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『テンシンシエン!』第47話

◆「フガイナイジブン?」

2021年6月4日、金曜日
 パーソナプロセス&テクノロジー二次面接。

 無理やり気持ちを切り替えようとするが、一昨日聞いた山泉さんの「スカウト勝手に辞退事件」のことが気になって、なにか落ち着かない。

 なぜそんなことを?という言葉が、この2日間ずっと頭の中でぐるぐる回っている。それとは対極に山泉さんの体調を心配する自分もいる。なんだか精神が崩壊しそうだ・・・と言うのは大げさで、ただただ自分の中で納得がいかないだけで・・・もうこれ以上考えるのはやめよう。そろそろパーソナの面接が始まる。

”プープー・・・。プープー・・・。”

Teamsのコールがなった。

「おはようございます!パーソナの中田でございます。本日はパーソナプロセス&テクノロジーの二次面接となります。えっと、それでですね・・・今日はですね・・・沢村様が採用されたとして・・・その時、上司になられる方と面談をしていただこうと・・・遅いな・・・。おっ来た来た。」
「どうもどうも・・・ちょっとひとつ前の会議が長引いていて、申し訳ございません。」
「池尻さん、時間守ってくださいよ。」
「あぁ・・・申し訳ないです。えっと、では早速始めましょうか。」

「それではパーソナプロセス&テクノロジー、二次面接を開始します。本日の面談をするのは、第一DXコンサル部メディカル領域 領域長の池尻です。」
「あぁ、どうもどうも池尻です。先ほどは申し訳ございませんでした。」
「こちらは弊社を希望されている沢村様です。沢村様、3分ほどで自己紹介をお願いいたします。」
「あっ、はい。沢村健と申します。52歳です。前職では・・・・



ありきたりな自己紹介をする。

数日前までのモチベーションは無く、なにか別のことに意識が飛んでいるというか総じて元気がない。

NEKSTから内定をもらったという安堵感もあるが、やはり理由は山泉さんのこと。



「・・・沢村さん、体調とか、どこか調子が悪いとか?」
 池尻さんは、私の気が少し落ちていることに気がついたようだ。

「うちの中田から、すごい優秀な中途を見つけたって聞いたんですよ。でも今日の沢村さんからはそんな印象は受けない。中田と私は同期で20年来の付き合いなんですよ。こいつの言うことは絶対と言うか、間違えることないというか・・・本当にすごいんです。なのになんだろ・・・沢村さんは中田が言ってた人材とは少し違う・・・なんだか違和感があります。なぁ中田、おまえだってそう思うだろ!」
「沢村さん、どうしたんですか?なんか先日の感じた勢いと言うかオーラが感じられないですよ。今日の沢村さんからは。何かあったのですか?」

「あぁ・・・ですね。なにか今日は面接って感じではなくて、中田さん、池尻さん、ごめんなさい。一生懸命に気持ちを切り替えてみたのですが、なんだかうまくいかないようで・・・申し訳ないです。」

「沢村さん、面接の日を改めましょうか?今日は沢村さんの実力を知ることができないですから・・・どう?中田。」
「あぁ、池尻がそれで良いのなら。」

「申し訳ございません。そうしていただけるのなら・・・」
 情けない・・・

「では私のほうから改めて連絡差し上げます。しばらくお待ちください。」

「申し訳ございません。」



 結局、このあとパーソナから連絡が来ることは無かった・・・

 当たり前と言えば当たり前か・・・

 よくわからない個人的な理由で、面接で実力を出せない50代なんて、面接を受ける資格がないようなものだ。

 この日の午後、就職支援センターのカウンセリングを受けるのだが、山泉さんに関する、とても驚く事実を耳することになる。

 私だって他人ごとではないが・・・でも、なぜ・・・


■第48話へつづく


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