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令和に「風雲!たけし城」が復活

 本放送当時は小学生。どう考えても40代前後を狙い撃ちしてますよね。

たけしの人気と当時のバブリーなTV界

 80年代後半といえばビートたけしさんの人気も凄まじく、日テレ・TBS・フジ・テレ朝系のゴールデン枠でレギュラー番組を持つほど。たけしさんはどの番組でも企画段階から関わっていたそうですが「TVゲームみたいなことを実際にやってみよう」というアイデアから始まった『たけし城』はその極みといえそうです。これはTBSが「緑山スタジオ」というオープンロケ可能な巨大撮影施設を持っていたのも大きいでしょう。
 そこに総額一億円、一つのアトラクションだけでも約1000万とされる常設セットを組んでいたのですから、当時のTV界隈が持つ勢いと日本の景気の良さが分かるというもの。例えばお笑いの方ではない本家の『ウルトラクイズ』も第9回は決勝戦がパリ、10回ではルートが途中で南北アメリカに分岐、第12回では南北アメリカ大陸縦断、第13回ではオーストラリア・ニュージーランド経由と見るからにスケールが拡大。円高で海外旅行がより身近になった時代ゆえ、普通の旅では味わえないような、より面白い行程にしようとする工夫が伺えます。
 どうでもいい話ですが『たけし城』のヒットを受けて、日テレも『ガムシャラ十勇士(正式には「ニッポン快汗マップ ガムシャラ十勇士!!」)』なる番組を山田邦子司会でスタートさせました。全国各地でロケしつつ参加者が様々なアトラクションに挑む形式は全くで、当時一回だけ観ましたがやはりロケゆえにアトラクションの規模は小スケールという印象が強く、番組も短命に終わってしまいました……覚えてる方、います?

「たけちゃんと遊ぼう」に憧れた

 この頃は「視聴者参加番組」も非常に多かったと思います。『ウルトラクイズ』のようなクイズ番組もそうですが、その中でも「巨大なアトラクションに挑む」のはあまり無かったかと。基本的に身体を動かすものばかりですが、そこはバラエティー番組なので、後の『筋肉番付』や『SASUKE』のように必ずしも体力自慢でなくても良かったのです。バランス感覚や運の良さで突破出来てしまうアトラクションも結構あったと思います。
 そして仮に攻略できなくとも、素人さんゆえの失敗として爆笑ネタになったり「敢闘賞」として10万円が貰えたのもまたよかった。これは子供時代ゆえの実体験もあるでしょう。楽しく運動できそう、てのがいいんですね。

 体育の授業はどこか「強制されている」ようで、徒競走や長距離走くらいならまあいいのですが、鉄棒は天地が逆になる部分に恐怖感を覚えて苦手になり、縄跳びは上手く出来るまでやらされたりと良い思い出がありません。では身体を動かすのが嫌いだったかというと、そうでもない。休み時間にドッジボールをしたり「ワニごっこ(※)」でよく遊んでました。だから「体育」が好きになれなかっただけなんですね。
(※鬼ごっこをベースにした、我がクラスで流行ったオリジナルゲーム。地上を水面に見立て、地上ではない場所、つまり遊具等にいれば捕まらないが、鬼が5カウントを数えている間に別の場所へ移動しなくてはいけない。休み時間終了のタイミングで鬼だった人が負け)
 だからこそ「たけし城」のように、ゲームのような特大スケールのアトラクションを、大の大人がとても楽しそうに挑んでいる様子には凄く憧れました。大きくなったら出たいなぁ、と思った番組の一つです。ちなみに「たけちゃんと遊ぼう」はTBSへ出場希望ハガキを送る際の「宛先」。毎日1000通を超えるハガキが届いたそうで、その中から出場できるのは毎週約100名という狭き門でした。それだけ人気があったのです。

そしてバラエティーはネット界へ……

 番組終了から34年経ち『たけし城』に憧れた少年も40代のオッサンになってしまいましたが、まさか復活するとは思いませんでした。これは素直に嬉しいし懐かしい。たけしさんもそうですが、折角ですから東国原英夫(=そのまんま東)さんやガダルカナル・タカさん、ラッシャー板前さんといった古参のたけし軍団の皆様や、隊長の谷隼人さんやレポーター役の稲川淳二さんにもゲスト出演して頂きたいところ。オリジナルをどこまで再現できるかにも注目です。

 とはいうものの、同じTBS製作とはいえ地上波TVでオンエアされない点には時代の流れを感じます。
 『SASUKE』が続いているのですから、この手の番組がTVでウケないとは思えません。ましてや「懐かしの番組」として刺さる世代も確実にいます。しかし『たけし城』は再編集版や企画の輸出で海外でも大人気のコンテンツです。つまりアマプラで流せば即座に全世界配信が可能。日本の地上波で流したモノを、世界の放送局に売り込むよりは断然効率が良いわけで。それで元が取れると思ったからこそ「当時一億円」と呼ばれるセットを常設ではないけれど作ってしまった。日本では2019年にネットへの広告費がテレビのそれを上回った状況を考えると、今は放送局が「TV番組をネットにも提供する」のでなしに「テレビで培った映像製作を活かして本格的なネットのバラエティ番組をお贈りする」ようになったのかなと思えてしまいます。

 去年の末には「YouTube Original」としてこんなバラエティーが配信されるほど。セットの規模はTVのそれと引けを取りませんし、例え単発でネット限定のオリジナル企画であっても、これだけの動画シリーズが作れてしまう時代なんですよね。その気になればもうここまでのレベルに達している。

 それとは逆に、テレビのバラエティ番組で「巨大セットを組んでアトラクションに挑む」形式はもはや風前の灯です。それ以前に、視聴者参加型番組自体が減っているのですが……
 アマプラでの『たけし城』復活は、テレビとネットの逆転を象徴する現象なのかもしれません。

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