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異人館街に建つ白亜の洋館 旧ムーア邸×苺のミルフィーユを堪能【兵庫県神戸】

私達の身の回りに当たり前にあって、日々の生活を豊かにしてくれるもの、それは建築と甘いもの。
このnoteでは、建築好きの私 やま菜がおすすめしたい建築と甘いものを紹介していきます。

今回訪れたのは兵庫県神戸市にある北野エリア。
明治の開港以来、外国人の居留地としても親しまれてきたこの地に、とっておきの建築と甘いものスポットがある。


1.神戸の北野異人館街に建つ洋館を訪問

今日訪れたのは、異人館街として知られる神戸北野町エリアに建つ旧ムーア邸だ。

このムーア邸は、1898年にアメリカ人貿易商であったムーア氏の邸宅として建てられた洋館で長らく一般公開はされていなかったが、2020年にカフェや結婚式場としてリニューアルオープンしたということで、早速訪れてきた。

神戸の異人館街といえば異国情緒溢れる古き洋館が立ち並ぶ人気の観光地だが、明治時代から昭和初期にかけては今よりもずっと多い200棟あまりの洋館が建ち並んでいたというから驚きだ。

明治以降、ここ神戸には多くの外国人が暮らすことになるが、限られた居住地域の中で、南に居留地や神戸港が望める山手の高台は特に人気のエリアであった。

その後、これらの異人館は戦禍や災害による焼失や開発による建替えによって数を減らしたが、1970年代以降になるとその価値が再評価されはじめ、保存・活用が本格化していくことになる。

持ち主を幾度か変えた異人館も多くあり、1970年代には神戸市が風見鶏の館や萌黄の館を借り上げて公開したり、1980年には文化財保護法の伝統的建造物群保存地区の指定を受け、保存や修復が進んできた背景もある。

そんな異人館街において、今回訪れたムーア邸は、長らくムーア氏の御子息によって住まい継がれてきた邸宅であり、一般の人が立ち入れるようになったのはごく最近のことだ。

階段を上がった先の高台に建つ白い下見板張りの邸宅は、100年以上前に建てられたとは思えないくらいの輝きと気品を纏っていて、階段を上ると徐々に気分が高まってくるのを感じた。

2.明治時代の趣を感じる洋館でいただく絶品のミルフィーユ

太陽の光を反射する白亜の外観が印象的だったが、近付いてみると遠目でみるより小さな印象を受けるのも面白い。

ハーブが生い茂る庭の緑とのコントラストが鮮やかな邸宅のエントランスに立つと、人のスケールにフィットする感覚を覚える。

カフェは、邸宅を入ってすぐのサンルームを含んだ一角に設えられていて、大きな開口から降り注ぐたっぷりの自然光庭の緑がとても気持ちがいい。

歴史を積み重ねた近代建築と、おしゃれでスタイリッシュなカフェが両立し、自然とそこにあるように感じられる素敵な空間だ。

今回頂いたのは、看板メニューでもあるこちらの苺のミルフィーユ。

東京銀座の老舗店「銀座マキシム・ド・パリ」からレシピを受け継いだミルフィーユは、クリームの甘味と苺の酸味のコントラストがとても鮮やかだ。

なめらかなクリームとサクサクの生地の相性も抜群。周りには香ばしいアーモンドが散りばめられていて、味と食感のアクセントになっているのも素敵だ。

懐かしいけれど新しい絶品のミルフィーユは、まさにこの建築を表しているようにも感じられる。

窓から見える庭の緑を堪能しながら、100年以上前の神戸の風景を想像するとても楽しい体験となった。

【旧ムーア邸 施設情報】
設計:J.R.ドレウェル夫人
住所:兵庫県神戸市中央区北野町2-9-3
行き方:三ノ宮駅から歩いて約15分
竣工:明治31年
営業時間:11:00~17:00
定休日:火曜日
その他:北野町山本通伝統的建造物

ちなみに旧ムーア邸のすぐ近くには、ムーア邸の設計を手掛けたJ.R.ドレウェル夫人が暮らしていたラインの館(旧ドレウェル邸)もあるので、ムーア邸を訪れた際には是非立ち寄ってみてほしい。

下見板の水平ラインにちなんで「ラインの館」と名づけられた邸宅は、大正時代に建てられたもので、北野異人館の洋館が持つ特徴がとてもよく現れている建物だ。

現在は神戸市によって補修と改修が行われ、入館無料の展示スペースや観光案内所・ショップとして、誰でも気軽に入れて展示と建築を堪能できる。

【ラインの館(旧ドレウェル邸)施設情報】
住所:兵庫県神戸市中央区北野町2-10-24
行き方:三ノ宮駅から歩いて約15分
竣工:大正4年
開館時間:9:00~18:00
休館日:2月・6月の第3木曜日
入館料:無料

3.あわせて訪れたいおススメのグルメ建築

せっかくなので、旧ムーア邸とあわせて訪れたい神戸のグルメ近代建築についても少し紹介したい。(神戸には素敵な近代建築が多いが、ここでは食事もできるおススメ建築ととして2建築を紹介する)

旧ムーア邸から歩いて5分ほどのところにあるスターバックスコーヒー神戸北野異人館店は、1907年に建てられたM.J.シェー邸を改修してつくられたスターバックスの店舗だ。
旧M.J.シェー邸は北野物語館として親しまれてきた建物だったが阪神・淡路大震災で倒壊し、この後現在の地にて移築・復原が行われた。

登録有形文化財の建物を利用したスターバックスの店舗としては日本初の試みで、歴史ある本格的な洋館でスターバックスのドリンクやスイーツを堪能できる注目のスポットとなっている。

【スターバックスコーヒー神戸北野異人館店 施設情報】
改修設計:スターバックスコーヒージャパン
住所:兵庫県神戸市中央区北野町3-1-31
行き方:三ノ宮駅から歩いて約10分
竣工:明治40年(平成13年移築・復原)
その他:登録有形文化財

続いて紹介する旧神戸居留地十五番館は、三ノ宮駅の南側に広がる旧居留地の中心エリアに建てられた元アメリカ合衆国の領事館だ。
この建物も阪神・淡路大震災で一度全壊したものの1998年に修復がなされている。

正面左右に設けられた三角形のペディメント(破風)やベランダがトレードマークの建築は、コロニアルスタイルの特徴がよく表れていて、貴重で見応え抜群のデザインが随所に見られるのが建築ファンとしてはたまらない。
何度かリニューアルされつつも、当時の面影が残る建物でとっておきの食事やアフタヌーンティーを楽しむことができるスポットとして神戸のランドマークのひとつとなっている。

【旧神戸居留地十五番館 施設情報】
住所:兵庫県神戸市中央区浪花町15
行き方:三ノ宮駅から歩いて約10分
竣工:明治13年頃(平成10年改修)
その他:重要文化財

今回は、兵庫県の北野異人館街の建築と甘いものを紹介しました。
どの建築も、素晴らしい体験と味を楽しめる名建築なので、皆さんも機会があれば是非訪れてみて下さいね。

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