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【極力ネタバレ回避】59年前の激闘『キングコング対ゴジラ』とはどんな映画だったのか?

 『ゴジラvsコング』の公式予告が1/25に公開された。

 再生回数は現時点(1/30)で軽く4000万回を超えており、まさに全世界待望の映像だったようだ。既にストーリーの考察動画も投稿されていて、確かにそこはとても気になるが、個人的に一番気になるのは日本での封切日。
 東宝がもしも「HBO Maxのサービスが無い海外の国では3/26に封切」の通りにならった場合、見事にガルパン最終章第3話と被ってしまう。もしそうなったら当日は危ないことになっているだろう……自分が。

 さて、ゴジラとコングが戦うとなれば、当然この映画に触れねばなるまい。

 『キングコング対ゴジラ』

 今から59年前(1962年)、ゴジラとコングは日本で激闘を繰り広げた。3月公開予定の新作は「これのリメイクでは無い」と明言されてるが、ならこっちはどんな映画かというと……

 これがビックリ、スペクタクルと喜劇の合体作品だったりする。

 鑑賞済の方もいるだろうし熱く語りたい部分は山のようにあるが、ここでは初心者向けに極力ネタバレを避けるよう書いた。なのでその辺はご了承いただきたい。

ゴジラとコング、それぞれのパート

 まずゴジラパートは「人類対ゴジラ」のパニックとスペクタクルだ。

 本作のゴジラは「人類の脅威」として一般的に認知されている。加えて前作『ゴジラの逆襲』のラストで氷付けにされて倒された……というストーリーの流れも存在する。
 そのゴジラが北極で復活し、帰巣本能から南へと進行を開始。ついに日本へ上陸する。東北へ向かう夜行列車がゴジラと遭遇し乗客が避難するパニックシーンや、防衛隊が様々な対ゴジラ作戦を実行する展開もある。これらの描写は至って真面目だ。

 一方でコングパートは「未知の怪獣=キングコングに対する人達のてんやわんや」。TV局のカメラマンが「巨大なる魔神」伝説のある孤島へ半信半疑で取材に行く。島は近代文明と無縁の土地で、カメラマンも島民たちの魔神信仰を最初こそ軽く見るも、次から次へと信じがたい状況が起き、魔神=キングコングの登場にとうとう「こりゃガチだ!」となる。そして最終的には島民が眠らせたコングを日本へ連れ帰ることに……といった展開が、当時流行りだったサラリーマン喜劇のノリで、コミカルさを交えつつ描かれる。
 なお本作の主人公は誰かというと、そのカメラマンなのだ。

 映画は怪獣を題材にしたスペクタクルと喜劇という相反する側の物語を、双方に影響を及ぼす人物も登場させつつ交互に描きながら同時進行させていく。そして中盤の最後でゴジラとコングは一度相まみえるが、ゴジラが飛び道具=放射火炎の力を見せつけた結果、コングはすごすごと退却、主人公の側も意気消沈して終わってしまう。

 ところが終盤に入ると、突如としてストーリーの流れが変わる。「キングコングもスペクタクルの方に組み込まれる」のだ。

ゴジラvs人類→コングvs人類→ゴジラvsコングへ

 つまりコングもまた人類の脅威と化した……わけだが、ゴジラにタジタジだったコングがどうして? と思えるようで実は「防衛隊による様々な対ゴジラ作戦」と「島で起きた状況」の部分がここに生かされている。なおコングもやはり鉄道を襲いパニックとなる。ゴジラと違い高架上の地下鉄を襲うのはオリジナル版(33年)コングへのオマージュだろう。

 そして防衛隊はコングへの対処を迫られた。さあどうする、となったところに主人公達が参入し、自分達の経験からあるアイデアを提案する……
 かくして「ゴジラ側にいた人達」と「キングコングの側にいた人達」が一つになる。加えてこの状況下には「双方に影響を及ぼした人物」もしっかり登場してたりする。これ以上書くとネタバレになるが、一見コミカル要素に見えた部分が伏線となっていくのは何とも楽しい。

 最終的にゴジラとコングは「人間が仕掛ける形で」戦うこととなるが、これは劇中人物曰く「両雄並び立たず、双方共倒れ」。そう「脅威と脅威を上手いことぶつけて相殺する以外に対処法はない」のである。コングの側にいた人達ですら、応援は出来ても肩入れは出来ない。人類はその戦いをただ見守るしかないのだ……
 ラストシーンもどこか虚しく、喜劇的展開だったとは思えないほどしんみりしている。そこはぜひとも本編を確認して頂きたい。

と、お硬くは書いてみたが……まずは観てほしい!

 とはいえ本作は立派な一大娯楽作品で、本多猪四郎監督は二大怪獣の脅威を描きながらも喜劇調な部分もしっかり作っており、その硬軟の付け方が個人的にはたまらなく好きだ。

 何より登場人物が実に個性的。そもそも主人公が島へ取材に行った理由は、TV番組『世界驚異シリーズ』のテコ入れとしてスポンサーから半ば強引に行かされたもので、とりわけ映画全編にわたってとにかく張り切る宣伝部長はゴジラやコングに負けない強烈なインパクトがある。他の映画なら、怪獣を自らの利益に使おうとする人物は欲深い輩として描かれそうなものだが、それを当時流行だった喜劇のノリにして悪役にしなかったのは大正解だろう。

 円谷英二監督の特撮も大スケールで、スタジオから屋外プールまでフル活用してどれだけのセットを組んだのかと思わせてくれる。リアルとハッタリを駆使して、人類vs怪獣、ゴジラvsコング、そこに至る過程をしっかり観せてくれる。またリアルさを追求すべくわざわざ三浦半島まで行ったそうだが、それがどこかは観てのお楽しみということで。

 加えて伊福部昭の音楽は素晴らしい……としか語れない。というか個人的に思い入れが強すぎていつ聴いてもテンションが上がってしまう。とりわけメインタイトル曲の衝撃が大きすぎ、ビデオで何度も借りて観た結果、小学生の頃にはもうそらで歌えるまでになってたのだから。

 ……とまあ、熱く語るとキリがないので、ここらで止めとこう。そういえば4年前、立川シネマシティ・爆音上映の際に特撮つながりの方と久々にお会いしたが、実はTV業界に身を置く人でもあった。曰く「スポンサーの意向って強いんですよね、ホントに……」その顔は苦笑していた。

 あの宣伝部長みたいな人は、ひょっとしたら架空の人物ではないのかもしれないなぁ……

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