見出し画像

THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計

THIS IS SERVICE DESIGN THINKING.
Basics - Tools - Casesー領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計(スティックドーン、ヤコブ・シュナイダー 著)

1. サービスデザインとは

全てのビジネスが顧客へのサービスであるという考え方をもとに再定義すること。サービスの中身は、顧客の利用体験。顧客が求める価値観に合わせたデザインであり、経営戦略やマーケティングそのものである。

手法としては「問題の明示化」「解決案の模索」「プロトタイピング」「評価」というデザイン思考のアプローチをとる。

Atsushi Hasegawa

学際的なアプローチとしてのサービスデザイン

サービスデザインは新しいサービスを創造、または既存サービスを改良し、ユーザーにとって有益で使いやすく、サービス提供者・組織にとって効果的なサービスを実現するのに役立つ。

シュテファン・モーリッツ, 2005年

サービスデザインは企業が顧客のニーズを総合的、共感的に理解するためのホリスティック(全体的)な手法

フロンティアサービスデザイン, 2010年

サービスデザイン思考の5原則

1 ユーザー中心:サービスは顧客視点で
2 共創:プロセスにステークホルダーに参加を
3 インタラクションの連続性:相互関係をつなぐ
4 物的証拠:形のないサービスは有形に可視化
5 ホリスティック(全体的)な視点:全体に目を配る

マーケティングの発展

人々と繋がり価値を創出しようとするマーケティング分野にサービスデザインは重要な役割を果たす。現在のサービスデザインの軸は、人と人、人と物、人と企業、の間に生じる関係の価値や質の理解。

2. 多角的なサービスデザイン

・プロダクトデザイン
コンセプチュアル・プロダクトデザインはユーザー中心の設計、多様な質的調査、量的調査のアプローチ、スケッチやプロトタイピングによる視覚化など複数の理念を組み合わせてコンセプトを立てる手法。

・グラフィックデザイン
サービスを市場で成功させるには、グラフィックが与える印象と盛り込む情報を検証し適切なデザインが必要とされる

・インタラクションデザイン
サービス現場ではデジタルインタラクションが増えている。インターフェイスの「ディザイラビリティ(望ましさ)」を構成する要素として
1 ユーティリティ(実用性)
2ユーザビリティ(使いやすさ)
3 プレジャビリティ(楽しさ)

→インタラクションデザインの鍵として、利用頻度(進む、戻る、検索など)、連続性(順番に起こる行動)、重要度(重要な情報の提示)

・ソーシャルデザイン
デザインが社会の中で幅広く応用され重要な働きをする。変化し続ける社会のニーズに対してデザイン(プロダクトやプロセス)は誰に何を提供できるか。

・デザインとエスのグラフィ調査
プロジェクトに関わる様々な個人やコミュニティと共感的な対話を続けていく

3. サービスデザインのツール

・反復プロセス
探求、設計、再構成、実施の4つを繰り返す。サービスデザインの構造は反復型。

・AT-ONE法
Actor(関係者の役割の再編)
Touch point (顧客接点)
Offer(提供、ブランド)
Needs (顧客のニーズ)
Experience(顧客の体験)
上記5つのワークショップによって課題解決を探求する

・ステークホルダーマップ
・実世界でサービスを体験するサービスサファリ
・行動を観察するシャドーイング
・カスタマージャーニーマップ
・文脈的インタビュー(エスノグラフィ系技法)
・なぜなぜ5回 THE FIVE WHYS
・文化観測(日記を書いてもらう、動画をとってもらう)
・モバイルエスノグラフィ(スマホを渡してタッチポイントで記録)
文化観測の時は指示があるがこちらは自分のタイミング
・A Day In The Life(一日を書いてもらう)
・期待マップ
・ペルソナ
・What if分析:もし〜ならと言う質問をする
・デザインシナリオ:仮想のストーリーを動画や文章で作成
・ストーリーボード:連続的なシーンのスケッチ
・デスクトップウォークスルー:ミニチュアによる立体模型
・サービスプロトタイプ
・サービスステージング:舞台上での実演
・アジャイル開発
・共創
・顧客ライフサイクルマップ

4. サービスデザインを深く考える

・サービスデザイン思考にモチベーション心理学を取り入れる

モチベーション:人間行動に動機を与え、方向付けをするもの

個人と周囲の間に働く相互利益の仕組みと関係性の支配。モチベーションの働きを可視化して体型的に分析し、サービスデザインのメソッドに組み込む

・サービスデザイン研究(過去、現在、未来)

これまでは他のデザイン分野とのつながりを踏まえた上で、サービスデザイン独自の分野を主張するものだった。
近年では、マーケティングやリーダーシップ理論などの各種の実験的手法や考え方を取り入れるもの、特にマネジメント分野では注目された。またサービスデザイン独自の原則を探り出そうというもの、こちらはサービスデザインをシステムとして捉えて優れたサービス、製品を作ろうとするもの。

現在では、ツールやプロセスとしてのデザイン技法に関する研究。サービスデザインは歴史が浅く、基本的なツールは他分野から持ち込まれたものであり、特定の課題や要望に応じるための新しいツールの開発が論じられている。ただし、サービスデザインの事例研究は多いが学術的なアプローチはまだまだ少ない。

将来の展望は、研究の構造化、批評可能なものにする理論と手法の開発である。経験の浅いデザイナーがサービスデザインの知識を習得するためにも構造化が必要。

・サービスデザインとバイオフィリア(生命愛)

デザインとは物だけの問題なのか、多くの場合は有形物(机や椅子のような)を作り出すという根底がある。
サービスデザインはアーティファクト(人工物)を何らかのサービス行動を実践するべきものと捉えるので、そうなると概念的にも方法論的にも物理特性だけを考慮していては足りない。生きるための空間形作る「行動する哲学」、つまり生命への愛と考えられる。