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『テンシンシエン!』第17話

◆「ハツタイケン?」

 ヘッドハンターからの連絡は、初日の2件以降、パタッと来なくなった。登録した両サイトに、システム障害でも発生したのじゃないか?と疑ったぐらいだ。
 勝手に「転職サイトのCM」みたいに「おっ!こんな人材探してんたんだよ!しかもこれってあの沢村じゃないかっ!」なんてことになって、たくさんのヘッドハンターからスカウトが来て・・・みたいなが起きるんだろうと思っていた。なんだかそんな自分が恥ずかしい。

 だがこれが現実なんだろう。

「はぁ・・・少し求人でも見てみるか。」
 珍しく独り言。でも他人事のようにぼうっと見ている。機械のようにマウスのホイールでスクロールさせる。コンサルが多い・・・枡口さんの言葉が断片となって頭の中で繰り返される。

 ”ある意味ギリの年齢・・・キャリアが足を引っ張る・・・前職より収入が上がることはまずない・・・正直、狭き門です・・・30代40代の応募に目が行きがち・・・”

”50過ぎた中途採用にな、すぐすぐそんな金額を払うと思っとるんか?”
”だから一部上場企業にいた連中は世間知らずと言われるんだ!”

 突然、七味の言葉が力強く再生された。

 あながち間違ってはいない。

「はぁ・・・なんだかやる気が出ないな・・・よし5月に入ったらちゃんとしよう。」
 こんな感じで一週間ほどが過ぎていった。なんだか食事を摂るのも家から出るのも億劫になった。

 まだ本気で就活してないし・・・本気出せばきっと・・・来月になったら本気出そう。


 ”ある意味ギリの年齢・・・キャリアが足を引っ張る・・・前職より収入が上がることはまずない・・・正直、狭き門です・・・30代40代の応募に目が行きがち・・・”

”50過ぎた中途採用にな、すぐすぐそんな金額を払うと思っとるんか?”
”だから一部上場企業にいた連中は世間知らずと言われるんだ!”

 まただ・・・もうわかっているから黙っててくれ・・・

 生まれて初めての経験だった・・・

 この時は、この後にもっと”深い闇”が待っているとは、思いもよらなかった。


■第18話へつづく


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