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知っているということ と 使いこなせるということ 「ベンチのデザイン」

昨年、福岡市の「 Fukuoka Green NEXT 」の事業の一環として 油山ウッドベンチをデザインしました。

デザインの進め方についての記録をnoteに残しておこうと思います。

ベンチのデザインだからといって、ベンチの知識だけではデザインできないものです。

今回のお話で言うと、ベンチ、社会、歴史、木の性質、使う場所、使う人、設計図の書き方、イメージの伝え方、絵、製材の仕方、金額の制限、搬送、などなど 知っておかないと意図を汲み取れない浅いデザインになったり、アーティストのオブジェみたいになってしまう。

最低限、知っておくとスムーズに流れが進むことは間違いない。ただ、知識があるだけではいけない。
この知識を繋ぎ、組み合わせ、新しいものを最適解として作り上げるには、知識を使いこなすという技が必要になる。
知識があってもマニュアルでしか対応できない人は、他の記事を見て欲しい。知識を使いこなすきっかけがあるかもしれないので。

いきなり、ベンチのデザインをしてくださいといってベンチのデザインを描くのはプロか小学生のどちらかでしょう。何事も過程が大事なので見ていきましょう。

1.背景を知る
市域の1/3を占める戦後に植えられたスギやヒノキの木が伐採時期を迎えており、花粉症がでにくい木を新しく植えて森を守り続けるという仕組みを作るために、伐採した木を何かに使い、住民に知ってもらう。または、使ってもらうことで、森の魅力や木材の促進をする。

2.ベンチと背景の繋がり
木は伐採をしてから乾燥をさせる必要がある。
半年から1年間乾燥をさせることで、強度が増し、住宅や製品として活用が可能となる。
このベンチは、油山の間伐材を製材し、乾燥するあいだ、ベンチとして有効活用するもので、乾燥完了した木材は、木製品として生まれ変わる。

3.ベンチとその後
作られたベンチは乾燥期間が終わると、新しく切られた木がベンチとして1次利用される。そのサイクルをしやすいようにサイズやデザインを考える必要がある。
置く場所や使用シーンも想像する必要がある。

4.いよいよデザインへ
完成後のベンチを 逆算をしてデザインに制約を作り、ベンチの有るべき姿を構築する。そのためデザイン案は1つになる。
・内外に置かれるベンチのサイズを実測
・座り心地やベンチのデザインを因数分解
・1〜3の言葉からコンセプトになりえる部分を抽出
・ラフスケッチ
・デザイン案完成&変更
・図面への書き出し
・制作&設置 ←ここは別の方です。

意識したこと
ひとつのベンチに入れる最大の木材の数と支える部分の安定感を出す。
そして、ベンチと認識できる形にし、交換のサイクルで簡単に交換できるようにした。
効率よく乾燥するために木と木の間に小さいブロックを入れて隙間を風通し良くし、デザイン性も出した。
ゆとりのあるアームレストはユニバーサルデザインを参考に落とし込んだ。

デザインした後の感想
ウッドベンチに触れて香りが良いとか、なんだこれと興味を持ってくれる子供や当たり前のように座ってる人を見て成功したと実感しました。乾燥中だから座っていけないと思わせてもダメで、場所や生きてきた環境に馴染むというか ベンチが迎えているような温かみ、木の温もりがなんとも言えない良さを出していると感じた。

こちらのベンチは、福岡市の施設に何箇所か置いてあるので是非見にきて座ってみてください。福岡市のHPに記載があるのでそちらもご覧下さい。

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