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吾輩は猫ではない。名前はもうある。

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南方熊楠、鼠の婚礼に参列する事(小説・十二支考①)

「大正十一年出板、永尾竜造君の『支那民俗誌』上に一月七日支那人が鼠の嫁入りを祝う事を載す。直隷の呉県では鼠娶婦。山東の臨邑県では鼠忌という。江南の懐寧県では、豆、粟、粳米等を炒って室隅に擲って鼠に食わしめ、炒雑虫(虫焼き)といい、この晩は鼠の事を一切口外せず、直隷永平府地方では、この夜鼠が集って宴会するから燈火を付けて邪魔しては年中祟らるといい、直隷の元氏県より陜西の高州辺へ掛けては、婦女鼠の妨げをせぬよう皆家を空しゅうして門の方に出づ。家にいて邪魔をすると仇討ちに衣類を噛ら

    • プラネテス第2話「夢のような」

      ① 「ハチマキ編」第1話 第1話ではタナベを主人公に、彼女の動機とキャラクター、そして課題(彼女の愛の「薄っぺらさ」)が示されるとともに、彼女を取り巻く友人たちが描かれていた。  第2話では視点がハチマキに移り、同じように動機とキャラクター、そして課題(叶うはずのない夢と向き合うにはどうすればよいか?)が示され、そして、彼を取り巻く友人たち、特に、後に非常にストーリー上重要な役割を担うチェンシンが登場する。  そういう意味では、この第1話と第2話は対になっている。このアニメ

      • プラネテス第1話「大気の外で」

         名作アニメ「プラネテス」の地上波での再放送が始まったらしい。この機会に全話観返してみようと思う。  ということで、第1話「大気の外で」。脚本の大河内一楼か誰かが、インタビューで「プラネテスの第1話には、プラネテスのエッセンスがすべて詰まっている」的な話をしていたのを覚えている。気がする。  正直なところ、プラネテスに一番ハマっていた中高生のころ、第1話の印象はかなりあっさりしたものだった。けれど、改めて観てみると、ドタバタコメディ要素、タナベv.s.ハチマキ、テクノーラの

        • 鴨東物怪録5「祭」

          ( 前 → https://note.com/arbiter_pete/n/n439963b1200b ) 呉竹のよよにあふひの祭かな  三浦樗良  世の中には、二種類の大学生が存在する。一つは、四月には心機一転勉学に精を出そうとするも、ゴールデンウィークという高い壁に阻まれ、ひと月後には挫折している大学生。もう一つは、四月すらまともに講義に出ない大学生である。しかし、たとえ後者のように講義に顔は出さずとも、学内をうろついていたりはするのが、大学生だったりもする。  例

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          鴨東物怪録4「目借どき」

          ( 前 → https://note.com/arbiter_pete/n/ne308590228d1 ) 顔拭いて顔細りけり目借どき  岸田稚  春眠暁を覚えずと言うが、季節を問わず二日酔いに朝は訪れない。となると、春の二日酔いには昼さえやってこない。意識を取り戻したときには、短針はすでに右上を指している。  そういったわけで、目覚めたときにはとうに昼を過ぎていた。  どこにいるのか把握するのにかなり時間がかかったが、ここはどうやら岩倉の友人宅のようだ。自分の他にも数名

          鴨東物怪録4「目借どき」

          鴨東物怪録3「流し雛」

          ( 前 → https://note.com/arbiter_pete/n/nd5719e33f042 ) 流し雛堰落つるとき立ちにけり  鈴木花蓑  呼び出されて表へ出ると、大家の老婆が、手のひら大の丸い藁を手に、門前で待っていた。  藁の中央には、かろうじて一対の男女だということが分かるシンプルな人形(ひとがた)が載っている。大家曰く、去年の雛祭りの日に下鴨さんで買った雛人形らしい。家の穢れを引き受けていただいた後、一年後に川へお流しするものだそうだ。そして、今日がそ

          鴨東物怪録3「流し雛」

          鴨東物怪録2「節分」

          ( 前 → https://note.com/arbiter_pete/n/n89e6d7917755 ) 節分の宵の小門をくぐりけり   杉田久女  諷詠館に越してから一月も経たないのに、その間に不思議なことが立て続けに起こっている。そこで、大家の老婆に相談したところ、馴染みの霊媒師を紹介してくれるという話になった。  果たして信用してよいものか疑問ではあったが、霊媒師というのがどんなものか興味もあったので、一度お祓いをお願いしてみることにした。 ◆  霊媒師が来る

          鴨東物怪録2「節分」

          南方熊楠、牛王符を焼いて飲み干す事(小説・十二支考②)

          ( 前 → https://note.com/arbiter_pete/n/n0543d0931f8f ) 「予は熊野牛王の外の牛王を見たことないゆえ、何とも言えぬが、熊野の牛王は幼時たびたび見もすれば、小学校で紛失品あるごとに牛王を呑ますと威されたので、その概略の容体を覚えおる。烏を何羽点じあったか記憶せぬが、まずは『和漢三才図会』に書いた通りのものだった。盗人などを検出するには、これを焼いて灰とし水で服むと、熊野の社におる烏が焼いた数だけ死ぬ。その罰が有罪の本人に中って

          南方熊楠、牛王符を焼いて飲み干す事(小説・十二支考②)

          鴨東物怪録1「寒の入り」

          抽斗の重きを寒の入りとせり   森賀まり  喧嘩をして家を出たのだから、贅沢を言っていられる立場ではないのは分かっていた。しかし、まさか空調もない下宿屋に厄介になるとは思わなかった。  それは、地震があれば真っ先にぺしゃんこになることは間違いない、家賃三万管理費無しと立地の割に手頃なのも頷ける外観の物件だった。しかし、冬休みのうちに越してしまいたかったのと、不動産屋からの強い勧めで、その日のうちに契約を決めてしまった。  名を諷詠館という。大層な名ではあるが昔ながらの下

          鴨東物怪録1「寒の入り」