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『テンシンシエン!』第46話

◆「シラナイハナシ?」

就職支援センターで受理したスカウト案件?

辞退?

どういうこと?

「すみません、瀬川さん。全く理解できないのですが・・・スカウト案件って何ですか?」
「はい。沢村様の場合、前職での実績もあってですね。退職された際は、私どもの業界で結構な話題になったのですよ・・・このレベルの方が、全くコネを使わず普通に就職活動をされると聞いて、大手コンサル会社をクライアントに抱えるエージェントが、躍起になって当社へスカウト案件を出したのです・・・が・・・いずれも辞退。当社としましても、担当の山泉に、その理由と、沢村様がご希望される条件をよく聞けと・・・まぁスカウトのあった時期も沢村様が退職された直後の4月の末でしたので、少しお休みになりたいのかなと・・・」
「はぁ・・・」
 こんな話は初耳なんだが・・・山泉さんは何も言ってなかったぞ・・・

「山泉曰く、沢村様は無職の生活と就職活動を楽しんでおられるご様子で、しかも働くとしても、ご自身が知られていない環境で働きたいようだと・・・基本、大手コンサル会社は沢村様のことはよくご存じで、しかも皆さん、一緒に働いたご経験があるとおっしゃってましたし、そう言ったところがご辞退された理由なのかなと、社内では一応の理解をしておりましたが・・・」
「ちなみにスカウトのあったコンサル会社って・・・」
「えぇとですね。モッキンゼー、ロスコン、PtC、バイン・・・いずれも、現在、面接いただいている会社に比べると年収は倍以上です。」
「はぁ・・・確かに年収だけ聞いても超好条件ですし、それを辞退するなんて普通に考えるともったいない話ですよね・・・ま、でも仕事選びなんて個人の自由じゃないですか?」
「まぁそうですけど・・・」
 全く状況が理解できないが、とりあえず強引に話を合わせた。

 山泉さんの取った行動が理解できないというか、私にオファーのあった超好条件スカウトを勝手に辞退して、山泉さん自身に何か得があるのだろうか?単なるいやがらせ?何のために?なにか恨みを買うようなことをしたのだろうか?いやスカウトがあったのは4月末、まだ一度しか会っていない頃だ・・・ではなぜ?

「・・・さま、・・わ・・・さわむ・・・・沢村様?・・・沢村様?」
「あぁ・・・はい、はいはい。」
「それでは次回のカウンセリング、明後日6月4日、金曜日の13時30分、お待ちしております。その際に、山泉の件もお返事ができるよう努力してみます。それと、パーソナプロセス&テクノロジーさんの二次面接頑張ってくださいね。最後まで気を引き締めて!」
「あ、はい・・ありがとうございます。それでは・・・失礼します。」
「失礼いたします。」

”カチャ・・・”


ふぅ・・・予想外の展開に頭が付いていかない・・・

ねたみ?・・・なんで?

良い人だと思っていたのに・・・なんで?

この事実が就職支援センターにバレたら、山泉さんは解雇されてしまうはずだ・・・そんなリスクを冒してまでなぜこんなことを?

考えても考えても理解が追い付かない・・・なんで?

・・・なんで?


■第47話へつづく


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