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インセンティブ制御論(ヤバい経済学)

インセンティブは現代の日常の礎である。そして、インセンティブを理解することが、凶悪犯罪からスポーツの八百長、出会い系サイトまで、どんな問題もほとんど解決できる鍵になる。

こちらは、友人との読書会で読んだ名著や流行書を人に勧める形で紹介してみる記事です。

今回ご紹介する本

スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー、望月衛(訳)『ヤバい経済学[増補改訂版]』です。

ついこの間の読書会にて、MONOKOTO BUSINESSの経済担当のメンバーが推薦したものです。「タイトル見てなんとなく読んで見たかったんだよねー。」

副題は『悪ガキ教授が世の裏側を探検する(A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything)』となっています。「Rogue」って「悪ガキ」と訳せるんですね。いい副題だ。

一言でいうと何?

本書『ヤバい経済学』は、常識で考えたら"経済学"に反するような事象を経済学で紐解くビジネス書です。

自分で言ってても訳わかりませんが、とにかくヤバいということです。

専門用語はそれほど出てこないので、ビジネス読み物として楽しめるかと思います。

全容はどんなもの?

いくつもの社会問題を挙げ、主に計量経済学、行動経済学の観点からぶった切って行きます。目次だけ見てみましょうか。

第1章 学校の先生と相撲の力士、どこがおんなじ?
第2章 ク・クラックス・クランと不動産屋さん、どこがおんなじ?
第3章 ヤクの売人はどうしてママと住んでるの?
第4章 犯罪者はみんなどこへ消えた?
第5章 完璧な子育てとは?
第6章 完璧な子育て、その2 -あるいは、ロシャンダは他の名前でもやっぱり甘い香り?

(これに加えて、「増補改訂版」では100ページ以上のオマケが加わります。)

これを見てどう思われましたか?ちなみに、ク・クラックス・クランとは、アメリカの秘密結社の一種です。

前半では、私たちが真っ当だと思っている職業が、アウトローな人たちとやっていることは変わらないという内容が続きます。後半は、経済学から見た教育についての議論ですが、ほとんど皮肉です。

他の本と何が違う?

同じような本にエイドリアン・スライウォツキー『ザ・プロフィット』があると思います。

『ザ・プロフィット』は、私たちに身近な数々のビジネスが、実はとてもシンプルなルールに従って利益拡大をしているという内容です。文中では23個のルールが紹介されます。

『ザ・プロフィット』については過去にご紹介したので、興味がありましたらこちらの記事をご参照ください。

それに対し本書『ヤバい経済学』では、私たちの行動ひとつひとつがシンプルな動機(インセンティブ)によって突き動かされているという内容です。

大きな違いとしては、それぞれ世の中の光と闇を対象にしているというとこでしょうか。もちろん、『ヤバい経済学』が闇だと思います。

キモは何?

複雑な社会現象(教育までも)を誰にでもわかるところまで因数分解して解説しているところです。

冒頭で引用した言葉を再びここに載せます。

インセンティブは現代の日常の礎である。そして、インセンティブを理解することが凶悪犯罪からスポーツの八百長、出会い系サイトまで、どんな問題もほとんど解決できる鍵になる。

社会は人々の集合体です。個々人が突き動かされる動機、つまりインセンティブさえ理解してしまえば、強い力になることでしょう。

また本書では次のようにも説明していました。

何をどうやって測るべきかを知っていれば混み入った世界もずっとわかりやすくなる。

経済学はお金のための学問と思われがちですが、数値化の学問です。しかし、お金は様々な因果関係を示す時のモノサシになっていることは事実で、経済学が主眼にする理由も頷けます。

本書の中では、インチキをする先生が出てきます。ここで言うインチキというのは、学校評価に関わる生徒のテストを先生が書き直してしまう、といった事例です。

このような場合に、先生はどのようにインチキをするのか、どのようにしたらインチキが見抜けるのか、そのための実験の方法(データの取り方)など、非常に科学的な解説がなされます。

社会事象に対する仮説の立て方、計測法、データの処理、論証、ビジネスの世界で効力を成すことばかりです。

もし本屋に立ち寄って、本書を見つけたら、序章だけでも目を通してみてください。「こんな風に物事が考えられたら、世の中楽しいだろうな」そう思うこと間違いなしでしょう。

おわりに

本書『ヤバい経済学』の表紙には、グリーンアップルが描かれています。しかしよく見てみると、中身はオレンジ。これはおそらく「物事は見かけによらない」的なことでも示しているのでしょう。

書籍の表紙は、一番多くの人の目に映るので、筆者や編集者は1番悩むんじゃないでしょうか。そんな目線で本屋に足を運ぶと、いつもと違う体験ができるそうですね。

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