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25arts|ボンクリ・フェス2021(東京芸術劇場)

芸術の秋深まる10月2日、東京芸術劇場で毎年開催されるボンクリ・フェス2021に行ってまいりました!
ボンクリ・フェス2021は、アーティスティック・ディレクターに作曲家の藤倉大さんを迎えて、クラシックのアンサンブルや雅楽から電子音楽まで、さまざまなジャンルの「新しい音」ばかりを集めた、音楽フェスティバルです。

昨年は東京都歴史文化財団ウェブサイトでも、藤倉さんにインタビュー取材させていただきました!

今回、私が体験できたのはごくわずかですが、共有させていただきます。

アトリウム・コンサート

ボンクリ・フェス2021のはじまりの音は、笙と尺八のコラボレーション。1階のボックスオフィス上をステージに、星筐(ほしがたみ)の会が円形に並び、東野珠実「円環の星筐-笙と尺八合奏のための-」(世界初演)を演奏しました。東京芸術劇場の広い吹き抜けに笙の和音と尺八の音が響き、竹林を吹き抜ける風のような自然の気配を感じました。
このアトリウム・コンサートは、チケットのない方も楽しめるプログラムです。東京芸術劇場は池袋駅に直結していますが、通りがけに生演奏を聴けるってスペシャル感ありますよね。いいことありそう。

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笙の部屋

ボンクリには、参加アーティストによるワークショップ「〇〇の部屋」がいくつか用意されています。私が参加したのは「笙の部屋」、アトリウム・コンサートでも登場した星筐の会のワークショップです。

中心メンバーの東野珠実さんが「今日は台風一過で…晴れ女なので、私のおかげです!」と笑いを取った後、パワーポイントを使って雅楽や笙の歴史、楽器の構造などを紹介。リング状のガジェットでPCを動かして、めっちゃデジタル慣れしている東野さん。

正倉院の復元楽器で、笙の2倍の大きさとオクターブ低い音が出る竽 (う )と笙による二重奏で、東野珠実「Möbius Link I.I」を披露。竽はオルガンのような音がして、常に流れる笙の高音と竽による短い低音の反復によって、グルグルと円を描くようなイメージが浮かびました。

東野さんは学生時代にソニーの方と知り合い、笙の周波解析などに参加しました。笙は人間の知覚できる範囲を超えた高周波の音波を発することができ、その音を聞くと体はリラックスする反面、脳は活発に反応するそうです。それが雅楽やガムランを聴いたときに気持ちよくなる(眠くなる)理由なのだそう。

東野珠実「dinergy2 for Sho and Computer」は、笙とコンピューターの電子音による楽曲。正倉院な時代からある笙と現代のコンピューターという時空を超えた競演ですが、違和感なくしっくりくる音楽となっていました。

それから360度録画・録音できるカメラを使用した、KDDI雅楽〈音のVR〉を紹介しました。これはカメラを囲むように演奏者を配置して撮影した映像を、カメラを自由に移動したり拡大したりして鑑賞できるものです。琵琶奏者を拡大すると琵琶の音が大きく聴こえるといった、独自の音楽体験を味わえます。
こちらはコンサートホール横のラウンジで実際に体験もできました。

最後に、笙とピアノで坂本龍一「KIZUNA」を演奏して、45分のワークショップが終了しました。

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お昼は館内のカフェ「ベル・オーブ」でハンバーグをいただきました。

ノルウェーの部屋

ボンクリには海外アーティストも参加していたのですが、コロナ禍で来日できない今年は、ノルウェーのヤン・バングとアイヴィン・オールセットが未公開の演奏動画を、ニルス・ペッター・モルヴェルが近作の演奏動画を提供してくれました。
ギターやエレクトロニクス(電子機器)を使用した演奏は約40分。電子音楽と聞くとサイバーで刺激的で攻撃的な音楽なのかな?と想像してしまいますが、ゆっくりとしたスパンで曲調が変わり、案外穏やかな気持ちで聴くことができます(個人の感想)。

彼らが2019年のボンクリで担当した「プンクトの部屋」は北欧ジャズ/エレクトロニカの即興演奏だったのですが、それがめちゃくちゃよくて!
ギターを弾こうとしてやめたり、録音した音にエフェクトをつけてすぐに再生したり、その場で一期一会の音楽が生まれる様子を間近で見られたのと、出来上がる音楽が眠くなるほど心地よくて(そういう曲ばかりじゃないのかもですが)。
コロナ禍が明けたら、また来てほしいです。やっぱり生で体験したい!

