【靴屋の小話】憧れのグッドイヤーウェルト製法について
こんにちは、blueoverチームの zuccoです。
前回、前々回の続編になります。今日も製法(底付け)について、お話していきたいと思います。
前々回はこちら。
前回はこちら。
グッドイヤーウェルト製法とは
靴の底を縫う手法の中では、有名なグッドイヤー。
機械による『すくい縫い(つまみ縫い)』と『出し縫い』の二つの底縫いを必要とします。
① 中底の周囲に布製テープ(リブ)を接着し、これとアッパー、ウェルトとを、まず機械で縫い合わせます(すくい縫い)。
(写真はすくい縫いのあとに中物としてコルクを入れたところ)
② 中底の底部に革、フェルト、コルクなどの中物を入れて、コバでウェルトとアウトソールとを機械で縫い合わせて(出し縫い)完成させます。
材料もベンズやショルダーというタンニンなめしの分厚い中底、ソールを使うことが多く、下準備に手間もかかります。ゆえに高額になる傾向があります。
※前回のマッケイでは中底に底縫いのステッチが見えましたが、グッドイヤーではリブに縫いがかかるので、中底本体にはステッチが見られません。
グッドイヤーウェルト製法の歴史
ハンドソーン・ウェルテッド製法をもとに1874年から79年にかけて、アメリカでチャールズ・グッドイヤーJr.が考案した製法。
ハンドソーンとは上の項目の①を、人の手ですくい縫いすること。
中底もリブをつけるのではなく、中底自体に革包丁などを用いて加工をすることが多いかと思います。
とても時間がかかっていたことが容易に想像できます。
(写真は初期PHOLUSで行っていたハンドソーンウェルト製法)
グッドイヤーの機械が開発は、機械を多用した靴づくりの道を切り開いていきました。
グッドイヤーウェルト製法のメリット・デメリット
・メリット
ソールの修理をしたいときは、出し縫いをほどけばアッパーに影響をあたえません。すくい縫い部分はいじらずにソール交換ができるということ。長期使用も可能です。
履いていくと、中底とウェルトとアウトソールの隙間に詰めたコルクやフェルト、分厚い革の中底やソールの本体がゆっくり沈んでいき、履いている人の足に馴染んでいきます。
馴染むと、この上ない履き心地!という印象です(個人的な見解も含まれます)。
分厚いソールになるこの製法は雨が多いイギリスでよく用いられるようで、やはりイギリス靴の印象がありますよね。
・デメリット
先にも述べましたが、手間と材料費がかかります。
高額になることが多いです。
機械の取り扱いが難しく、使える職人さんも少ない。ハンドソーンは出来るけど、グッドイヤーは出来ないという方も少なくはありません。
厚みのある中底やソール使うので、履き始めは固い印象になります。マッケイと比べたら返りが悪いです。
その分、堅牢性が高いということになります。
馴染むまで少し時間がかかります。
でも、好みは人それぞれ。
わたしはグッドイヤーの固さも、履くと馴染んでいく様子も好きです。マッケイの返りの良さ、手軽さも好きです。
靴のソール交換のこと
出し縫いを解いて修理が出来るよ、と言われても、ソール交換には費用が高くつきます。
マッケイのときと同じく、購入時にハーフソールを貼ってもらうのも良いかもしれません。
この時、グッドイヤーは返りが良くないので、ハーフソールを貼るとさらに固い印象になることがあるので、このことを考慮して貼るかを検討してくださいね。
blueoverのグッドイヤーウェルト採用モデル
私たちblueoverでは、「PHOLUS」というモデルでグッドイヤーを採用しています。
今までの10年、いろいろなモデルを生み出してくれた工場さんの協力があって「PHOLUS」は誕生しました。
①②の工程のあとに、blueoverらしくEVAのアウトソールをつけています。
EVAのソールがクッションとなっていて、グッドイヤーウェルトでありながら、初めての歩行時からも硬すぎません。でも、グッドイヤーの堅牢度も十分感じられ、しっかりとした踏み心地になっています。
修理もマッケイを採用したmarcoと同様に、アウトソールのみの交換でも対応できるようにして、修理のしやすさを考慮しました。
あとがき
いかがだったでしょうか。
グッドイヤーウェルトは2つの大きな底縫いからなっていました。
わたしは靴に携わる前は底縫いについて、こんがらがってしまい、よく分からなかったときがありました。
ですので、写真を多めにしています。
靴の工場の空気感も感じていただいたのではないでしょうか。
機械を使うけれど、人の手の塩梅に頼る部分がとても多く、人の手で靴は出来ています。
今回も読んでいただいてありがとうございました。
zucco
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