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映画『ブロークバック・マウンテン(2005年)』 山で芽生えた同性愛、葛藤と愛おしさの連続

アメリカでは2005年、日本では2006年に公開

アカデミー賞やゴールデングローブ賞、
金獅子賞など数々の賞を総なめにした、


『ブロークバック・マウンテン』


.


昨夜、久しぶりに何度目かの視聴を終える



寡黙で時に暴力的な一面がある青年
イニス・デルマー〈ヒース・レジャー〉と、
陽気でユーモアに溢れた包容力のある青年
ジャック・ツイスト〈ジェイク・ギレンホール〉

仕事を求めていた二人は山の麓で出会い
羊飼いを任される中で
互いに予想もしなかった感情に直面、やがて愛が芽生える
二人と周囲の葛藤の数十年間が赤裸々に描かれている作品


以前書いていたgooブログにも感想を残しているけれど、
新たに2023年現在の感想を
ムービークリップ(映画のワンシーンを許可を取って、合法的に無料公開している組織)と共に
ネタバレ全開で綴っていく🖊





アクシデント

寡黙だったイニスは、ジャックと寝食を共にするうちに
どんどん心を開いて滑らかに会話をするようになる

ある夜、山という場所柄 冷え込みが増して
外で火に当たっていても震えながらうずくまるイニスを
少し離れたテントで休んでいたジャックが見かねて呼び寄せる

身を寄せ合い暖を取りながら目を瞑る二人、
すると突然ジャックがイニスの手を持って
自分の股間に持っていき
驚いたイニスはジャックと取っ組み合い寸前に

流れでまるで動物の交尾のようにイニスがジャックをバックで犯す…


このシーン、初見時 本当に衝撃的だった

なぜジャックは大胆な行動に出たのか、
なぜ激しく拒否を示したイニスの方がスイッチ入ったのか、
最初はまったく理解が追いつかず
始まりはただアクシデント的に性欲を解消するだけの関係から始まったんだなと


ホモじゃない、オレだって

そんなことがあり、気まずい朝を迎える二人

羊飼いの仕事に戻ったり 互いに頭を冷やす中で
「俺はホモじゃない」「あれは一回きりだ」と
確認し合うシーンがある


でもまた次の夜にはテントで休んでいるジャックの元へ イニスが紳士的に距離を詰めていき、
イニス「すまない…」
ジャック「いいんだ、いいんだよ」
と囁くように会話をして、
ロマンティックにキスをし体を重ねる…

↓こちらがそのシーン


このテントと、後のモーテルでのシーンの
ジェイク・ギレンホールの眼差しが本当に素晴らしい
温かくて、包容力の塊なのだ
イニスに夢中なんだなということが
ひしひしと表情で伝わってくる

始まりは動物的だった分、
ちゃんと同意を取って癒やし合う二人がとても素敵に見えた
性欲に愛情が追いついた瞬間に感じた


イニスのトラウマ

イニスは少年時代、ボコボコにされた上に
イチモツを縛り付けられ引き摺り回された遺体を父親に見せられたことがある

おそらく同性愛者の男性二人が牧場を経営してたことをイニスの父親やその仲間は嫌悪し、
こういう奴らはこうなるぞと子供に教育したと…


そういうバックグラウンドがイニスにはある為、
羊飼いの仕事を終えて別れる時に
ジャックと生きる道ではなく
女性と結婚する道へと進まざるを得なかったんだと思う

時代的に同性愛者が迫害されていた頃だったのも手伝って
自身の性を謳歌して生きられる社会じゃなかったことが伝わった


↓トラウマとジャックへの気持ちが混ざり合い、
ひっそり泣き崩れる姿は何度観ても胸に迫る



夫が男と激しくキスをしていた

後ろ髪引かれる形で別れた二人、
イニスは アルマ〈ミシェル・ウィリアムズ〉と結婚し二人の子供を
ジャックは ラリーン〈アン・ハサウェイ〉と結婚し一人の子供の父親になっていた

とても忘れることができない恋愛を経験したこともあり、
イニスとジャックは自分の気持ちを押し殺し続ける結婚生活に疲れていた


やがて絵ハガキで連絡を取り合い
4年ぶりに再会して激しくキスし合う二人

その光景を目撃したイニスの妻 アルマの表情はあまりに印象的


そして夫の変化に気づきながらも本音を飲み込み
ジャックとふたりで出かけていく姿を背に
子供を抱きしめながら静かに涙するアルマの表情が…
このシーンはなぜか毎回つられて泣いてしまう


私は恋愛経験もなく独身で子どももいない、
それなのに何故かアルマの表情・気持ちが心に刺さってしょうがない

共感じゃないとすると、
この涙は一体なんの涙なんだろう?
同じ女だから…?

