見出し画像

【靴屋の小話】ポピュラーな製法、セメンテッドについて

こんにちは、blueoverチームのzuccoです。

今日は靴の製法のお話をしたいと思っています。


靴の製法って?

製法と聞いて、『何のこと?』と思われるみなさんも多いかもしれません。

靴の底付けにはたくさんの方法があり、その製法にはそれぞれ名前がついています。

セメンテッド製法、マッケイ製法、グッドイヤー製法、ステッチダウン製法、バルカナイズ製法、オパンケ、モカシン、、、たくさんあります。

大きく分けると『底を縫う製法』『底を縫わない製法』に分類できます。


大半の靴で用いられているのは、『底を縫わない製法』です(ここではセメンテッド製法とバルカナイズ製)。

今日はもっともポピュラーな製法である、セメンテッド製法について、少しご紹介いたします。


セメンテッド製法

靴の種類に限らず、現在はほとんどの靴がセメンテッド製法で作られています。

レディースのパンプスでしたら、薄いソールで靴も華奢で美しいとされることから、ほぼセメンテッド製法で、99%くらいではないかと思います(個人的な感想も含まれます)。

blueoverでは、「Mikey」「SHORTY TR.」「kopori」「おかっぱ」で採用しています。


セメンテッド製法の歴史

1850年代に発明されたようで、1920年後半には底付け用の機械も開発されたとのことです。

(底付け用の機械って、圧着機かな?)

1850年と聞いて、ピンと来ないので調べてみると江戸時代でペリーが日本に来たときでした!黒船の。こうなると、なるほど!そんな昔からあったのか、と思います。

ペリー

(ペリーさんはセメンテッド製法とは無関係です。)


それまでは靴といえば、底縫いが必要だったこともあり、作るのにとても時間がかかっていたようです。

(マッケイの機械が1858年、グッドイヤーの機械が1874年に考案されたようなので、時間軸で考えると、底縫いは手作業だったのだと推測されます。)

第二次世界大戦後、靴の需要が拡大。

今までの靴作りと比べて、大量に生産できたセメンテッドは接着剤の進歩とともに飛躍的に発展していったようです。


作り方とデザインの関係

アッパーとソールを接着剤で貼り付け、圧着します。

とてもシンプルな構造なので、安定した品質の製品をつくることができます。

画像2

<引用:blueoverコンテンツより

底縫いをする場合、底縫い用の大きな機械で太い針が大きな音をたてて上下し、太い糸を通していきます。つまり、それに耐えられる厚みが必要になってきます。

セメンテッド製法は底縫いが必要ないので、太い針も糸も無縁で、薄さや軽さのあるソールを貼ることが出来ます。

そのような理由から、デザインの制約も受けにくく、

安い靴からブランド品の高い靴まで、さまざまな靴に用いられています。


修理はできるのか

セメンテッドに使われる接着剤はとても強力なものです。

(ただ、修理屋さんにいた時、接着剤の劣化などで底が剥がれの靴も見たことがあります。)

blueoverの現状のモデルは、接着剤をつける前にした処理剤をし、接着剤にもデスモジュールという硬化剤を混ぜて、さらにさらに強力にして接着しています。

デスモジュール
【特長】
一液タイプでは、接着困難な素材に対して、接着性能を増す効果があります。
(1)接着力の強化   (2)耐熱性の向上  
(3)耐水性の向上   (4)耐油性の向上
(5)接着経過後の安定

<引用:マモルオンラインショップ>


修理をするとしたら、「底が剥がれてしまったから」ではなくて、ご愛用いただき、「底が減ってしまい、まだ履きたいから」というお声をいただいています。(ありがとうございます!!)

強力につけた接着剤ですから、底をはがすのは簡単ではありません。

アッパーを傷つけないように、グラインダーで底を削っていきます。

へたった底と古い接着剤を綺麗に取り、木型も入れなおして、

再度、生産時と同じように、下処理をし、接着剤を塗布(もちろんデスモも混ぜて)して圧着します。


今まで『セメンテッド製法のモデルはオールソールに向いていない』と、修理をオススメしていませんでした。

2つ理由があります。

・グラインダー処理や、木型を入れなおすときにアッパーに負荷がかかることで破れにつながるかもしれない。

・底縫いをしていないセメンテッドはアッパーが中底に固定されておらず、底をすべて外すことで、履き心地が変わってしまうかもしれない。

もちろん出来るだけ気をつけて作業をしています。現状のままお返ししたいと、作業をするのですが、上記のような可能性はゼロではありません。


ただ、最近ありがたいことに、

「それでも修理をお願いしたい!」というお声をいただくようになり、

工場さんと相談して、お客様に上の2つの理由をご確認、ご了承いただいた上でお修理を承ることに決めました。

(ほんとに最近のことなので、いままでオススメしていなかった皆様、申し訳ございません。修理をご希望でしたら、本サイトの修理問い合わせまで。)


他のブランドさんでも、修理可能としている場合と、不可としている場合がございます。

セメンテッドは本来は修理出来るけど、各ブランドで対応が異なる。

これが答えです。

あとがき

いかがでしたでしょうか?

個人的には歴史の部分にとてもインパクトがありました。

底縫いのマッケイやグッドイヤーよりも古いなんて。


工場さんからの小話として、、、

関西の靴工場さんはデスモを接着剤に混ぜるけど、

関東の靴工場さんではデスモを混ぜていないらしい(本当かどうかは関東の工場さんで働いたことがないので、分からず、間違えていたら申し訳ございません。。)。

理由は関東の工場さんは修理をする前提で靴作りをしているとか。

デスモを入れないで作った靴は、しかるべき処理を施せば、底をすべて削ってしまうことなく底を外すことが出来るようです。


読んでいただきありがとうございました。

zucco


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?