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広報・PRを外注するときのポイント<企業がビジネス相性を見極める質問集つき> VOL.4

中小企業では広報PRを兼任で配置されているところもあるかと思います。その一方で、フリーランスという働き方が広がり、外注を考えている企業もあるかと思います。

そもそも、広報に求められる役割は企業によって異なることが多いため、正社員でも企業と候補者のマッチングが難しく、業務委託となるとさらに考えなければならない要素が増えます。それは、仕事量が流動的であることと、業務内容も上流から下流まであることに起因しています。

また、広報PRはコミュニケーション能力が高く、愛想が良い人も多いため
最初は感じの良い人と高評価していたものの、長期的な付き合いになると見えてくる問題点があるというのもとてもよく聞きます(それは双方感じるところだと思います)。表面的なコミュニケーションは大事なポジションですが、長いお付き合いとなると建設的に考えたいですね。

まず、企業側には自分たちが広報PRの人たちに何を提供して欲しいのか、長期的(短くても半年間)な展望をまとめることをおすすめします。例えば、記者発表会を1回、プレスリリースを3回、オウンドメディアの更新を6回、メディアキャラバンを6社以上など。「広報をやってほしい」「知名度を上げてほしい」といったふんわりとした要望だと、フィーリングで決めがちになったり、業務がはっきりしている他社より、プライオリティを下につけられてしまうこともあります。

それでもフリーランス広報PR側が、ふんわりした要望から、どんな活動をするのかを明確化してコミュニケーションを図ろうとするのであれば、良い方向へ一緒に向かえる可能性はあります。ただこのタイプの方は、自分とクライアントを対等なパートナーシップと考えるタイプが多いことを、心に留めておくことが必要でしょう。


4.業務委託で広報・PRを継続的にお願いしたい

未経験者や経験が浅い方にあえてお願いをするということはここでは考慮しない前提で話を進めていきます。

4-1.これまでの経験の確認

まず、業務内容と業界知識の習熟度は確認しなければならないところです。また業務内容は、業界が違うとギャップが生じやすくなります。それゆえ、業務内容>業界知識と必ずしも言えるわけではなく、業界未経験で採用した場合はすれ違いが増える可能性が高くなります。可能であれば、業界経験者の方が良いと思います。

例えば、記者発表会を例に説明します。
記者発表会は、IT業界ではパンデミック以前よりライブ配信など取り入れるところが多くありましたが、それ以外の業界では会場を借りて、オフラインで行うことが当たり前でありました。IT系のPRはITリテラシーが高い方が多いです。
また、食品の記者発表会であれば、記者の方に試食をしていただいたり、おみやげに渡したり、ということも通例的に行われていますが、他業界の広報PRは、その発想もない可能性があります。渡すことはできても、その後のフォローなど、何をすれば良いかもわからない可能性があります。

だから最初の質問は、これまでの経験をこの仕事に生かせるのかを確認するための質問と、異業界からの挑戦の場合はそのギャップを埋められるのかを見るのが良いと思います。

  • これまでのあなたのご経験を、この仕事にどのように生かし、また私たちが気がついていない点などありそうでしたらご提案いただけますか?

  • (異業種からの挑戦の場合)前の業界に馴染むために、努力されたことがあったら教えてください。また、新しく挑戦するこの業界で、あなた自身が努力すべきことだと考えていることなどがありましたら教えてください。弊社でも協力したいと思っています。

一つ目の質問は、経験の有無より、経験したことをどのように発展させるのかを見る質問です。例えば、「前職でプレスリリースも書いていますし、記者発表会も経験しているので、それを御社で生かしたいです」という方は、一度身につけたノウハウを、ただ繰り返し使う人と捉えられるということです。それより、「前職でプレスリリースを書いてきて、工夫をすればより記者から連絡をいただきやすいことがわかりました。そこで記者とのリレーションもできたので、前職より、クオリティが高いプレスリリースを書けると思います」と説明される広報PRの方が、業務上柔軟に対応できるタイプの性格と考えられませんか?

同じことを繰り返したい人に、仕事における柔軟性を求めるのは一般的に難しく、自分の頭で考える習慣は欠けている可能性はあります。これは、どの職種でもあるかと思いますが、人を相手にする職務では、相手の出方によって、次の手を変えることがよくあります。例えば100通りの顧客を相手にするのに、10パターン経験したら残りは自分で考えるタイプの人と、100パターンを経験、教わらないと動けない人がいるのです。後者のような人にお願いすると、過ぎていく時間と共に、あまり仕事を任せられないことがに見えてくるのではないでしょうか。

二つ目の質問についてです。一つの業界だけにいると、その業界の特殊性はわからないこともあるかと思います。そこからの転身となると、前の業界の常識をそのまま持ち込む可能性があることに注意しましょう。ただそれはスクリーニングをする企業側担当者も同じ注意が必要です。

業界特有の専門用語、文化・習慣、メディアとの対応などを教えられる人がいるのなら良いのですが、自走して欲しい場合はギャップを受け止め、理解し、埋めることを自らできることは必須ですよね。この質問は、大なり小なりなり「ギャップがある」ことのお知らせでもあり、お互いそれでも前向きになれるのかを、ミニマムの確認ができます。また、問題解決力も必要な仕事なので、回答でどのくらいの問題解決力を持ち合わせていそうなのかに注目してみてください。

4-2.労働時間の使い方を両者合意できるか

次に、労働時間の工数について、ボタンのかけ違いはよく生じます。例えば、実務をしたことがない企業発注側からすると「プレスリリースは2時間くらいで書けるもの」と思っていたのに、実際は15時間くらいかかると言われた、というようなことです。もっと細かく言うと、プレスリリースでも内容によって書くことに費やす時間は全く異なります。

月額などの定額で契約する場合にも、時給ベースで契約する場合にも、契約締結前にだいたいの業務量を共通の認識を持つことは、締結後のストレスを減らす一つの要素です。そこで、次の質問をしてみてください。

  • プレスリリースを1本書くのに、費やす時間をだいたいで良いので教えてください。

これは、ストレートに何時間かかるのかを聞いている質問に見えますが、見るべきところは違います。前述の通り、内容によってプレスリリースを書くのに費やす時間は異なります。例えば製菓メーカーを例にとると、すでにいちご味のチョコレートを販売していて、「新しく抹茶味のチョコレートを発売する」という主旨のプレスリリースと、「47都道府県別抹茶チョコレート発売数ランキング」という主旨のプレスリリースでは、文章の構成や必要な要素が違います。前例もなくゼロから書くことになると、その分時間はかかります。この、契約後も発生するであろう費やす時間に関する説明を、円滑にコミュニケーションできるのかを試すための質問になります。

VOL.4 所感

今回、起こりやすい「すれ違い」を書こうと思ったのですが、内容が膨大になってしまうため、次回で書いてみたいと思います。

企業とフリーランスが長いお付き合いをすることは、本当に素晴らしいし双方良い機会だと思う一方、最近難しさも見えてきています。日本のDXの遅れもそうですが、新しいポジションを迎えるのに何もわかっていない人が指示する構造は前へ進みにくいのが現実です。フリーランスをもう少し別の見方をできるようになることを願っています。

WEBサイトをリニューアルしました。
https://arcelto.com


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