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プラネテス第2話「夢のような」


① 「ハチマキ編」第1話

 第1話ではタナベを主人公に、彼女の動機とキャラクター、そして課題(彼女の愛の「薄っぺらさ」)が示されるとともに、彼女を取り巻く友人たちが描かれていた。
 第2話では視点がハチマキに移り、同じように動機とキャラクター、そして課題(叶うはずのない夢と向き合うにはどうすればよいか?)が示され、そして、彼を取り巻く友人たち、特に、後に非常にストーリー上重要な役割を担うチェンシンが登場する。
 そういう意味では、この第1話と第2話は対になっている。このアニメはここから、タナベとハチマキ、二人の主人公の葛藤と成長をパラレルに描いていくわけだけれど、いわば「ハチマキ編」の第1話とも言うべき回がこの第2話だ。

② 「夢を叶えるって言ったってなあ!」

 アニメ版タナベが等身大の新入社員(第1話では、夜9時台のドラマに登場する、ひたむきでドジな新入社員感が強いけれど)であるように、アニメ版ハチマキは、原作ハチマキのように、夢を追い、自省的で、少し情緒不安定な側面もあるけれど、基本的には、等身大の青年になっている。
 そんな彼には夢があって、マイ宇宙船を買いたいと思っている。しかし、このアニメの世界観でも、宇宙船はべらぼうに高いものらしく、たとえ宇宙飛行士とはいえ、一介のサラリーマンに過ぎないハチマキにはとてもじゃないが手が出ない。
 そこで、ハチマキは「本当は夢を諦めかけているけれど、そんな自分を認められないでいる」という状態に陥っている。入社3年。「もともと叶わない夢だろうと思っていたけれど、やっぱり本当に無理らしい」と気付き始める、リアルな年代である。その上、同期のチェンシンは、自分と違って夢に向かって一歩前進している。
 「そろそろ現実を見ないといけないんじゃないか……」そんな予感がハチマキを苦しめ、ナーバスにする。

③ 「ゆっくりでいい。ゆっくり、ゆっくりだ」

 そんなハチマキが、新入社員の頃に失敗したミッションに成功し、「3年の間に何も変わっていないわけじゃない」と、僅かな自信を取り戻すのが第2話のメインストーリーだ。
 しかも、出世したチェンシンに対して、夢を応援したい気持ちと成功を妬んでしまう感情が入り混じっていたところに、「チェンシンを助ける」ミッションをこなすことで、夢を追うことに対する感情がポジティブに落ち着く、という要素もある。
 その上、3年前は自分の「質量の中心を射抜く」ことが出来なかったために失敗したハチマキが、今ではそれを新入りのタナベに教える立場になっていて、最後には、自分どころか、どデカい上に回転するデブリの「質量の中心を射抜く」ことに成功する。
 そして、そのミッションを成功させたコツが「焦らないこと」なのだ。親友の命のかかったタイムリミットの迫る中、焦らずにピンポイントでタイミングを合わせたことで、ハチマキのミッションが成功する。「目の前のミッションに焦らない」ことに自信を付けたハチマキが「大きな夢に対しても焦らない」姿勢を身に着ける、という展開は実に美しい。
 第1話もそうだったけれど、とにかく要素がてんこもりで、それをうまくまとめられているのが、このアニメの素晴らしい特徴の一つだと思う。

④ 「もっと遠くへ、もっと速く」

 こうして、ここでは「夢は遠いけれど、焦る必要はないから、少しずつ経験と実績を積み上げていこう」という結論に落ち着く。
 けれど、「叶うはずのない夢を追う」というハードルはやはり大きい。第2話は大きな波が来る前の小さな波に過ぎなかった、ということが後々分かってくる。
 そもそも、アニメのEDで描かれているように、彼の初期衝動は、宇宙船というモノではなくて、「もっと遠くへ、もっと速く」という純粋なものであって、「宇宙船を買いたい」というのは、実はその表面的なあらわれに過ぎない。
 いずれにせよ、ハチマキの物語における導入として、この第2話は非常に象徴的で、まさに「ハチマキ編」第1話にふさわしい作りになっている。

エンディング前の一言
ユーリ「あの、今回の始末書、誰が書くんでしょうか……」

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