この「ノルウェーの部屋」はチケット不要で入退場自由。会場の地下2階のリハーサルルームは、普段は一般の方は入れないところなので、来年参加する方はぜひ覗いてみてくださいね。

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スペシャル・コンサート

ボンクリのメインイベントが、スペシャル・コンサート!参加アーティストがコンサートホールに集結し、ほぼ世界初演・日本初演の曲目で構成されます。
昨年同様、ロンドンを拠点に活動する藤倉さんはリモートで参加。舞台脇にモニターとスピーカーが据えられ、舞台転換時にはMCも務めました。「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」で10GBの通信ができるようになって、昨年よりも臨場感ある音質を実現したそうです。

プログラム冊子には「世界初公開!!藤倉大作曲ボンクリ・フェス開演ベル」の文字が。この開演ベルと藤倉さんのMCのあと、いよいよ開演です!

❶藤倉大/芯座(世界初演):LEO(箏) 
人気急上昇中のイケメン奏者、LEOさんが、全身真っ白で王子様みたいな衣装で登場しました。

❷山崎阿弥/粒と波(世界初演):山崎阿弥
風の音、動物の鳴き声、遠吠えなど、多彩な声音を使い分ける声のアーティスト。反響する音を山崎さんが眼で追いかけ、本当に風がステージ上を駆け巡っているようでした。

❸東野珠実/円環の星筐-笙と尺八合奏のための-(世界初演):星筐の会
360度カメラを囲んで、アトリウム・コンサートと同じ楽曲を演奏。袴や平安朝の衣装を着て、正装でのパフォーマンスでした。

❹ヤン・バング&藤倉大/Night Pôles River [feat.アルヴェ・ヘンリクセン、アイヴィン・オールセット](世界初演):電子音楽の上演(演者なし)
夜開催の「大人ボンクリ」方式の上演。ロックダウン時に藤倉さんが呼びかけ、すべてリモートで作曲されました。

❺ジョージ・ルイス/Shadowgraph 5(日本初演):アンサンブル・ノマド、ノマドキッズ、藤倉大
この曲は五線譜による楽譜はなく、即興演奏を想定したとても自由度の高い楽曲だそう。指揮者が指で示す数字に従って、ノマドキッズたちがさまざまな楽器を鳴らします。

❻八木美知依/桃の実(世界初演):八木美知依Talon
4人の女性が、箏の演奏の合間に短い歌詞を歌います。八木さんは成熟した女性とも少女ともとれるあたたかみのある歌声で、4人のハーモニーは美しく、ステージは極楽浄土と化します。
八木さんたち、迦陵嚬伽(かりょうびんが)なの?天女?

❼マリオ・ディアス・デ・レオン/2匹の蛇の祭壇 : アンサンブル・ノマド(フルート2名)
フルートをノイジーな息音(尺八のような音色)で演奏し、太古の宗教儀式や呪術を想起させる魅惑のステージでした。

❽大友良英/Blues Mirai(世界初演):アンサンブル・ノマド、ノマドキッズ、大友良英、藤倉大
大友良英さんはボンクリのために毎回新曲を書いてくれます。今年は、アンサンブル・ノマドの佐藤紀雄さん+大友さん+キッズが指揮者、大人とキッズが各種楽器の演奏者として登場しました。力強くて元気でハッピーな一曲。

❾藤倉大/infinite string:アンサンブル・ノマド
オール弦楽器による、受精後の細胞分裂とDNAの情報が発現し、命が宿るさまを表現した楽曲で締め括られました。

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まだまだ楽しいコンテンツがたくさん!

他にも、今年初開催の「ボンクリ前夜祭—糸と絲の部屋—」(10月1日)や「音のない“オンガク”の部屋」「子どもボンクリ」といったチャレンジングなプログラム、「トーンマイスター石丸の部屋」「大人ボンクリ」など、取り上げるべきコンテンツ、おすすめコンテンツがたくさんあります。

ボンクリは、今までに聞いたことがない「新しい音」が聴け、自分の脳や神経や身体が刺激されてムズムズするような、不思議な感覚が味わえます。私のような音楽の知識や経験が少ない人でも、大人でも子どもでも、今回はろう者の方も楽しめるフェスなので、ぜひぜひ参加してもらいたいです!

よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートでミュージアムに行きまくります!