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自分の臨床道;with『NARUTO』

私は色々と好きなマンガがある。本も、アニメも、音楽も、芸術も・・・自分の世界観を豊かにしてくれる。自分の道だけを歩いていると、いつしか同じ風景をずっと眺めていて、大切な時間、大切な人、大切なものを見失ってしまう。当たり前に明日がきて、自分が死ぬまでその時間が延々に続くような感覚。でも実際は、明日なんか誰にも保障されていない。

そんな当たり前のことに気づくために、自分にとって、カルチャーはとても大事な存在だ。カルチャーに触れるために、国内外問わず一人旅に行くことも大事な時間にしているが、今は新型コロナウイルスの猛威のせいで、行けない。そこで、臨床家として生きている世界線を「臨床道」と名づけ、『NARUTO』の「忍道」と掛け合わせて少し語ってみたい。


臨床道×忍道

『NARUTO』に限らず、忍者系のマンガは「忍道」というのが1つのテーマになっている。それ即ち、忍びとしての生き方、価値観のことだ。主人公のナルトが所属する第七班の担当上忍となったカカシ先生はこんなことを、ナルト、サスケ、サクラに教えている。

忍びの世界でルールや掟を守れないやつはクズ呼ばわりされる。
けどな仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ。

これはカカシ先生が父を亡くし、その後、自分の班の仲間を大切な友を亡くして至った忍道だ。この言葉は、後のストーリーにも響いてくる。うちは一族として、実の兄と里を憎んだサスケは復讐にかられ、里を抜けてしまう。サスケは孤独のなかで、ナルトが伸ばしていた手を最後の最後まで取れない。”仲間”を大切にすること、”憎しみ”という気持ちから生まれるものとは?など、戦いが続くストーリーのなかで丁寧に描かれているのも『NARUTO』の魅力の1つだろう。

ナルトは出来も悪く、里から煙たがれる、いや明らかに差別される存在だった。親も亡くし、彼はずっと独りだった。彼のなかには九尾という力が封印されており、”化け物”として恐れられていた。彼は異形な存在なのだ。
誰にも相手にされないなか、ナルトは幼少期から「火影になる!」と啖呵を切っていた。彼は、出会った人々を孤独から救い、時に大切な友や師を亡くして、成長していく。その彼のセリフで最も心に残るのがこの一言だ。

まっすぐ自分の言葉は曲げねぇ。それが俺の忍道だ

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ナルトは作品の中で、このセリフをずっと言う。このセリフは他の仲間にも徐々に影響を与えていくし、ナルトはこのセリフを貫いて、最終的には、火影の座に就く。里のみんなにも認められる立派なリーダーとして・・・。

私は思う。孤独が人を成長させ、自分の弱さと対峙し続けることで傲慢さを捨てられると。私も自分の言葉は曲げない主義だ。それは人としても、臨床家としても、そうだと思う。生き方として、それしかできないと言ってもいいのかもしれない。要するに不器用なのだ。ただ、どんなに傷ついても、己を曲げずに立ち上がることで、前に一歩進めてきたのも事実だ。

ユング派の資格を取ろうと思っていたり、実際にイギリスに行って学びたいと思っていた。実際問題の資金面の問題や、タイミングの問題で計画は保留中だが・・・。自分の知識やスキル向上のために、今まで色々と積み重ねてきた。仕事上、後進に教えることはずっとしていたが、ここ1,2年は本当に伝えたいと思える人にしか伝えなくなっていた。指導から距離を置いていた。何かが違うような気がしていたからだ・・・。

ただ、最近は違うような発想も生まれている。資格を取ることが全てではなく、純粋に自分が託されてきたものを伝えていくことができないのかと思い始めたのだ。

俺たちも託される側から、託す側にならねーと。

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唯一と言ってもいいかもしれない。子どもの頃からナルトを差別せずに、普通に接してきたシカマルが、自分の師を失ってから、ナルトに言ったセリフだ。

この言葉が、なんとなく頭に浮かんだ。”託す側”という言葉・・・。

そう、私がやりたかったことは指導ではない。上から下に教える、下の自主性や主体性が損なわれるようなものではなく・・・。自分が、クライエントや様々な場所で“託されてきた”ことを、”託す(伝える)”こと、臨床家としての主体性の成長を促すような関わり方をしたかったんだなと気づいた。それは指導っていうシステムのなかでは、不可能な作業なのでは・・・と私は考えている。

私の臨床道は「Conqer yourself rather than the world...」である。世界を征服するな、自分を律せよ。自分も、相手へのリスペクトも含め、どんな時も人に接したいし、フラットな関係性のなかで言い合えることが大切だと感じる。フラットすぎることを時に非難されるが、こんなやつが1人ぐらいいてもいいでしょ?

賢いっていうのがそういう事なら、俺は一生バカでいい。

っていうナルトのセリフと同じ。私も一生バカでいい。大人になれなくてもいい。そのスタイルを貫き通すためには、組織に属さず、個人でサービスを提供していくしかないんだと感じている。コンサルテーションという言葉ではなく、いずれ私らしく名付けたいと思うが、心理だけではなく、教員や看護師、保健師など近接領域の専門家の相談に乗るという、オンラインサービスを始めたのはそういう想いがあったからだ。

口伝ではないが・・・エビデンスも大事だが、臨床の知も大切で、経験者から知れないこともたくさんある「臨床道」。今日は次のクシナ(ナルト母)の言葉で締めくくりたい。

これから辛い事… 苦しい事も… たくさんある… 自分を… ちゃんと持って…! そして夢をちゃんと持って… そして夢を叶えようとする自信を持って…

追記:『NARUTO』の主人公ナルトはセラピストなんじゃないかと思う。物語のなかには差別・偏見、それを受けた側の憎悪、組織のなかでのたくらみに翻弄される人々の戦いが描かれている。ナルトはそれを彼らしく見事に突破してゆき、仲間、世界を癒していった。ナルトの息子が主人公の『BORUTO』もおすすめ。

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