まあそれだけミシェル・ウィリアムズの演技力が凄まじいってことなのかもしれない


女性たちの涙

特にイニスは女性たちを泣かせてばかりいる

まず妻のアルマ、娘、そしてバーで出会った女性
みんなイニスの言動により悲しい顔をさせたり涙している
観ていてとても胸が痛んだ


でも不思議とイニスにあまり怒りがわいてこないのは
おそらく彼の少年時代のトラウマや孤独を知っているからだと思う

トラウマがあるからって言っていいことといけないことはあるけれど、
彼もアクシデント的にジャックの行動で変化し
激しく葛藤しながら生きる姿が印象的だから
人間って傷つけ合ってしまうものなんだなと
不器用な人間臭い部分が愛おしく感じる


ただ、会いたい

4年ぶりの再会を果たしてから逢瀬を重ねる二人

きまって山で過ごし、語らい、体を重ねる


しかし互いに家族がいる身
イニスはアルマと離婚して養育費を稼がなきゃならないので、しばらく会えなくなると切り出す

ジャックはそんなの耐えられないと気持ちを爆発させ、
さらに勢いでメキシコで男を買ったことを匂わせると
イニスは激しく嫉妬し、泣き崩れ、 
ジャックはそんなイニスを抱きしめる…


正直この物語に登場する女性たちの気持ちに感情移入しやすい方は
二人に対して冷めた気持ちになるシーンかも…

本当は好きな男がいるのにそれを隠して結婚して
きっと必死で子ども産んで、育児して、
カツカツで生活している女性(特にアルマ)の姿を見せられた分、
この二人は現実逃避して何をやってるんだろうって
身勝手すぎない?と


でもイニスとジャックにとっては真剣な悩みで
とても苦しいシーンだとも思った


血のついたシャツ

別れはあまりに突然だった

ジャックの訃報を知り、彼の実家へ向かうイニス
この時にイニスは初めてジャックの両親と会って会話を交わす


ジャックが過ごした部屋のクローゼットには
かつて共に深く思い出を刻んだ場所である
〈ブロークバック・マウンテン〉で殴り合った際に付着した血のついたシャツが かけられていた

殴り合いになる前の、カーボーイ遊びするところ地味に好き


本題に戻って・・・

シャツを手に取ったイニスは
まるでジャックにするように愛おしそうにシャツを抱きしめる…



もう、ただただ、涙
取り乱すように泣きじゃくるでもなく
静かにジャックとの思い出を噛みしめるように
血のついたシャツを胸に当てる姿、
ヒース・レジャーの表情が絶品

名シーン中の名シーンだと思ってる




吹き替えでも、字幕でも

これまで吹き替えでも字幕でも何度も観ている

今回は吹き替えで観たので、その感想も


イニス役 森川智之

イニス〈ヒース・レジャー〉の声は
森川智之さんが担当されている

イニスは最初寡黙で心を開かない状態の時は
口を閉じ気味に喋っている、
それを森川さんが違和感なく喋りを合わせられていて凄いなと思った

話が進むにつれ、ジャックに心を開くのと比例して口を開いて喋るようになる変化もお見事だった


ジャック役 東地宏樹

ジャック〈ジェイク・ギレンホール〉の声は
東地宏樹さんが担当されている

ジャックは基本的に陽気でユーモアがあるキャラクターなので
そのお茶目さを存分に声で表現されている一方で、
体を重ねる前後、リラックスしてる時のジャックの包容力あるやさしい声も素敵だった


ラリーン役 甲斐田裕子

ラリーン〈アン・ハサウェイ〉の声は
甲斐田裕子さんが担当されている

ラリーンは活発でさっぱりしたキャラクターだったのでピッタリのお声だったし、
特にイニスとの電話のシーンがぐっときた


アルマ役 小林さやか

アルマ〈ミシェル・ウィリアムズ〉の声は
小林さやかさんが担当されている

夫の裏切り、複雑な感情を飲み込み続けたのちに、
一気に感情を爆発させるシーンが迫力満点だった



Movie clips 公式切り抜き(全10クリップ)

↓まとめました



きっと有名も有名な作品なので視聴されたことがある方が多いと思う

もしこの記事をここまで読んでくださった方で
観たことがないならば、
とてもオススメしたい恋愛&人間ドラマです🎥


吹き替え版

※購入は1,000円、レンタルは500円

字幕版

購入は1,000円、レンタルは500円

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