたのだけれど、面白いこと、興味のあることに、次から次へと出くわす毎日が目の前にある。自分の中の旅と食の「引き出し」を、自在に開けたり閉めたりしながら、いろんな季節の「旅と食のはなし。」を書いてみたい。そして先日、ある方から「お料理のレシピ、マルゲンさんでしたっけ?」と聞かれて、 2秒くらい反応できなかったのですが、 ↑「マルモトヨシオ」と読みます

          生タラの傑作料理〜タラのグラシオサ風〜

          帆立貝と揚物と

          「食材」との出会いに刺激を受けることがある。 普段、よく食べている食材でも、市場で出会ったりすると、その姿に身構えてしまうこともある。僕にとっては、しゃこがそのひとつだった。北海道の市場で、ザルに積まれたたくさんのしゃこを買ったのだが、持ち帰ってその姿をしばし見つめて、SF映画「第9地区」を思い出してしまった… 一方で帆立貝は、どの姿にもなれ親しんでいる食材のひとつだ。 それは、たくさんの帆立貝を自分でむいて料理した経験からだろう。 旅先の市場を歩く時間が、またやってくること

          帆立貝と揚物と

          和風カルド・ヴェルデ 〜キャベツとじゃがいものスープ考〜

          五感とともに記憶を旅する。 どこかで見た風景や、出会ったかたちを目にしたときに、旅の記憶やあじの思い出が甦ることがある。 香りや手触りも含めて、かかわった感覚が多いほど、それは鮮明に現れる。 時間とともに再編成された自分の記憶を辿ってみることは面白い。曖昧な記憶が作り出す別世界へ、もう一度出かけることができるからなのだろう。 いまだから出来る自在の旅へ出かけて見たいと思う。  2016年初頭、暖冬のせいなのか、とても立派なキャベツが1玉178円で山積みにされていた。おいし

          和風カルド・ヴェルデ 〜キャベツとじゃがいものスープ考〜

          イワシとじゃがいもと魚屋さん

          もう一度、旅に出たいなと思った。 ART OF LIFEを書いた2016年から4年が経ち、コロナ禍に見舞われて旅行へ行くことができなくなった。少しずつ可能になっていくかもしれないが、もう昨年までとは、違う世界なのだと思う。 そんなときに、新しく入った仲間たちとART OF LIFEを再開することになった。 書きっぱなしにしていた原稿を読み直し、新しい原稿を書き始めたりしている。VOL.00〜10は、HPに掲載していたものを加筆・修正してnoteに引越し。 なかなか、自由に

          イワシとじゃがいもと魚屋さん

          プロローグ

          感覚を刺激する人とモノに会う。 生活の中でもっとも刺激的なこととは何だろうか、と考える。 それは欲を満たすことかもしれないが、それよりも心を揺さぶられるような感覚(五感)を刺激する人とモノに出会うことではないだろうか。 あるとき、それは旅であり、出会った人との会話であり、 素敵なモノを見つけることであり、何かを食べることだったりもする。 そこにはセンスとスキル、感性と技能が結びついて、人の心を動かす「カタチ」があるのではないかと思う。 ART OF LIFEは、僕自身の旅と